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~6~ 迷いの森

 


 結構な時間が経った。里を出て迷いの森を駆け回り昔シルフィに聞いた森の抜けかたにならい、太陽の位置と森の形を見比べ進んでいた。


 そのはずなんだけど、どれだけ進んでも森を抜けられない。

 僕達、里の人間はこの森で迷っても里には戻れるように訓練されている。

 けれど外に出る方法は、勇者となり外の世界へと旅立つ時にしか教えてもらえない。


「シルフィに教えてもらった方法はダメか......どうやって里へ行き来していたんだろう。(そもそもシルフィは妖精をパートナーにしてたから、それで迷わなかった......のか?)」


「......ノア、ごめんなさい、少し休憩していいかしら......?」


「あ、ごめん、気がつかなくて......」


 結構な距離を移動してきた。ステラは病み上がりみたいなものだから、しっかり気を配らないとと思っていたんだけど。

 無理させちゃったな。


「疲れたよね。 ......あそこの木陰で休もう。」


「ううん、大丈夫よ。 ありがとう、わかったわ。」


 そもそも迷いの森ってどれだけ広いんだろう。もしかして迷っているんじゃなくて森の外までまだまだ距離があるだけなのかな。

 里の外へ出たのは初めてだからな......。


 今日中に森を抜けられないなら早めに寝床にする場所を見つけないと。

 暗くなったらまずい。迷いの森には魔物や獣はいないけど、ステラを襲ったという奴らがいる。なるべく安全な場所で夜を明かしたい。

 ステラ......大丈夫かな。かなり疲れているみたいだ。


「ノア......お話し、していい?」


 不安そうにステラはいう。

 なんだろう改まって......。


「ここまできて言うのも、遅いと思うのだけど......」


「里......本当に良かったの? 私のせいで......私が甘えてノアの家に行ったから......でしょう?」


 ......そうか。ステラは......責任を感じているんだ。

 そりゃそうか。ステラの目から見ると、ゆくゆくは勇者になるはずだった僕が、自分のせいで里を追い出されたように映っている。


 でも違う。これは僕の選んだ道だ。ステラを見殺しにしたら、僕は勇者になんかなれないと思った。大切な人ひとり守れないなんて、そんなの勇者なんかじゃない。

 きっと師匠もそう言う。


「大丈夫、里を出るときに言ったでしょ? ステラは僕の大切な人だ。 だから僕が守り抜く......ん?」


 顔を真っ赤にしたステラはどこか一点を見つめ固まっていた。

 あー、僕これ冷静に考えたら、結構恥ずかしいこと言ってないか?


 ......


 ......


 あ、これヤバい。僕も恥ずかしくなってきたんだけど。

 ていうか、里で彼女の勇者になるとかなんとかってのも言っちゃった気がするんだけど、あれどういう風に思ってるんだろう。

 何勝手に勇者とかいっちゃってるの?やめてよね!とか思われてたらどうしよう。


 こ、怖くなってきた......。


 不安になり、内心焦りだす僕とは反対にステラの不安は多少消えたみたいで、にっこり微笑んでいた。


「......歩ける? 陽が暮れる前に、何処か眠れそうな場所を探したいんだ」


「うん、わかった。 頑張る」


 あれ、そう言えば、ステラって迷いの森をさ迷っていたんだよね。

 どのくらい森にいたんだろう。


「そういえば、ステラはこの森にどれくらいいたの?」


 少し後ろを歩いているステラに顔を向け問いかけた。


「そうね、たぶん四日とかかしら」


「四日!?その間ずっと森で寝泊まりしてたってこと?」


「うん。 怖かったけれど仕方なかったわ。 魔物も獣もいないみたいだけれど、日中でも暗いから......」


 魔物も獣も......そういえば、ステラから魔力を感じない。


「そういえば、ステラは魔法とか使えるの? 魔力を全然感じないんだけど......」


「私は、魔力を封じられているの。 この森に置いていかれた時に、ここまで連れてきてくれたお父様の使いの方に」


 魔力を......なんのために? でも、これでひとつわかった。

 里の(そば)まで来られたのは、ステラを森の結界が魔族だと感知しなかったからなんだ。



 ◆◇◆◇◆◇



 ???「いた。 あいつ、あの髪色と角......三番隊が狩り損ねた、魔族の女だぜ。」


 ???「ホントだ。 里の勇者も一緒だね。 魔族を助けたって話しも入っていたけど」


 ???「この状況を見るに、マジだったんだなあ......どうする?カイト隊長」


 カイトと呼ばれた髪を逆立てた短髪の男が応える。


「どうするもこうするも、捕らえるだけだろう。 それが俺達、里の護り手......門番(ガード)の仕事だ」



 ◆◇◆◇◆◇



 ~一方里では(数時間前)~



 里の長ルードが里の連絡役に言い門番(ガード)へ二人を捕らえろと指示を出していた。


「あれは、ノアは絶対に逃してはならない。神ノ器はとてつもなく強力な力......ともすれば、世界の均衡を簡単に崩しかねない」


 先生の一人が頷き同意する。メガネのズレをくいっと直して喋りだす。


「そうですね。 それにあれほどの戦闘力......まさかアランや他の勇者、戦闘訓練の......コウキ先生すら意図も簡単に倒すとは」


 するとアランが叫びだした。


「は、はーあ!? 俺はまだ負けてねえぞ! あいつ......絶対に殺してやる!! ぶっ殺してやる!!!」


 それを聞いた他の勇者がアランへと言葉を投げた。


「ふっ......神器も無いのに、どうやって殺すんだよ」


「あ!? 誰だ今言った奴は......!」


 声のした方へ振り向くと、そこには神器の大剣を持つゴーランが頭上から見下していた。


「......俺だが、文句あるか?」


 威圧され何も言えなくなるアラン。ギリッと歯ぎしりし、悔しい気持ちを自分の奥底へと押し込める。

 しかし周囲を見渡すと、自分を指差し笑っている者やこそこそ話しをしている者が目につく。


 フン、と鼻で笑いゴーランが立ち去った。


(くそくそくそ!! なんで俺が!! ノアの野郎、絶対にゆるさねえ!)


 そして先生がアランに言う。


「アラン、神器を失くしたお前はもう勇者として里を出ることはできない。 本当にすまないが......これからは里の裏方で協力してくれないか」


「......は?」



 立ち尽くすアラン。シンに肩をぶつけられ、すれ違い様にバーカと言われてしまい、しりもちをついてうつむいた。


「なんで......俺が......」




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