~80~ 王都攻略戦 ⑯
倒れたノア。背からは突き出た白く美しい剣。
「まさか、マジで自害するとはな......拍子抜けだぜ」
ゾクッ
マニアラは咄嗟にレジスタンスから飛び退く様に離れた。危機回避能力、幾戦もの死線を越える戦いによっての勘が体を動かした。
それは的中し、マニアラとレジスタンスの間、居た場所には黒い大きな刃が突き出ていた。
――(あっぶね!!! あと数秒避けるのが遅れてたら死んでた!!!)――
マニアラが視線をノアの方へ向けると、既にその場から消えていた。
死角......後方!!!
ギィィイイインンンン!!!!
視界から外れるように近づき不意をついたノアだったが、読まれガードされる。
その時、マニアラはノアの背に白い翼が発現していることに気がつく。
なんだ、これは?何かの能力である事は間違いない......つーか、こいつ剣ぶっささってなかったか!?
突然地中から現れた黒い刃、自害したはずのノアが生きていること、なぞの翼。
普通ならば混乱しそうなこの状況にも冷静にいられるのは、やはり戦闘経験の歴によるものだろう。
あれは、あの翼は多分、神力だ。そして地中から出てきた黒剣もノアのものだろう。
もし、レジスタンスのどいつかの能力ならば、ノアが自害したタイミングで発動するのはおかしい。
と、言うよりも何よりも......!!
ガガガガガガガガッ!!!!
このノアってやつ!攻撃速度が尋常じゃなく早ええええ!!!!
俺が全力でガードさせられるなんて、ありえねえぞ!!!
ノアは斬り結びながら、片手でもう一つの神器を抜いた。
ユルゲニシュ、緋の剣。
ゴウッ!!!赤黒い炎を刀身に纏う。この炎は敵の魔力を吸収し燃え盛る。
しかし、剣を抜く際に片手になった事で、隙が生まれた。その隙をマニアラは見逃さない。
ここしかないと思ったマニアラは本来の姿へと一瞬で変貌し、とてつもない力でノアへと体当たりをした。
「!! ゴポッ......ばっがは......!!!!」
ズガガガガガガガガ!!!!
地面を抉りながらノアが押し潰される。やがて城壁へと到達、大きな亀裂を走らせ、やっとそこでマニアラは止まった。
マニアラの姿は二足歩行の大きな牛のような姿で、元の姿の三倍にもなっていた。
魔力に覆われた、その大きな体は体当たりをするだけで、地を割り抉る程の力を持つ。
よし!これで死んだろ!流石に!!
そう勝利を確信したその時、マニアラの体が燃えた。
「ぐおおおおおお!!!?? なんだこれは!!!!」
腹を見るとノアが先程持っていた緋剣が突き刺さっていた。そこからこの赤黒い炎が発生する......そしてノアを見ると。
ガラガラッ......ドゴッ!
瓦礫から出てきたその姿は、押し潰されたハズだったが、何事もなかったかのように、無傷だった。
!?
「なんなんだ!? 幻覚!? と、とにかくこの炎をけさねえと!!!」
地面へと転がるが炎は消えない。これはマニアラの魔力を糧に燃え上がる炎。
彼の体を焼き尽くすまで消える事は無い。
「ぐおおおおおおおーーーーーがががあああつい!!!」
ノアが深淵刀を構える。腕を交差させ、姿勢を低く重心を落とす。
「さよなら」
ノアの姿があまりの速さに消えたかの様にみえる。一瞬にしてマニアラの後方へと移動したノアは既に剣を振った後。
背後に残ったのは、マニアラの頭と胴がわかれた死体だった。
ドオオオンンンッ!!!マニアラの巨体が大きな音をたて倒れた。
「......間に合った」
ノアの背にある翼がだんだんと散り、消え始める。ふらふらと建物の陰へと移動し、レジスタンスに言う。
「ごめん、ちょっと力を使いすぎた。 眠りに、入るから......すまない、あとは......たの、む」
光の翼が消えた時、ノアは意識を失いその場に伏した。
神器・心映 《アーマインノ》
白く純白の光の剣。神力で形作られており、ノアに対してのみ効果がある。
物理的な攻撃力はないが、ノアの体に対し斬りつける事で回復能力が発動し、傷が回復し欠損部分が元に戻る。
そして心臓を貫く事で、自身を強制的神力強化状態にすることができる。
この状態になると身体能力の向上と瞬間治癒能力が発動し、戦闘能力が大幅に上昇する。
しかし、その反面リスクが大きく、効果は五分間で時間切れで強制的な睡眠に入ってしまう。(約三十分~一時間)
レジスタンスという人質をとられていた事と、マニアラは恐ろしく強く、ここで逃せば被害が大きくなることを考え、確実に倒すことを選びアーマインノの覚醒状態を使用する事を決断した。
「ノア......」
「......ここはノアを守ろう。 彼の力は必要だ」
「うん」「ああ」
レジスタンスがノアを運んでいるとき、一方、城の内部では激しい戦闘が未だ続いていた。
「おい! ミミ!! 死ぬなよ!!」
十二騎士のミミはかなりの深手をおおい、その能力も全て使用していたが、まだかろうじて死んではいなかった。
途中に参戦してきた白亜の騎士により、殺される寸前だったガルデアとミミの二人は命拾いすることが出来た。
「......ふっ......はは、私は、もう......無理だ」
「ふざけんな! まだ死なせねえぞ!!」
大命四魔・シンララの相手をしている、白い鎧の騎士がガルデアへと叫ぶ。
「お前、こら! こっち手伝え! 皆殺されんぞ!!」
「おいおいおい! いいね、あんた! まさかそっちから来てくれるなんて嬉しいっすねえ!! しかも予想以上の強さ......この短い時間に俺の能力《分解》と、魔眼の効果を理解出来たやつはそうそう居ない! 誉めてやるぜ!!!」
「そりゃ、どーも!! (嬉しくねえー(^^;))」
ヒュガッギギギギギンッ!!!
シンララに触れられれば、《分解》の能力で鎧でも体でも全て破壊される!
だから攻撃は一切受ける事は出来ない......けど、よォ!!!
こいつ、体術を極めてやがる!攻撃なんてもっての他で、避けるだけで......ギリギリ!
動きが速すぎる!!!
「あははははっ!!! 俺は大命四魔の中でも戦闘能力に秀でてるんすよ! その俺の動きについてこられるなんてここ何十年見たことなかった!! やっぱりお前すごいっすよ!」
くっ、これまじ式神の援護ねえと、とっくに殺されてるぞ!
なんとかこの脚を止めねえと......。
ガルデアが斧を担ぎ上げる。
そうだ、ミミを救うには......こいつを倒さねえと!!
かつてない窮地に幾つもの死線を越えたはずの男は、ここにきてさらにその真価を発揮する。
シンララという次元の違うと感じてしまう程の力。
しかしガルデアも守りたいモノがある。死よりも失うことの怖さを知り、彼はシンララへと走りだした。




