~86~ 紅い星に運ばれて ②
大聖堂の奥、大量の花弁が宙を舞う。
ズギャゴゴゴゴゴゴッ!!!!
抉れる地面と、吹き飛ぶ椅子や、机......全てがバラバラになる。
カミナラがティアラへと、問う。
「てめえ、完全に死んでたはず......いや、あれだけ体を潰されて、生きていられるはずがねえ! 何で一瞬で復活してるんだ!?」
「うん? 私は死んでいたわよ? なぜそんなに慌てているの? 貴方も私が生きていることわかっていたでしょう? おかしな人......ふふふっ」
ティアラはカミナラに体を引き裂かれ、殺されてから、数秒の後に復活を果たした。
それに動揺し、猛ラッシュをかけティアラを攻撃し続けるが、その全てをかわされてしまう。
そこでカミナラに違和感が生まれていた。
なぜ、さっきは避けられなかった......?これ程の身のこなしであれば、先の攻撃なんてかわすことも楽に出来たはず。
......死ぬことがトリガーの能力だった?
ティアラは自分の目線をカミナラが読んでいること、それにあわせ、先々に攻撃を置くように繰り出していることに、気がついていた。
ティアラは、教会の出口へと視線を流し、ハッとした表情になる。
カミナラが、増援か何かが来たのかと振り向き確認した。が、そこには壊れた大きな扉のみが落ちていた。
――(!! しまっ......)――
カミナラがその意図に気がついた時には遅く、ティアラの思惑通り、隙が生まれた。
ゾリッ
カミナラが後方へと逃げ、飛び退いた。
激痛。その発生源である場所をみてみるが、存在しなかった。
肩から先が無くなっていて、おびただしい量の血液が飛び散っていた。
「? どうしたの、目を離したらダメじゃない......後ろに猫でもいたのかしら?」
にこにこと笑みを浮かべるティアラ。しかし、カミナラはそんな挑発は気に止めなかった......と、言うよりティアラの言葉が、聞こえていなかった。
彼女の後ろに現れたモノが何なのか、それを理解しようと脳がフル回転していた。
それは、人の骨が折り重なり、白く薄く発光した、まるで花嫁のドレスを被されたかのように、ヒラヒラとした布を纏う巨大な魔物。
頭が三つあり、どれも人の頭蓋骨だと形状でわかった。
「な、なんだその気味悪いやつは......」
「気味悪い? 酷いこと言うのね。 私のお母様とお姉様よ?」
「......は? それが、家族? ......。」
「そうよ。 私たちは......いいえ、この神徒教会の皆、家族よ。 死してもなお、共に存在し、共に戦うの......ねえ、お母様」
その巨大な骸の魔物が内包している神力は、カミナラですら計り知れなかった。
死しても......死んだ奴の力も?
カミナラは確信する。こいつは、自分の全てをぶつけてもおそらく勝てるかどうかの強さだと。
全ての魔神を使い、全力で倒すしかねえ......コウキ、ライキ、ジャキ、こちらへ向かえ!
「カミナラ、ねえ、私の愛しい子......もうこれ以上は悲しくなるだけ。 わかるでしょう?」
「は? もう勝ったきでいんのかよ......こちとらまだ全然本気じゃねえんだぜ?」
「あら、そうなの? でも......両腕が無いのに戦えるのかしら?」
――は?
ブシャアアアアアアアーッ
なん、で!みてたぞ、今、俺は!目を離さなかった!
攻撃が速すぎるのか!?
「あはっ」
「あははははははは!!!!」
「あーーーーーはっはははっはは!!!!」
異様な甲高い声で笑い出すティアラ。体をくの字に折り曲げ、くねらせ笑い悶える。
「......貴方、もう勝てないのよ? ふ、ふひっ......ひひ、くくくく。 もうお母様もお姉様も、貴方のこと喰べてしまったのだから」
これは、この攻撃は食事......って事は魔力を取り込まれたのか!
いや、それよか、あの時俺の攻撃を食らい死んだのは、俺の魔力に少しでも触れるため......!?
ティアラは、カミナラの頭の中へと語りかける。
――そうよ。貴方の魔力を、私の奥深くに感じるため。――
――だから、もう私には貴方の動きや力は効かないわ。――
「はっ! やってみなきゃわからねーだろ! 両腕が無くても脚が......」
無え!?
言った瞬間だった。その両方の脚が一瞬にして消えたのだ。
ドゴォ――ンン!!と、支えを失い、地面へと叩きつけられるように倒れるカミナラ。
「ぐばっ......くっ、これは......嘘、だろ、これ程の力の差が」
「私はね、選ばれた存在なの。 世界各地に神徒教会があれど、この神に愛された証を持つものは、私のみ......」
「だから、諦めなさい。 貴方は、決して勝てはしないわ」
は
はは、
そりゃあ、な
俺だけなら諦めてもいいんだけどよ。約束、してんだわ。
魔界のチビどもがよ、帰りまってんだよ。いや、わかってる......戦場へ、命のやり取りの世界へと飛び込んだ時点で、そんなものはただの滑稽な我が儘だよな。
が、俺は死ぬまであがいてやるよ。あの笑顔をまた見る!そう言う戦いなんだよ、これはよ!!
「まだ、だよ......まだ、楽しみ、足りねえ」
ドガシャアーンン!!!!
その時、天井のステンドグラスが大きな音を立て割れた。カミナラのコウモリのような姿の魔神、コウキが突っ込んできたのだ。
「ああ、私の教会が......ステンドグラスはお気に入りだったのに......」
泣きそうな顔のティアラ。しかし、カミナラは必死だ......すぐに指示を出し、コウキの能力を発動させる。
小さなコウモリ達を教会内へと放つ。神徒教会の信者達を、全て喰らわせるつもりだ。
カミナラはティアラの能力の秘密にこの信者達がからんでいるとふんでいた。
あの骸骨魔物の神力は、一人の人間の体におさめておける容量では無い。
「仕方ないわね。 この子達は、殺させる訳にはいかないし......ヒメ、斬り殺せ」
そう一言、ティアラが信者の一人へと命令すると、小さなコウモリ達は凄まじい速度で斬り殺され始めた。
それはとてつもないスピードで、信者側にコウモリによる被害が全く無い程であった。
場にはコウモリの惨殺された死体と血に彩られた教会の華々。
「......カミナラ? 本当に、勝てるの? 私、そろそろ飽いてしまったのだけれど」
カミナラの瞳には、まだ戦う意志が残っていた。




