-106話ー 馬車購入
「モモタロウ様、今日集まって来た怪我人達からは、
一人銀貨1枚を徴収して居ります。此れがその代金です」
と、銀貨125枚出して呉れた。
「そして、此れが冒険者ギルドからの報酬です」
と金貨5枚を出して呉れた。
「えっ、奉仕じゃ無いの?」
「何をバカな事をおっしゃいます!そんなことしたら、
冒険者ギルドの運営方針が疑われてしまいます。
無料治療なんかしたら、其れこそ、パニックが起こりますわ。
今回は、南街のギルド会員のみ、
銀貨1枚でヒールを掛けて貰うと言う、
条件での治療と成って居ます。
北街や西街、東街、中央ギルド総本部は、別です」
「へ~っ冒険者ギルド5軒も有るのか~って
1軒で怪我人125人って、多くね?」
「はい、帝都は冒険者の街ですから、でも何故か、
南街は初級レベルの冒険者が多いので、
有力な冒険者は、殆ど中央ギルド総本部が独占状態でして、
更に帝都の近くには初級ダンジョンと、
中級ダンジョンが、存在して居ます。
そして、南門の近くには中級ダンジョンが有る物ですから、
行くのに楽な中級ダンジョンに行く者が後を絶ちません。
初級ダンジョンに比べて、非常に難易度が上がってしまうので、
初級ダンジョンの表層で狩りをして居る初級冒険者が、
中級ダンジョンを甘く見て、死ぬというパターンが多いのです。
命が助かっても、大怪我をしてしまい、
体の部位欠損等の冒険者が多い訳です」
「怖ぇ~ダンジョンの罠かよ~何で、ダンジョンの傍に帝都が?」
「其れは、元々、ダンジョンの街が発達した物が帝都だからです」
「来た~オ〇リア~ベロ君は?ロリ巨乳の女神様は?」
「オ?それだけに、魔法使いの力は大きく、
街を発展させる原動力と成って居ます。
その歴史の中でも、最強の魔女。
と謳われて居た、ソラレス、ルグレス様が弱小の王国を、
一代で、大帝国に迄押し上げたのですわ。
ルグレス家の血の継承も変わって居て、
普通王家等は、男系の継承を重んじますが、
まあ、容姿や何かが似る為ですが、ルグレス家の場合、
女子にその特徴が現れます。何より不思議なのは、
其の女子が必ず、強大な魔力を有する事なのです。
先代は皇帝でしたが、
娘が生まれるや否や15才に成ったら、
皇帝の座を譲ると言った事でしょうか、
歴代のルグレス帝国の皇帝の殆どが、
強大な魔力を持つ女帝なのです。
たまたま、先代は継承する女子が居無かった為に、
皇帝に成ったのですが、
皇帝は、魔法を一切使えませんでした」
「ふ~ん、魔女の家系?で良いのかな~」
「其れです~!長年の謎が今解けました~!」
「「気付けよ!」」
「大怪我して居る女の子達を見て居ると、ちょっと・・・・
お金貰っちゃって良いのかなって?」
「はい、貰ってあげて下さい。その方が彼女達にとっても、
明日から、又、頑張ろうって言う活力に成りますから、
女性は基本的に、
好きな人に尽くしたいと思う生物なのですよ」
貧乳のお姉さんの話を聞いた後、
金貨が入った袋と、銀貨が入った袋を見乍ら、
「エレン、どっちが良い?」
「私くし今回も何もして居ませんわ」
「してくれたじゃん、行列の整理」
「仕事のうちに入りませんわ」
「まあ、良いじゃん」
「分かりましたわ、では金貨ばかりなので、
銀貨を少し頂けないかしら」
「ほい、どん」
「125枚も多すぎますわ、
金貨より高額に成って仕舞いますわ!」
「まあ良いじゃん」
「「大雑把ですね~」」
「昨日、今日と大金ばかり見て居るので~」
「分かります~で、羨ましいですね~」
「心臓が破裂しそうですわ!」
「其れも分かります~」
「俺達、此れから野暮用が有るので、此れで」
「はい又、時間の空いて居る日に、お願いしますね、
1日前に言って頂ければ、事前に集めて置きますので」
「はい、では」
「お疲れ様でした」
「ご苦労様ですわ」
冒険者ギルドを出た俺達は、何故か女性冒険者の、
ビッグ、ウエーブを搔き分け乍ら、商人ギルドに向かった。
商人ギルドに入って、カウンターに行き、
「馬車を見に来ましたわ」
「はい、ニーナお嬢様を呼んで参りますね」
「お嬢様とか言っちゃって居るよ~」
「もう、慣れましたわ」
「・・・・御免なさい・・・・」
と、時間を置かずにニーナさんが現れて、
「何か、冒険者ギルドが大変な事に成って居ますね~
何でも、神様が降臨なされて、
大怪我をした冒険者を治療して回ったとか?
私も見に行ったのですが、
人垣が凄くて全然見えませんでしたわ」
「「あ、は、はは・・・・・・・・」」
「では、あちらに準備が出来て居ますので、お出で下さいな」
「「は~い」」
裏庭に案内されて行くと、馬車が5台並んで居て、
「此方は、さる貴族家のに荷馬車で・・・・」
「却下、何ですの~此の派手な荷馬車は~」
「ですよね~次は、鉄鋼騎士団、御用達の・・・・」
「却下、鉄の塊では有りませんか、戦争にでも行くつもりですか?
重くて話に成りません」
「ですよね~此方は、警備隊用の物で、箱型に成って居て・・・・」
「却下、窓に鉄格子がはまっているじゃ有りませんか?
罪人でも運ばせるおつもり?」
「ですよね~」
「もう良いですわ、他を当たります!」
「いやいや、本番は此方です。2台有りますが、
1台は新車で、作りも良く、頑丈に出来て居ます。が、
お値段は、馬を含めて、金貨10枚です。
もう1台は中古ですが、良く整備されて居て状態も良いです。
最近迄、乗合馬車に使われて居た物ですが、
御者のお爺ちゃんが引退して、
売りに出された物です。馬も年季が入って居ますが、お値段は」
「「お値段は?」」
「馬を入れて、金貨3枚です。此の馬車であれば、
20人は乗れますよ~」
「「買った~!!」」
此処2日、毎日乗って居る馬車と、
ほぼ同型で、馬も年季が入って居た。
「此処2日乗って居るからね~安心感が、有るよね~」
「はい、馬も年季が入って居る様ですし、
暴れる事も無いでしょうし、何と言っても、
年は取って居るようですが、
体も大きくて、とても力強いですわね」
「でも、あれだね~尻が痛そう」
「あら、馬車とはそう言う物ですわ」
「でもね~リリー何かいい方法無い~?」
『は~い、呼ばれて飛び出て、ジャジャジャジャ、イッヤ~ン!』
ズコ~ッ!!っと突っ伏す俺、苦笑いのエレン
「リリーって??如何されましたの??」
「いや~蹴躓いて~」
「まっ平らで、何も有りませんよ?」
「俺良く、何もない所で蹴躓くんですよね~
いや~参った、参った~」
『頼むよ~リリー』
『はい、最近出番少ないんで、ボケてみたっス。
要は、馬車の車輪にショックアブソーバーが付いて居無いんで、
振動が直接お尻に来るって訳っス、
で、いぼ痔に成りやすいっスよ~』
『何とか成る?』
『はい、ショックを付けましょうっス、
4輪独立懸架にするっス。
簡単な造りにする為に板バネにするっス。
回転部にベヤリングを装備して、
止まりにくくなるので、
4輪ディスクブレーキを付けるっス、
サイドブレーキも付けるっス、
重かった車体は見た目其のままにして、
竜骨との合板にするっス軽くて丈夫っス。
幌は、翼竜の翼の皮膜を使って
そして座席には、スプリングのクッションと
柔らかい素材の防水のクッションで、
自動車並みの快適さにするっス』
『どれ位で、改修できそうかな?』
『5秒っスね』
『早っ!』
「モモタロウ様、如何かされました?」
「いやっ、ちょっと寝てた」
「まあ、てんかん?自立神経失調症?可哀そうに」
「同情されたよ~まあ良いや、はい此れ金貨3枚」
「はい、では、買取証と持主証明書を取って参りますね」
ニーナさんがギルドに証明書を取りに行くと、
馬車に繋がれた馬を外して、
「エレン、馬の手綱持って居て」
「はい、ですわ」
エレンが馬の手綱を持つと、俺は、
馬車をストレージに仕舞って、
「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10」
と数えて、馬車を出して直ぐに馬を馬車に繋いだ。
少しして、ニーナさんが戻って来て、
「はい、此方が馬車の買い取り証と、
持ち主の証明書に成ります。
無くさない様に持って居て下さいね、
盗まれた時等の証拠に成りますので、
・・・・あら、こんな馬車だったかしら??」
「「こんな馬車でしたよ~」」
「はい、そうですよね~????」
「じゃあ、貰って行くね~」
「操車の方は大丈夫ですか?」
「私くしが、操車出来ますわ」
「まあ、お嬢様なのに凄いですね」
「姉妹が多いと、
色々とスキルが無いとやって行けないのですわ、
悪役令嬢としての、スキルの一つですわ」
「まあ、悪役令嬢でしたの?大変でしたね、
敵を蹴散らして行かないと、生きて行けない世界ですから、
私も、色々と苦労しましたわ」
「あんたも、悪役令嬢なのかよ!」
「「はい、其処、突っ込まない!」」
「・・・・御免なさい・・・・」
「「はい宜しい。女には人に言えない過去が有る物なのよ」」
「ふ~ん、そんなもんかね~」
「「そんなもんです~」」
「は~い、では、ニーナさん有難う、又ね~」
「では、失礼致しますわ」
「はい、モモタロウ様、又お越し下さいね」
「「は~い」」
俺達は、通用口から表の道に出ると、
散策しながら馬車を進めた。
予想通り馬は、手慣れたもんで、
ゆっくりと走って呉れている。
「此の馬はやはり正解ですね、とても扱いやすいですわ、
と、何でしょう?振動が伝わって来ませんね。
お尻が楽ですわ。車輪の回転もスムーズで軽そうですわ」
「そうだろう~車輪の回転が、
何倍にも良く成って居る筈だからね、
止まる時には注意して、
足元のペダルを踏むと、ブレーキが掛かるからね」
「馬車がつんのめる心配はは無さそうですわよ、
此の馬車は2頭立てですから、真ん中に棒が有るのですが、
つっかえ棒に成って居りますの、まあ馬の負担を減らす様に、
止まる直前に、ブレーキを掛けると言うのが有効ですわね
で、此の横に有る棒は?」
「サイドブレーキだね、停車している間に馬車が動かない様に、
ブレーキを掛けるんだよ」
「あら、便利ですわね、此れなら盗難に逢わなそうですわ」
「まあ、泥棒もサイドブレーキは知らないだろうからね~」
此の後、俺達は夕方迄、馬車で街を散策した。
日が暮れ始めた頃、宿に着いて馬車を厩に置いて貰って、
宿の中へと、入って行った。
「あら、お客様、お帰りなさいませ」
「はい、又、お風呂のお湯張りをお願いしますわ。」
「はい、承知致しました。其れと、馬車を購入成されたのですね、
厩の使用料が銀貨1枚と成ります。」
「はい、銀貨1枚ね。」
と銀貨を渡すと、
「有難う御座います。明日からは如何致しますか?」
「はい、屋敷を購入しましたから、今日迄で構いません事よ」
「凄いですね、承知致しました。」
俺達は2階の部屋に戻ると、
「厩の使用料、銀貨1枚って高くね?」
「高いですわよ、其れが高級宿ですのよ、
その代わりに、馬の世話をしっかりとして頂けますわ。」
「う~ん、銀貨1枚って、1万円だもんね~」
「其れより、モモちゃんお腹減った~」
「そうだね~今日も忙しかったし、ご飯にしようか~」
テーブルに、今日はホイコーロー定食を出して、
白湯スープに蒸し鶏の甘酢和えと、野菜サラダにご飯だ。
最後に良く冷えたビールを添えて、
「「頂きま~す。」」
「あ~ん、美味しいですわ~
プシュッ、もぐもぐ、ごくごくごくごく、
プッハ~くぅう~っ、うめ~生き返りますわ~」
「うん、もぐもぐ、プッシュッ、
ごくごくごくごく、プッハ~くぅう~美味い、
此れの為に1日頑張った様なもんだからね~、幸せ~」
「お客様~お湯を入れに参りました~」
「は~い、鍵は開いて居るよ~」
「「失礼します~」」
「あれ、今日はハートさんも一緒なんだね。」
「はい、昨日の晩御飯が忘れられなくて、その~」
「良いよ、じゃあ二人共テーブルに着いて、」
「「は~い」」
俺はストレージから、後二人分晩御飯を追加して、
テーブルに置いた。
「「頂きま~すっ」」
「レモンちゃんは先にお湯を入れて来なさい、仕事優先です。」
「うぅ~は~い~」
「まあ、晩御飯は逃げ無いからね~」
「は~い、です~」
エレンは、回りの状況も関係なく、黙々と食べて、飲んで居た。
「エレンは、自分の世界に浸って居るね~」
「凄い集中力ですね。」
「そうだね」
「お待たせしました~お湯張って来ました~」
と、此の二人も食べ始めると、一言も喋らなかった。
この状態は、デザートを食べ終わる迄続くのであった。
其の後暫く歓談して、
二人共良い笑顔を残して、仕事に戻って行った。
そして俺はいつもの様に、風呂に入った後、酔い潰れたエレンを起こして、
風呂に入る様に言い、風呂場で寝て居るエレンを介抱し乍ら、
「エレンはお酒が好きな割に、直ぐに酔って潰れるんだよな~」
エレンを寝かしつけた後、一杯やり乍ら、
「明日は奴隷の買い付けか~前回は、
王国のサポートが有ったから、楽だったけれど、
今回は俺次第だよな~緊張するよな~」
新しい、出会いの期待と不安に駆られ乍ら、夜は更けて行った。