-107話ー 傷付いた奴隷達
今日は、朝ご飯を食べた後、宿を出て、
馬車で北門へと向かった。
「昨日、一昨日は南門だったけれど、北門は遠いね~」
「其れはそうですわ、南門の反対側に有る訳ですから、
南門側からすれば、一番遠くに成りますわ、
平民街に出る迄に、そうですわね~
昼頃には出れるんっじゃ無いかしら、」
「そんなに遠いのかよ!」
「帝都は、此の大陸で一番大きい都市ですからね、
まだソラレス城も見えないでしょう?」
「ソラ?何其れ?城?そういや、
この都市に来てまだ1度も城を見て無いね~
其れより、お城有ったんだね~」
「有ったんだね~じゃ無いですわ、其れは見事な、
白亜の城が有りますわ。
この大陸でも1番と評判ですのよ、初代女帝の大魔女、
ソラレス、ルグレス様が築いたと言われて居ますわ」
「エレン、詳しいね~此の国の人みたい」
「そうですわね~って、此の国の元貴族令嬢です~!」
「ああ、そうだった。元、悪役令嬢だったんだ~」
「まあそうですけれど、此れでも、
色々と苦労して居るんですのよ」
「まあ、そうだね~色褪せた、
カボチャパンツの綻び縫ったりして居たよね~」
「そうですのよ、伯爵令嬢と言っても、
ドケチオヤジでしたので、
って、何でパンツの事知って居るの~?」
「まあ、俺が洗濯して居るし~ね~」
「ああそうでしたわね、
私くし、死に掛けて居たのでしたものね。
で、私くしのパンツを洗濯し乍ら、
興奮して居たんですね。此の変態さん」
「いやいや、かぼちゃパンツじゃ興奮出来無ね~し、
そんで、何故か今も洗濯係俺だし、
食事係も俺だし、因みに掃除係も俺な訳だけど~」
「良いじゃ有りません事、其の分私くしが戦闘係して居ますし、
何度も死に掛けて、心を病み乍ら、其れにですよ、
こんな良い女の脱ぎたてのエロイ下着を弄れるのですから、
むしろ喜んで頂きたいもんですわ、此の変態さん」
「嬉しくね~よ!じゃ今日から掃除と、洗濯、エレンな!」
「御免なさい~!勘弁して下さいですわ~お許しを~ですわ~」
「ほら、藪をつつくから蛇が出て来た。
しかし、馬車が有って本当に助かった~此の距離歩くなんて、
考えられ無いわ~有り得無いわ~」
「そうですわね、貸し切り馬車を雇っても、
お金が掛かったでしょうね。
あ、ほら、お城が見えて来ましたわ」
「うん、どれどれって小っさ!で、遠おっ!」
「何を言って居ますの?1時間位で、お城に着きますわ。
モモちゃん、お茶を頂けません事」
「おう、そうだね、ゆっくり行こうか」
揺れにくい馬車で、お茶を飲み乍らゆっくりと、
貴族街を散策し乍ら通り抜けて行く、
「でも、あれだね~通り過ぎるお店は、皆、上品で、
家々は、お屋敷ばかりで、落ち着いた街並みで癒されるね~」
「そうですわね、大通りに有る様なお店は皆、高級品しか扱って居無いし、
一等地に有る様なお屋敷は、皆、大貴族のお屋敷ばかりですからね」
「でも、貴族は領地に住んで居るんだろう?」
「うちの様なケチな領主は、大貴族でも領地からは出ませんが、
見栄を張る貴族は、1年の殆どを帝都で暮らしますわ。
領地を代官に任せて、ずっと、帝都で暮らす貴族も多いですよ」
「領地に、城を持って居たりするんだろう?何で?」
「確かに、大きな領地持ちの貴族は城を持ってはいますけれど、
街もこんなに大きくは無いし、一歩街の外に出ると、
本当に何も有りませんからね、
田園地帯と放牧地が、続くばかりですわ。
その点、帝都にはあらゆる文物が揃って居ますし、
演劇場や、夜会等、毎日開催して居て華やかですからね、
基本、貴族は退屈なのですよ」
「そんなもんかね~で、エレンの家もお城なの?」
「まさか~城に詰めて居るのは、騎士達ですわ、
家族は皆、城の敷地に有る、宮殿に住みますわ」
「宮殿って、エレンって王族なの?」
「違いますわ、確かに継承権は有りますけれど、
遥か彼方ですのよ、其れでも昔、1度、
女帝を輩出して居るらしいですけれど、遥か昔の事ですわ」
「出た~皇帝の血筋発言~!」
「ましてや其の6女、継承権など無いに等しいですわ、
勘当されて居ますし~冒険者ですし~」
「城に着いたよ、でっかいね~綺麗だね~」
「そりゃそうでしょう、領主の城に負けて居たら、
其れこそ女帝の沽券に関わりますわ、城を迂回しますね」
迂回するのも大変で、馬車で1時間程掛った。
「本当、凄い敷地だね~此れだけで、都市位の広さが有るんじゃね?」
「そうですわね~都市とは行かないまでも、街位は有るでしょうね~」
お城を背に、更に進んで行き、途中でお昼に成ったので、
適当な公園で、お昼ご飯を食べて北門に着いた頃には既に、
3時前であった。
「やっと北門に着いたよ~此れは、奴隷商に付く頃は夕方だな」
「そうですわね~もう少し早く、
宿を出発して居たら良かったですわ~」
「まあ、馬車の速度も無いし、此の馬車での初めての遠出だから、
仕方無いよね」
「そうですわね、此の後は少し急ぎましょうか」
「だな」
いつも通り、ジュリアナちゃんに貰ったメダルを使って、
貴族街を抜けると、其のまま奴隷商に一直線に向かって、
着いた頃には、日が傾いて居た。かなり大きな店構えだった。
奴隷商の門をたたくと、厳つい獣人のおっさんが出て来たので、
用事を話して、チップに銀貨1枚を渡し、
愛想がよくなったおっさんに、
馬車を裏庭に運んで貰い、俺達は店の中に入って行った。
俺達は応接室に通されると、主と思しきオヤジが座って居り、
俺達二人にソファーに座るように促して、
「お客様、今日はどの様な奴隷をお探しで御座いましょうか?
私共の店は、上は帝国貴族、
更には剣闘士なども取り扱って居りますので
きっと、ご希望に添える事でありましょう」
『ダーリン』
『うん?』
『気付いて居るっスか?』
『ああ勿論、此れは大当たりかもね』
「今日は、新しく屋敷を買いましたので、
下働きの奴隷を買いに来ましたの、気に入ったら、
大人数を、購入すると思うので、宜しくお願いしますわね」
怪しいおやじは、にっこりと営業スマイルを浮かべて、
「此れは此れは、お客様、
良く働く奴隷を多数そろえて居ります。
食事のご用意から掃除、洗濯、
夜のサービス迄、何でもオーケイで御座いますよ」
「いや、実務的に優れた人を取り敢えず一人、
家の切り盛り一切を任せられる優秀な人材は居ますか?」
「ふむ、実務に強く、賢く、実直で、美しく、
夜の御供迄こなせると言う奴隷と成ると、うむむむむ・・・・」
「いや、美しくと夜の御供は要らないから、
男性でも構わないし、女性でも構いません、
勿論美人である必要も有りません」
「男性は流石に・・・・女に成るのですが」
「ほう、女性で居るのですか?」
「居るのは居るのですが、前の主が、
其の~言いにくいのですが、
途轍もない変態でして、物凄く虐待されて居りまして、
両腕と、片目と、鼻と、胸と、
女性としての機能が抉られて居りまして、
ええ、頭は凄く良いのでよ頭は。天才と言っても良いでしょう。
5か国語を話して、書く事は腕が無いので書けませんが、
読む事と、計算力は、抜群なので御座いますが、
如何せん、とても人前に出せる女では御座いませんので」
「構いません、見せて頂けますか?」
主人は、お茶を入れに来た、
事務員に連れて来るように指示すると
暫くして、血で汚れたみすぼらしい、
麻のワンピースを着た女性を連れて来た。
彼女は血が滲む包帯を体中に巻き、
両腕は肘から先は無く、胸のふくらみも無く、
包帯で隠れた鼻のふくらみも無い。
此方を見て居る片目だけが、
人生を諦めた虚ろな死んだ魚の目をして居た。
俺は彼女に、
「初めまして、
君は俺の為に其の頭脳を使ってくれる気は有りますか?」
女性は蚊の鳴く様な、震えるか細い声で、
「わ、私は此の様にとても、
人様にお見せ出来る姿では御座いません。
際限無く主に蹂躙された挙句、
私に飽きた主に体を切り刻まれてしまいました。
乳房も無く、最早、女性としての機能も御座いません。
生きる値打ちも有りません」
「いえ、俺が欲するのは君の頭脳です、もし良いのであれば、
其の頭脳を俺の為に役立てて欲しい。」
「貴方は残酷な人ですね。良いでしょう残りの人生を、
貴方様に捧げましょう」
「ご主人、此の娘をこの様にした者の事を
教えては頂けないだろうか?」
「知って、如何されるのですか?」
「こ・ろ・す」
「そんな静かに恐ろしい、
しかしその犯人はもう此の世には居りません。
と有る貴族なのですが、
被害者はその娘だけで無く数十人に及び、
十人以上が死亡して居ります。
其の中には一般人も含まれて居りまして、
其の話を聞き付けた女帝様がお怒りに成って、
自ら、其の者を焼き殺されました。
基本的に、奴隷の生殺与奪は主に有るのですが、
一般人も巻き込まれましたので、
連続殺人犯としてお家お取り潰しの上財産の没収、
其の家族の処刑と全て処理されて居ます。
此の娘は被害者では有る物の奴隷であった為、
救われなかったので御座います。
帝室より、私に保護する様にと、
命が下されて管理している次第です」
「モモちゃん、そんなこと言っちゃあ駄目よ、
其の娘、驚いているじゃ無い。御主人御免なさいね~
モモちゃん、若いけれど此れで、ドラゴンスレイヤーなの
其の貴族、死んで居て良かったわね~
此の子に追い回される所でしたわね」
「此れは此れは、上級冒険者様で御座いましたか」
「いいえ、俺は、自分の物を傷つける者は許さ無いだけですよ、
で、幾ら金を払えば良い?」
「はい、傷が無ければ金貨100枚の値打ちが御座いますが、
如何せん、この様な状態で御座いますので、
金貨10枚で、如何でしょうか?
知識に付いては、其れ位の価値は有る者かと」
「オーケイ、じゃ此れ、」
と、ストレージから金貨10枚を取り出すと、主人に渡した。
と、主人は直ぐに契約書と奴隷契約魔法を、俺と女性に掛けた。
「此れで、たった今から此の者は、貴方様のもので御座います。」
「了解、で、俺達は屋敷を買ったんで、使用人を購入に来たんだが、
君の意見を聞かせて呉れないか?」
「はいご主人様、で、どんな規模の御屋敷で御座いますか?」
「うん、母屋は3階建てで部屋数は20、
屋敷の左右に同じくゲストハウスが、
各1棟、部屋数は30だ、敷地は普通の学校位有る」
「す、凄い屋敷ですな、お若いのに冒険者は儲かる様だ」
「此の間、ドラゴンとグリフォンを狩って居るからね」
「ご主人様、使用人はメイドが10名に、警備が4名です。
メイドは料理係が4名、庭師が2名後の4名は掃除等の、
下働きとするのが良いでしょう。
警備に付いては、夜間警備も含めて4人が妥当かと、
以上が、屋敷の下働きの内訳と成ります。
後、此れはお願いに成るので御座いますが、
私より優秀な者が一人おりますが、私同様、
体中が欠損だらけで、既に、立つ事すら出来ません。
しかし優秀で、メイドと、
警備の指揮を両方任せる事が出来る人材です」
「こら、その娘は」
俺は、店主を手で止めると、
「ほう、其の人は君の何だい?」
「はい、私の姉で私と同じように、虐待されて、
いつ死んでも可笑しくない状態で御座います。」
「君のお姉さんを買っての、俺のメリットは?」
「はい、私の一生の忠誠を」
「ふむ、買いましょう、
御主人会わせていただく事は出来ますか?」
「はい、其れは構いませんが、彼女は動かせないので、
後で地下室へ来ていただいても宜しいですか?」
「へっ?地下室?」
「はい、死を待つばかりの者は、
地下室で静かに過ごさせて居るのです」
「????」
「ご主人様、此処の奴隷商は剣闘士も取り扱って居ります。
剣闘士は言わば見世物の使い捨てで消耗品です、
殆どが、その場で死ぬのですが、
致命傷はおって居ても、まだ生きて居る者も居るので、
店主様は、せめて最後位は静かにと、過ごさせて居るのです。
無料で奴隷を引き取り、死んだら葬って上げて居るのです」
「ふむ、其れは良い、実験用の奴隷も欲しいと、
思って居たのです。
死に掛けて居る、元強い剣闘士も見せて頂けますか?
豪華な食事と、綺麗な服と、死んだら丁寧に埋葬しましょう」
「実験用ですか、良いでしょう、しかしかならず、
ちゃんと埋葬してあげて頂きたい」
「約束しましょう。マッドサイエンティストのモモちゃんです」
「其れではご主人様、使用人は、
夜の御奉仕も出来る者が宜しいですか?」
「いや、実務重視だ女性としての能力は必要無い、
丈夫で、能力の高い者が良いね」
「はい、其れでは獣人の虐待されて、女性の機能の無く成った者、
又、体の一部欠損は有るが、充分に働ける者を買われる事をお勧めします。
獣人は丈夫で、生命力が強く身体機能が高いので、
少々傷付いて居ても、人族以上に良く働きます。
更に忠誠心が高く、裏切る事は絶対有りません
そして、お値段が破格です。10分の1程度で購入可能でしょう」
「そんな事したら、お店に悪いんじゃない?」
「店主様、そんな事は有りませんよね」
「流石で御座いますな、良く、此の店の事を知って居る。
此処帝都では、お客様は殆ど貴族の方で傷者は買われ無い、
しかも、有る貴族の無茶を聞いて買い取らされた、
奴隷が約20人居ります。
いわゆる、腐れ貴族、
変態貴族に傷付けられた哀れな獣人達です」
「20人でお幾ら?」
「はい、酷く傷つけられては居りますが、
皆、仕事には支障も無く、
先程言われた、料理人、庭師、警備が出来る者達ばかりですが、
如何せん、大きな傷者ですので、一人当たり金貨10枚で、
20人で、金貨200枚で如何でしょうか?」
「はい、良いでしょう」
と、ストレージから金貨200枚出すとテーブルの上に置いた。
すると、店主は事務員に用事を言い付けて、金貨を数え始めた。
それから暫くして、獣人の女性達が20人ずらりと並んだ。
「な、何と~全員、ダルマじゃん~!!」