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~75~ 王都攻略戦 ⑪

 



 やっちまったなぁ......三騎士の事もあって、死体を操る能力だと勘違いしちまった。

 ていうか、そう思うように誘導されてた気がするな。


 やべ......意識が、消える。




 バーナルの胸に青い薔薇の蕾がついた。フローラが落ちている扇を拾い、大切そうに胸に抱く。

 ――王、私の大切な。必ず......私が手に入れる。


「フローラ」


 背後から聞き覚えのある声がした。振り返ると、白い髪の幼い子供がいた。いや、違う。彼女は容姿こそ子供のように見えるが、十二騎士に加わる程の力を持つ、騎士。


「......キアリク」


「フローラ、バーナルをどうするの......?」


「貴女こそどうして此処にいるの? ノアの見張りで王都を出た筈では......?」


 キアリクはその言葉と共に気がつく。フローラが私が魔族の内通者だと確信していると言う事に。


 キアリクも確認した。右の手の内......魔力印。内通者の証。

 フローラも魔族側だったのか。


「もしかして、今、気がついたの?」


「......」


「ちゃんと自覚しなさいよ。 これは戦争なのよ? ほんの少しのミスが敗戦へと繋がる......もう一度聞くわ。 なぜ此処にいるの? ノアは?」


「フローラ、私は......皆が好きだった」



 は?と、フローラは驚いた。突拍子のない発言、答えになってない回答、そして一番驚いたのは......「好きだった」

 フローラは混乱する。彼女は、一体なにを言い出したのかと。



「十二騎士の皆は、最初はだれもかれも信用の出来ない人だと思っていた。 けど、私は......ノアを通じて皆を見る事で、それが変わった。 私は目を背けていたんだ」


 人の悪いところばかりが目につくようになっていた。

 人の裏を常に見て接するようになっていた。


 でも、人が人である以上、それはあるものだし、そのぶん良いところもあった。


 だから私は......



「......意味がわからないのだけれど」


「わからなくても良い。 でも......バーナルは殺らせないし、フローラも死なせない」



「ああ、なるほどね......まあ、仕方ないか。 この戦争で頭がおかしくなってしまったのね」


 ヒュン......と、フローラは扇でキアリクを指した。


「あなたも私の騎士に加えてあげる。 寂しくないように、ノアもね......」



 フローラは十二騎士でも上位に入る戦闘力の持ち主だ。対して私は、能力的にも実は戦闘向きではない。

 だからこの戦い、勝ち目は......。



 でも、違う、違うんだ!


 心に従え。幾人の心を見てきて、わかったふりをし続けた......自分の心を見ろ!



 私は、十二騎士を......仲間を、皆を......




 救いたい!!!!




「フローラ......いくよ」



「......すぐに終わらせてあげる」




 バーナルの胸にある蕾が、青く咲いた。





 ◆◇◆◇◆◇




 ノアが魔族を倒しながら進むと、凄惨と言うに他無い、異常な場所を通り掛かった。



 そこで見たものは、魔族も人間も内臓や腕、脚、頭、それらが壁や屋根......至る所にへばりついていて、まさに血の海と言うやつだった。

 買い物通りが、それらで彩られている。



「......なん、だ、これ?」



 魔力残滓に悪寒を感じる。こんな事は始めてだ。

 これは、見過ごせない......この元凶を止めなければとてつもない死者がでる。

 魔族にも人間にも。


 ......捜さないと。


 その時ノアが気づいた。



「お、お前......」


 一つの店から出てくる人影。その手には幾つもの生首。髪を掴み両手にぶら下げている。


「......お? お前......久しぶりだなぁ! 会いたかったぜえ!」



 この凶行に及んだ元凶と思われる男。そいつはぼろぼろのフードのついた赤い布を身に纏う。

 そこから見える顔はノアの知っている人物だった。



「......アラン。 なぜ、君が......ここに。 いや、なぜこんな事を!?」


 アランは、ドシャッと掴んでいたものを離した。地面に打ち付けられたそれは、衝撃で切り口から血が噴き出した。



「ノア、お前、良いなあ......それ、制服? 似合ってんじゃん。 ふひひっ」


 これは、アランは普通じゃない。顔が......目の周りは隈で黒く、髪は人や魔族の血と脂でぎとぎとでボサボサ。色も赤黒く、口の周りもドス黒い。


「アラン、もう一度聞く......君は何をしているの?」


 すると、足元に転がる頭を踏みつけアランは言った。


「みりゃあ、わかんだろ? パーティーさ。 王都、パーティー中なんだろ? いやあ、いいタイミングでこれたぜ。 柔らかくて美味い女、子供が沢山いて――......


 ノアが転がる頭を注視する。それらは全て女性か子供のモノだった。


 ......――大満足だぜえ?」



「殺すしか無いか」



「......あ? 誰が誰を殺すって? お前......まだ俺より強いつもりかよ?」



 ヒュッ



 アランの姿が一瞬にして消える。――後ろ!


 ドガッ!!!アランは真後ろへと瞬時に移動し、蹴りをいれるがそれをノアは両腕をクロスさせガードした......



 ドオォオオオオオン――



 が、とてつもない力、破壊力で、ノアは吹き飛ばされ、後方の建物の壁を突き破った。



 ――ンンン!!!



「あひゃっ! なーにやってるんだよ? ノア、お前受け身もできねえのか?」



 何をどうやっているのかはわからない。本来ならばこれ程の魔力を内包すれば魔族と化すはずだ。

 けれど、どう言うわけかアランは平気な顔をして魔力を操作し肉体強化している。


「......君は、一体」


「おおおー! さすがノアだな! 昔から、耐久力だけはある......けどよォ、それ」


 アランはノアへと指をさした。その先にあったのは今の一撃によりぐちゃぐちゃになった自分の右腕だった。


 !? 神力でガードしたはず......なんて破壊力なんだ!!!


 驚くノアにアランは追撃を加える。


 ――はやっ......い!


 アランは、とてつもないスピードで周囲を跳ね回り、ノアを撹乱する。



「ひあははははははーッ!!!! さあああて! 次は何処を失なうのかなあああーっと!!!」



 ガガ ガ ガ ガ ガ ガガ ッ!!!!





 ヒュッ......




 ドゴォオオオンンン!!




 ノアの左脚へとタックルし、地面へとめり込ませる。あまりの衝撃に石畳はめくりあがり、あちこちへと飛ぶ。

 それにあたったガラス窓は割れ、けたたましい音を奏でる。



 そして、アランに押し潰されながも、ノアは腰の剣へと手をかけた。






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