~83~ 王都攻略戦 ⑲
フュン――ギャギッ!!! ズガガガガガッ!!!
見える!見えるぞ、ベルフェゴールの動きが!!!
渡り合える!やれる、この魔族化した体なら!
とてつもないスピードの押収の数々、飛び散る魔力の光。先程まではベルフェゴールの動きに、全くと言っていいほどついていけなかったヘンリーは、命と引き換えに手にしたその体に、確かな手応えを感じていた。
しかし力を手にしたからこそ、ベルフェゴールを仕留める事は出来ないとヘンリーは確信した。
この人はまだ本気を出していない!俺と違い、動きにまだまだ余裕がある!
これでも本気を出すにあたいしないと言うことか、それともこのままなぶり殺す気か......いずれにしろ時間をかけてもらえれば、こちらにとっても好都合だ。
仲間が到着すれば、ベルフェゴールを殺れる!!
しかし、ヘンリーの考えとは違い、ベルフェゴールはただ、単純な思いに振り回され攻めきれずにいた。
――ヘンリー、お前は......そうか、皆同じ思いを持ち戦いに身を投じているのだな。
我が身すら厭わず、他者の幸せを願う。
それは決して簡単な事ではない。
戦いに身を置き何十年の月日を経た故か、当然存在するその想いを馳せる事なくここまで来てしまった......。
俺は、俺の手で、この想いを潰し消し去るべきか。
壊れ行くこの世界の担い手は......新たな王では無く、人や魔族そのものだったのか。
......。
いや、もう遅い。計画は始まった......多くの血が流れている。俺は俺の進むべき所へと向かうのみ。
だが、ヘンリー、お前の想いは見届けよう。全てをぶつけてこい。それが果て、打つ手が無くなったとき俺が殺してやろう。
ヘンリーが必死で抗う中、ベルフェゴールは己の思いに整理をつけつつあった。
◆◇◆◇◆◇
ステラがうつむいた顔をあげると、アカギが身を起こしていた。それに続き、次々とその仲間達が立ち上がる。
「......さて、どうする。 お前は俺達を殺せない」
私は......ノアと、アレオス、ベルゴ......レナ、エルナ、ナツメ、レジスタンスの皆......たくさんの人と出会い、そして戦いの最中多くの命の散る様を見てきた。
レナの肉親を失った悲しみ、エルナの家族と思っていた人達を失くした悲しみ。
そうだ......
私にも出来ること、ある。
いや、私にしか出来ない戦い方がある!
ナツメには甘いと言われ怒られそうだけど、でも私には......誰かの大切な人を奪えない。
ステラの両手が白い雷で覆われた。
「またそれか......いいだろう、つきあってやる。 お前の魔力が切れたとき、そこがこの戦いの終着点だ」
ステラが集中する。今までの、私が感じてきたもの。
たくさんの幸せな気持ちと、生活。そして、それに反する悲しみや憎しみ、憎悪......それを全て
この白き雷、《心移》に込める!!
こんな不毛で悲しい争いを止めるんだ、皆の力で!!
想いよ、届け......!
ステラが地面へと再度手を当て、白き雷を流す。そしてそれがアカギを含め、その仲間全ての魔族へと流れる。
バチチチチィイイイ!!!
白雷をうけた魔族達は、衝撃をうけた。それは、肉体的なダメージは無く、精神に作用する。
「ぐッ!? な、何だこれは!!!!」
「み、みたことのない景色が......おれは」
「なんだこれは、感情が溢れて......ああ、なんだこれは、悲しい......」
涙を流し、その場へと崩れ落ちる者、呆然と空を見上げる者、様々な反応をするアカギの仲間達だったが、皆そろって同じだったのは、武器を手離し戦闘の意識が消えていた事だった。
アカギがステラへと語りかける。
「......人も、同じ痛みを感じるのだな。 俺はそれから目を背け、奪おうとしていたが......これを見せられてしまっては、もう人は殺せない」
ステラは頷く。そうだ、同じなんだ。皆、人も魔族も。だから私は手を繋ぎ、この戦いを終わらせたい。
「私には、あなた達を殺す意志はないのだわ......だけど、お願い。 悲しみを少しでも減らすのに協力して!」
「ベルフェゴールは必ず、止めて見せるから!」
ベルフェゴールを止める。それは果てしなく無謀な提案だったが、今の白雷の記憶にあった一人の勇者に皆、希望をいだいた。
彼ならば、やれるかもしれない。
アカギは仲間達を見渡し、聞く。
「......お前達は、どうしたい? このまま人を殺し、喰らい、その先に幸福が本当にあると思うか?」
「なに言ってるんですか......隊長。 俺ら、あんたについていくって、ずっといってるんですよ。 同じ気持ちです」
「隊長だって、このまま戦い続けるのが正しいだなんて思ってなかった......やりましょうよ、こっからが本当の革命だ」
アカギはステラの目を見据える。
「わかった。 だが、俺は部下の命も同じくらいに大切だ......必ずベルフェゴールを止めろよ」
「大丈夫、私の勇者は世界一強いんだから」
多分、ノアは王都に戻っている。彼の神器の気配がした......あれはノアのモノだ、私にはわかる。
ノアなら、必ずベルゴを止められる。
私もいかなきゃ、ノアを助けに!
◆◇◆◇◆◇
ガギン!!
「っと......あぶないなあ!」
霧の分身を使い攻め立てていたナツメだが、徐々にその数を減らされついに本物へとたどり着かれた。
彼女が今戦っているのは、国を裏切り魔族と裏で手を取っていた騎士軍である。
「ば、化物か......あの女......一人で私の隊のエース四人を殺し、あの魔族二人と互角以上に戦えるなぞ......!」
ステラと別行動をし、レナを捜していたが一向に見つからずにふらふらしていると、国王騎士軍の人間が人民を殺して回るのを見かけていた。
それを捕まえ聞いたところによると、その隊の一つが魔族側へとつき、その命令での行いだった。
ナツメはレナを捜すのを一時中断し、隊を潰すことにした。その理由を面白そうだとか、強いやつが居そうという事にしていたが、彼らにとって狙いやすく殺しやすい子供がその餌食となっていたのを発見し、止めねばと本能的に彼女をつき動かしていた。
殺人鬼であるキラージャックは、そういった意味合いではただの人殺しでは無かった。
力の無い者が蹂躙され、悪しき権力者がのさばる......それ故にこの町、王都へととどまり人を殺し続けていた。




