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~7~ 里の護り手《門番》

 


 カイトが三人のメンバーへと指示をする。


「このエリアは俺達の担当だ。 あいつらは俺達だけで処理する」


「シウとジーノは隙をみて拘束」


 シウと呼ばれたおかっぱ黒髪の女は武器である先端に拳代くらいの鉄球がついた杖を一振りし、頷く。

 そしてスキンヘッドで体格が良く、背には大きな盾を背負うジーノと呼ばれる男が聞いた。


「カイト、ジタナイは?」


 武器である弓の調整をしている男、ジタナイは長い髪を手でかきあげ、ジーノへこたえた。


「俺はいつもの役だろ? この弓で、お前らが捕らえ損ねた時仕留める役......だろ?」


 カイトは、うん。と頷いた。


「そうだ。 だが、わかっていると思うが、決して殺すな。 ジタナイ、麻痺毒持ってきているな?」


「あたりめーよッ! コイツを使えば、かすりさえすれば勝ちだからな。 あと、隙があれば射って良いんだよな?」


 ああ。とカイトは言い、ジタナイとニヤリと笑いあう。ジタナイは弓使いとしてかなり優秀で、努力も惜しまない。

 放った弓は打ち方により変幻自在の動きをする。頼りになる奴だ......いや、うちの隊に頼りにならないやつはいない。


 シウの杖を使った攻撃は、恐ろしく速く、正確に相手の弱点を叩く。女でありながらも、三つある他の隊を含め、戦闘力でいうなら上位に位置するだろう。


 ジーノはその大きな体を使い、巨大な盾で攻撃を防ぎながら体当たりをし敵を粉砕する。剣は必要なく攻防一体の戦いかたで、俺はこれを攻略したやつを今までに見たことがない。


 俺の隊、一番隊はその名に恥じない最強のチームだ。


「あともうひとつ。 一緒にいる魔族はできる限り傷つけるな。 勇者を連れ戻したとしても、遺恨を残すような事があればその後やりにくい、との事だ」


 スキンヘッドの頭をひとなでしてジーノが喋る。


「なるほど、魔族の女は後々で事故かなにかにみせかけて、処理......そんなとこか」


 シウが静かに口を開いた。


「まあ、いいわよ。 私たちは言われたことをこなすまで」


 そしてカイトは背負っていた槍を手に持ち一回転させる。


「よし、油断するなよ。 まだひよっことは言え、神器持ちの勇者だ」


「――行くぞ!」



 ◆◇◆◇◆◇



「――ステラ、気がついてる?」


「え? なに?」


「小声で話ししてね。 誰かにつけられている。」


「!?」


「......ステラを襲ったやつらかな?」


 どちらにせよ早く何とかしないと、僕らはかなりまずいことになる。

 辺りが完全に闇夜となれば、ステラを守りながら戦うことが困難になるし、何よりこのまま疲弊するのを待たれて、じわじわ付け狙われるのはかなり(つら)い。


 ここで戦ったほうがいい。


「ステラ、そこの大きな木の陰にいてね。 僕の見える所にいて」


 心配そうな顔をするステラ。僕は大丈夫だよと意味を込め微笑む。

 するとステラは気をつけてねと言い、指定した場所へと移動した。

 さて......と。


「ねえー! なんで後をつけてくるのー?」


 ノアは呼び掛けて反応をみる。すると少し離れた木の陰から槍を背負った男が出てきた。

 男はノアへと話しかける。


「お前......ノアか。 里から逃げた勇者がいるとしか聞いてなかったが。 お前だったのか......」


 ? 誰だろう、僕は知らないけど......向こうは僕の事を知っているみたいだ。嘘かもしれないけど......これは......。


「ああ、覚えてるはずもないか......? 最後にあったのは、お前がまだまだ小さい頃だったからな。」


「俺の名はカイト。 里の護り手、門番(ガード)をしている。

  まあ、年がら年中、里の外の森に居るから面識はないし、お前らは門番の存在自体、知ってもいないだろうけどな......」


 いや、そんな話しはどうでもいいか、本題だ。と、カイトと名乗る男は話しを区切った。


「......俺は里の人間だ。 無理矢理にでも連れ戻せと言われているが、出来るなら争いたくはない。 ノア、里に戻ってこい」


 するとノアが口を開いた。


「まって......」


「なんでまだ隠れている人がいるの?」


 ノアがカイトの目を見つめる。するとカイトは目を静かに瞑り「......でてこい」と隠れていた二人に呼び掛けた。

 出てきたのは杖を持った女性と、大柄な盾を背負っている頭ツルツルの人だった。髪の毛が......ない。


 三人......これで全員?


「これでいいか。......話しを続ける」


「お前は勇者になるために多くの鍛練をしてきた。 それは厳しく、辛かっただろう。 逃げ出したくなる気持ちもわかる......。」


 一呼吸し、ノアの目を見つめ優しく諭す。


「だが、お前の亡くなった母親はどうだ? ......今のお前の姿を見てどう思う?」


 ......。


 杖を持つ女性が優しく柔らかな口調で喋る。


「いまなら間に合うわ。 ......里へ戻りなさい」


 お母さん......確かに、今のこの状況を見たら悲しむかもしれない。でも、ステラはもう僕の中で大きな存在に、大切な「人」になっている。


 里に戻ればステラは間違いなく殺される。そんなのは、絶対に嫌だ!


「......ごめんなさい。 僕はそれでも里には戻らない」


 カイトが「――そうか」と言ったその時。


 ヒュンッ!と、ノアを狙った矢が後方から二本飛んで来た。しかしノアは寸での所でかわしてみせる。


「「「「!!!?」」」」


 カイトとその仲間がそれぞれ驚愕の表情を浮かべる。


 ――やっぱり、まだ仲間がいた......!


 ――ジタナイ(!? おいおいおい!! 気配は完全に消していたぞ!? なんで今のを避けれるんだよ!!!)――


 ノアの予測は的中し、もう一人の弓の使い手を(あぶ)り出す事に成功した。


 すると、盾を背負った男がノアを拘束しようと飛び込んでくる。ノアが素早くかわしカウンターで蹴りを入れようとしたが、それは当たらず、スキンヘッドの男はギリギリでかわした。


 ――ジーノ(――お、恐ろしく早い!! これは、本気で抑え込まないと返り討ちにあうぞッ!!)――


 スキンヘッドが背負っていた盾を構える。身の丈程もある巨大な盾だ。そして叫んだ。


「カイト! コイツ、無傷で捕まえるのは無理だぞ!! いいな!?」


 カイトの返答を待たずに、盾を構え突進してくる。

 ――体当たり!ノアは瞬時に攻撃を理解し、猛烈な勢いで迫りくる盾をギリギリまでひきつけ、すぐ後ろにあった大木の側面を蹴り上がり、男の頭上を舞う。

 突進をかわされた盾の男は大木を砕き止まる。


 ノアは男の後ろへと着地し、突進後の無防備な盾の男へと攻撃をしようとする――

 しかし、何処からか飛んでくる矢がまたもやノアを襲う。


 ◇◆◇◆◇◆


 ――当てることができないジタナイは焦っていた。


(くそっ! かすれば矢の麻痺毒で勝ちなんだよ! なんでかすりすらしないんだ! ってかどうやって避けてんだ? まじで!?)


 カイトもまさかの事態に困惑した。なぜならジタナイは当てられると思ったときにしか矢を放たないし、それを外した所を見たことがなかったからだ。


 カイトは考える。


(こいつ......後ろに目でもついているのか? それどころかジーノの突進を......。 そしてこの違和感はなんだ......なにか......)


 もうひとつ、カイトは何かを見落としているような感覚に襲われていた。


 そして、シウが杖でノアへと攻撃を加える。狙いは四肢。―(とにかく動きを封じる!)―しかしシウはノアの動きが早すぎて、当てれる気すらしない。


 ――ノア(......杖、盾......弓。そして槍......よし)――


 心映を発現させる。ノアの右手に蒼白(あおじろ)い光が収束され、美しいロングソードが形成される。




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