~82~ 王都攻略戦 ⑱
ダメだな、これはウルファだけじゃ持たない......!
かなりの力を持っていかれるが、もう一つ使うか!!
左手に式神を持ち、魔力を込める。すると、その式神、人形の紙は赤く光やがて猿の姿になった。
「モンキャ! 助けて!」
「!? なんだこの状況!?」
モンキャと呼ばれた、猿の姿の式神は驚いた。唐突な修羅場、目の前の惨状と敵の魔力の大きさ。
そして一瞬で理解する。
「ユリウス! ウルファ! あれ使うからな!」
「おっけー! 頼むぜ!」「りょ!」
モンキャがそう言うと高く跳びはね、城の天井のシャンデリアへと乗った。
魔力をそこへ集め固定。
これでよし!あとは......。
モンキャの能力の一つ魔力爆発《猿爆鬼》。これは場所や物に魔力を込めることで、それを簡易の爆弾にすると言う能力である。
使用制限は三ヶ所までで、数が増えるとその分魔力が分散され威力は弱まる。
「――キキィッ! フルパワーでいくぜ! 爆ぜろ《猿爆鬼》!」
モンキャが技名を高らかに言い放った瞬間、シャンデリアは大きな光に包まれ、すぐに大きな閃光となりその一帯を吹き飛ばした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ......。
「ふははは! 全く最高っすね、ははっ......とんでもねえ威力っす」
その爆発の威力たるや凄まじく、シャンデリアを中心とし天井がまるまる吹き飛んでいた。
瓦礫が散乱し、煙の立ち込める城内。無くなった天井の一部からは結界により覆われた黒い空が見えていた。
「......逃げても無駄なんすけどね。 でられねーし」
タッタッタ――! ユリウス達は、走りながら状況を整理する。
ウルファの背にはミミが乗せられている。もう、その瞳には何も映ってはいないかのように、濁り始めていた。
まずいな......とにかく、医務室だな。こいつを安全な場所まで運ばねえと!
「おいおい、なんなんだよ、この状況は! さっさと説明しやがれよ! キキッ」
モンキャがユリウスに言うと、ウルファが先に答えた。
「みりゃわかるっしょ。 魔族に攻められてんだよ、この城......つまり国が。 王はどこかにさらわれた可能性がたかい。 匂いがしないからね」
ユリウスも頷いて話し出す。
「俺は王に呼ばれて来てたんだが、多分これがあることを察知して呼んだんだと思うんだよ。 全く人使い荒いよなー」
「キキィッ! おめーの事好きなんだろが? 前からいってんだろー?」
「あほか! この恋愛脳猿がっ! 良いから打開案考えてくれよ!」
まじでこいつときたら、出てきたらその手の話ばっかしやがって!
ホントに伝説の神獣なのか疑わしくなるぜ。
ユリウスの使役する式神は特殊で、自身に宿した魂を式神へと移し顕現させる。
この魂は白亜の騎士総本山で五年の月日をかけ修行をし、数百の候補生からたった一人選ばれ受け継がれる三つの神なる獣の魂である。
犬、猿、雉。
その昔、デーモンキラーや鬼殺しと言われた、鬼を殲滅しようと動いていた伝説の勇者が連れていた獣で、ある者が行った神降ろしで偶然降りてきたのがこの魂だった。
それから白亜の宮殿に置かれ、選ばれたユリウスが使役している。
「でもよー、あの魔族まじで強いぞ? 殺されるの時間の問題じゃねえか? キキィ」
「三匹でもダメかな?」
ウルファがうーんと唸る。
「俺らが本来の力を出せばまあ、なんとかなるかなあ......ユリウス死ぬけど」
「それはちょっと嫌かなあ」
「いや、ちょっとかよ! ウキキッ」
その頃、王の間では。
ベルフェゴールと幾重の剣を重ね、ヘンリーは貧血でふらふらになっていた。
もはや勝ち目はどうみても無く、今にもベルフェゴールの魔力に飲まれ意識を失いそうであった。
「......はぁ、ッ......はあ」
「もう、いい。 お前は良くやった。 今、その矛を納めれば見逃してやる......この場から去れ」
ベルフェゴールはそれを口にしながら自身に驚く。見逃してやる、と確かに言った。
騎士に対し、ましてやかつての仲間であった王徒十二騎士の一人、ヘンリーに対し侮辱的ともとれる発言。
わずかに動揺した。
「へっ......てめえ、なめんなよ......」
ヘンリーはにやりと笑う。
「......?」
ヘンリーの能力は「機能停止」魔眼による力で、触れたものの動きや性質を触れている間だけ、止める事ができる。(ただし、それが発動している間、莫大な魔力を消費し続ける)
そして、宝王器《王混刃》
先端が斧のようになっている槍は、斧の破壊力と槍の突きのスピードとそしてリーチを兼ね備えた、宝王器の中でも戦闘に特化した武器である。
その秘められた能力は......
「おれは、今日、この為に......この能力は、今まで使わなかった」
自身の魔力の蓄積。この宝王器は魔力を蓄積し、それを還元する力を持つ。そして、ただ還元されるのではなく、蓄積した魔力量の0.5倍が戻ってくる。
ヘンリーがこの武器に蓄積した魔力量は実に十数年分のモノ。
――俺の体へと、戻れ!これまでに蓄積された魔力よ!!
それはとてつもなく大きな魔力量。ヘンリーの体が変質し始める。
そう、魔族化である。人の許容力を越え、魔眼にも収まりきらない魔力は人の体であることを許しはしない。
凄まじい勢いでからが変わりはじめ、樹木のように肌が変質してゆく。
しかし、ヘンリーはタイミングを見ていた。自分が魔力を自在に操れる、適応できる体になった状態を狙う。
ここだ!ヘンリーは魔眼《静止眼》を発動させ体の魔族化を止めた。
これにより、ヘンリーは魔族の体を手に入れ、とてつもなく増幅された魔力を使用する事が可能になった。しかし......。
「見逃すと、言ったのだぞ。 お前は......もはや、そんな体になってしまえば......おそらくあと数十分で魔眼の制御能力が限界を迎える。 そうなればお前は魔族化が進み完全に魔樹となり、死ぬ」
「ああ、そうだな。 だからその前に、あんたを倒す」
覚悟は出来てるんだよ。俺の命はあの時、娘や妻を失ったときに置いてきた......。
だからもう
ヘンリーさん! ヘンリー? また裸ッ!最低!
ヘンリーさん今回の作戦なんだけど......。
ヘンリー、ヘンリー?ヘンリー!
――ッ! なんで、あいつらの顔、今思い出してるんだ?
「......ヘンリー。 い、嫌だ......どうして」
振り向くと涙をながす、エルナ。その顔に娘が重なる。
あ、俺......そうか。まだ、こいつらと......
けど、もう遅い。これを発動させればもう俺は......だから!
残すぞ、俺の生きた証しと、家族の......ノア、エルナ、レナ、レジスタンスの皆......お前らが暮らせる幸せな国を!
ヘンリーがベルフェゴールへと槍を構え、突進する。
同じ思いを抱える二人の全く違う思いがぶつかり合う。
命を糧に花が咲き誇る。




