~93~ 紅い星に運ばれて ⑨
ノアは四本の剣を抜く。
右手に宝王器《深淵刀》
左手には神器・心映 緋の剣
そして両翼のように、ノアの背後に浮く神器・心映 翠の剣と白の剣。
「......ふ、やっと本気になったか。 さあ見せろ、お前の繋いできた想いの力を!」
ノアは姿勢を低く、両腕を交差させた。背後の白と翠の剣はベルフェゴールへと切っ先が向く。
ノアは王との手合わせでの事を思い出す。
「ノア、お前は優しい。 優し過ぎる......もっと心を強く持て。 命を奪うことを恐れるな。 確かに命と言うのは尊く、大切なモノだ。 しかし、それはお前の命もそうなんだ」
「その優しさがお前を殺す事になるぞ。 そして、お前の命を大切に思っている者も守れなくなる......その時に後悔しても、遅いんだぞ」
そうだ
俺のせいだ
大切なものが消えるのも、俺が死に向かい逝くのも
だから最期に、彼女の願いを叶えよう。
この命に代えても......!
ドガッ!!
床を蹴り抜き、凄まじいスピードでベルフェゴールへと接近するノア。
交差した腕を振り抜き、少し斜め前の床を斬りつけた。その漆黒の深淵刀により、地中を黒い魔力刃が流れていく。
そして、ベルフェゴールの真下から大きな槍のように突き出た。
ドドドドドドドドド!!!!!
「!」
しかし、ベルフェゴールは瞬時にその攻撃へと対処する。バルバトスを使い難なくガードに成功し、ノアへと接近する。
肩に担ぐ形で持っていたその大剣を振り下ろす。
それをノアは翠の剣でガードした。
その瞬間、バルバトスの赤目から魔力が噴出し、大きな魔力の塊と化した。
周囲の物は砕け散り、吹き飛ぶ。
が、ノアはそれを完璧に受け止めていた。翠の剣、ユグドラシルから光る木の根が生え、ベルフェゴールの大剣の破壊力を相殺していた。
「なんだと!!! バルバトスの第二解放を受け止めた!!!?」
驚くベルフェゴール。今までにこれを受け、生きていたものは二人。
この国の王と、魔王。
すぐさまノアは翠の剣から手を離し、白の剣を握った。
そのまま身を翻し、駒のように回転。回し蹴りをベルフェゴールの腹へとお見舞いする。
とてつもないノアのパワーに数メートル吹っ飛んだ。ベルフェゴールの鎧は重く、硬いが、ノアの蹴りにより腹部の鎧は砕け散っていた。
......!!!?なんだこの力はッ!!!!
瓦礫をどけ、ノアへと視線を戻す。すると、ノアに異変が起こっていた。
背に美しい白き翼が現れていた。
なんだ、あれは......羽?
ズギャガッ......!!!!
「ゴフッ......!?」
ベルフェゴールがノアの姿に気をとられていた隙、深淵刀の魔力刃がまたもや地面から襲いかかってきた。
先ほどの蹴りにより、鎧の破壊された部分に刺さり、ベルフェゴールは貫かれそのまま引きずられるように、更に奥の部屋へと飛ばされる。
そして、その傷口内に入り込んだ魔力刃がベルフェゴールの魔力を吸収し、無数の刃となり身体中から飛び出さんとした、その瞬間にそれを引き抜き致命傷を回避。
――後ろ!!
死角へと一瞬にして回り込んだノアを、ベルフェゴールもまた見逃さない。
片手でバルバトスを真横に振り抜き、ノアはガード
をしなかった。
体が真っ二つにされる。が、アーマインノの能力が発動中、白の剣により瞬時に体が再生する。
その異様なあり得ない光景を目の当たりにした、ベルフェゴールが動揺......隙が生まれた。
ノアの狙い通りだった。
「うおおああああああ――ッッ!!!!!」
ノアの咆哮。緋の剣を思い切りベルフェゴールの鎧が剥がれた腹部へと突き刺した。
はずだった。
バルバトスでその刃の起動を僅かに逸らされ、ノアの緋の剣による突きが外れてしまう。
「甘いッ」
斬撃はあまり効果はないと踏んだベルフェゴールは、バルバトスを使わずにノアを蹴り飛ばした。
瞬間的に片腕でガードし、直撃を防ぐ。
アーマインノの能力が発動中の為、そのまま受けてもダメージは無いので別に良かったが、体勢を崩される事を危険視した。
ズザァアアアアッ!!!
――くっ、アーマインノを使って身体強化しているのに......仕留めきれない!!
やっぱり、強い!!!
けれど、まずい。もうあと一、二分くらいしか......
思考を巡らせる暇も無く、今度はベルフェゴールが攻め立てる。
斜め下からバルバトスを振り上げ、ノアをまた斬り裂いた。が、やはりノアはアーマインノの効果で瞬間的に体が戻る。
しかし、その一瞬、再生に使う一瞬の隙をベルフェゴールは狙っていた。
頭をわしづかみにし、壁へと叩きつける。そこにハイキックを撃ち込み、ノアな視界が効かなくなる。
キキキキキキキキキッ!!!!
その時、ノアは悪魔の笑い声を聞いた。
ボゴオオオオオオオオンンンンンンンン!!!!!!
何が起きたか分からない。体全てが吹き飛び、自分が何処にいるのか、どうなっているのか分からなくなってしまった。
なん、だ?一体、どうなっている!?や、やばい......アーマインノが、切れ......
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ......。
大爆破により、部屋が吹き飛び真っ黒な空が見える。
ベルフェゴールは、城の一部屋と共にノアを丸ごとバルバトスの魔力爆発により吹き飛ばしていた。
「これですら、治るのか......なんと言う修復能力。 脅威だな」
ノアの体には傷一つ無く、最初と同じように剣を握りしめ立っていた。
しかし、同じでは無い事が一つ。
翼が散り始めた。
ここ、までか......。
フラフラとノアの体から力が抜け始める。
「お前......そうか、そういう事か。 神人ですら俺と渡りあえる肉体を持つことなど有り得ない事。 リスクの無い能力のはずがないか」
しかし、一時的とはいえ俺があれほどの窮地にまで追いやられるとは......なんと言う力を......ノア、お前は......。
ノアが膝を地につけ、倒れる。
ああ、ダメだったよ......もう少しやれると思っていたんだけどな......
ガシャン......ガシャン......
ベルフェゴールの鎧の音が近づいてくる。
「ノア、さらばだ......安らかに眠れ」
ヒュオッ――
頭上高くバルバトスを掲げる、ベルフェゴール。
ブンッ――
ドシャアアアッッッ!!!!!




