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~88~ 紅い星に運ばれて ④

 




 ――これで、成功だ。





 まさか......有り得ない事だが、今、我々が目の当たりにしているこれは、間違いなく現実であり事実。



「神人」の赤子をベースに、「魔族」「妖精族」......さらにはそこに「妖力」を発現させる事が出来るとは......!


 この子はまさに神の子だ!



 しかし、どうしますか、大司教?この子はこれからどう育成されるおつもりで?



 そうですね、まず、この子には確りとした教育を施さなければなりません。

 我々の成果であり、我々の家族です。我々の力となってこの神徒教会を導けるくらいの、先導者として育て上げるのです。



 わかりました。そうですね、この子ならば神徒教会を導き世界を手中に治めることすら可能となりましょう。

 全ての属性を自在に扱える者など、この世にこの子ただ一人......素晴らしい。


 育成者には誰をお考えで?


 はい。まだ若いですが、幹部のアー・マインノを親にしようと思っています。


 彼女は優しく、そして強い心を持っている。子供を育てるのに適任かと思います。


 神器の使い手としてもかなりのモノですしね。戦闘面を見ても、この子を育てるのに彼女がベストでしょう。



 あ



 どうしましたか、ティアラ?



 ここには来てはダメと、言いましたよね。




「お母さん、この子......」



 この子は、世界を統べる器。神の子です。あなたにも見えるでしょう?このとてつもないオーラが。



「綺麗......碧くて、翠色の......あたたかい日溜まりのよう」



「ねえ、この子は、お名前はなんと言うの?」



 名前......ああ、名前が必要ですね。



 あなたが名付けますか?ティアラ。



「いいの? じゃあね......」



 決めた!




 君の、名前は









 ――ハッ!




「お、起きたかノア! よかった......」



 辺りを見渡す。ああ、俺は......そうか、此処は王城の敷地内か。

 今のは、夢......前にティアラが俺に見せた......。



「......見張っていてくれたの? ありがとう」


「いやいや、ありがとうは俺たちのほうだ。 お前がこなけりゃどうなっていたか」


「ううん。 俺も助かった。 いつもなら結界を張れるユグドラシルを使って眠れるんだけど、今は貸し出し中だったから......本当に助かったよ」


「そうか、役に立てたなら嬉しい......行くのか?」


「うん。 止めなきゃ、この戦いを......ベルフェゴールを」


 ノアの視線は城へと向けられている。これから始まる彼との戦いを思いを抱き、静かにその瞳の奥に覚悟を刻む。


「そういえば、ここに他の十二騎士が来なかった?」


「他の? いや、見てないが......そもそも城周辺には大命四魔が結界を張っていたからな。 お前があいつを殺してからの話なら、誰も来てはいないぞ」


 そっか、結界が......ならその前にもう城へと入っていたのかな?

 それとも城の外での戦闘でまだ到着してないか。


「もし、十二騎士のキア......キアリクと言う女性が来たら、俺が城の中へと既に入っていると伝えてくれないかな」


「わかった、伝えよう......って、大丈夫かな。 俺らレジスタンスなんだが、殺されないか?」


「あ、そっか。 まあ、出来たらで! 時間が無い、もう行くね」


「ああ、ノア......」


 ? と言った表情でノアが振り向く。


「死ぬんじゃねえぞ?」


 ベルフェゴール、七つの大罪。最強の七悪魔の一人。返り討ちにあう可能性は高いだろう。でも、俺......



 僕は、ベルゴさんを止めたい。




「わかった。 行ってくる」



 そうしてノアが城の扉へと走りだした。開ければ戻れない、この戦いの結末の果てに向かって。






 ◇◆◇◆◇◆




「いつまでっ......逃げ回るつもり!」


 キアリクは勝機を探していた。


 フローラの宝王器《王扇刀》から放たれる突風や鎌鼬の鋭い風の刃をかわしなが、更にはバーナルの攻撃を避け続けるという、ギリギリの戦いを続けていた。


 くっ......なぜ、これ程までに私たちの攻撃をかわし続けられる?

 バーナルの磁力の能力だって理解しているような動き......ていうか、私の王扇刀の能力だって、見る前にわかっていた。


 まさか、もう既に心を盗み読まれているの!?



 フローラのその予想は的中していた。戦闘開始時にバーナルとフローラをキアリクの宝王器《王糸爪》により、死角から攻撃し切り傷を作り血液を採取しいた。


 宝王器《王糸爪》は、ピアノ線のように細く長い、肉眼では視認しずらい刀身であり、大抵は魔力ガードの薄い首等の部分を、これで切り裂き一瞬で敵を葬る、奇襲向きの武器である。


 そして、その血液を舐める事でフローラとバーナルの心を読み取り能力を解明。その情報をもとに二人の攻撃を交わし続けることが出来ていた。



「いい加減に、しなさい!」



 ドオ――ン!!!



 苛立ったフローラの特大の一撃。王扇刀の巨大な突風、そして刃のような鋭い風の刃が襲いかかった。

 それまでのモノとは違い、それは魔力を大きく込めた前方全てを薙ぎ払う、とてつもない大風。



 ブオオオー!!!ゴゴゴゴゴゴゴッ......ズーン。と、大木がその体を横たわらせた音と振動が辺りに浸透する。



「......死んだかしら」



 ボコッ



 突然、飛んできた木片が、フローラの頭横に直撃した。



「ブッぐっ!!?」


 その場に倒れる、フローラ。意識はまだあるようで、ふらふらと立ち上がる。


「な、なぜ......これは、バーナルの能力......」


 そこまで言ってやっと理解した。


 バーナルに着けた花が消えている......!


 それを眼で見た訳ではないが、フローラの放つ操作信号が途絶えている事を感じた。



「これで、形勢逆転......ね」



 キアリクはフローラの王扇刀により、大きく巻き起こった土煙の中から現れた。


 そして、その能力より解放されたバーナルと共に目の前へと立ちはだかる。



「......そうか」


 キアリクは私の集中力を削ぐために......時間をかけ、バーナルについた花を破壊する事が目的だった。

 操作能力はかなりの集中力を要する。そこを攻められたのか。


 まあ、基本中の基本ね。私がキアリクを戦闘面で格下に見ていたから、見事足を掬われたといった感じか......。



「なあ、フローラ。 もうやめねえか? お前に勝ち目はねえ」


「フローラ、私......私もなんだ。 ただ、寂しかった」



 寂しい?



 何を言っているの?



「もう、大丈夫だよ」



 私は、ただ王の体を......愛しきあの人の命が消えたとき、それを私は守り続ける。



 それが私の目的




「違うよ、そうじゃない、そうじゃないでしょ?」




 違う......私は




 だって、王が......王のこと




 ああ、そうだ




「うん、そうだよ」





「私は、王に死んでほしく......無いんだ」





 フローラが膝を落とし、その場に崩れ落ちる。


「バーナル、フローラ、王を助けに行こう。 王と、この国を守ろう」



 三人の騎士が王城の入り口へと向かった。







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