~73~ 王都攻略戦 ⑨
~数時間前~
ノア達は王都を出て、一番近くの町へと南に道なりに行く。そこで一泊してからまた更に南へと進み、最南端にある国境を越える予定だった。
「......ノア、何か聞こえない?」
「王都の方からだね。 あれは......魔石を使った拡声器か。 何か言ってるけど、よく聞こえないな」
「ノア......」
「キア? どうしたの」
「ううん、なんでもない......」
「?」
私は......いいのかな。
このまま、何も知らないふりして。
多分、王都のステラやレナは殺される。
それを知っていて、私は何食わぬ顔をして、これまでと同じく......ノアの側に居続けられらるのかな。
私はノアが大切だ。だからこの国の無くなったあと、魔族に支配されるこの世界を、ノアを守って生きていく。
でもそれって......ステラやレナの居なくなった、大切なものがない世界で生きていくのは
ダメだ。
「ノア、ごめんなさい。 王都に戻ろう」
「? どうしたの、急に......」
「落ち着いて聞いてね。 今、王都では内乱が起こってる......だから止めに戻らないと! 人が皆殺されてしまう」
「キア......」
「ごめん、俺......知ってた」
「え......?」
「君をこの先の町に置いてから、王都に戻ろうと思っていたんだ。 ごめん」
違う、そうじゃない。知っていたって......どうして。
「......多分、今回の内乱で国が大きく変わる。 だから言うけど、俺はレジスタンスから、ヘンリーから今回の襲撃の情報を貰っていたんだ」
「ヘンリー......あいつ、やっぱりレジスタンスだったんだ」
「うん。 ヘンリー達はある魔族から情報を貰っていて、それで今回の事を知っていた......そのある人は、そこの木陰にいるんたけど」
ノアの指が差された先。木の影から現れたのは、白髪の女。魔術師のような出で立ちで、杖を持ったその人を私は見たことがあった。
「魔術師......マーリン!」
「こんばんは、お二人とも。 ノア、キアリク......申し訳ありませんが、話をしている時間はありません。 私にもやらねばならない事があるので。 早速で悪いのですが王都へ飛ばしますよ」
「え、どういう事......ノア!?」
「マーリン! キアも飛ばしてくれ!」
「え、ええ? うーん......」
「また美味しいお酒、買ってくるから!」
「!? くっ......流石ノア。 わかってますね......わかりました」
足元に魔法陣が浮かび上がる。マーリンの持つ杖の先から流れ出る光のルーン。
転移魔法と結界魔法のスペシャリスト。
「キア! 着いたら魔族を倒しながら王城を目指して! この転移魔法、どこに飛ばされるかわからないから......」
ノアはまだ私が魔族側の人間だなんて、知らない。
でも、そんな風に......されたら、私の事をホントに仲間としてそんな風に言われたら、私は......。
「ノア......でも、私......!」
「俺達で、王都を......皆を守ろう! 頼んだ!」
魔法が発動し、二人の体が消えた。ただ一人、残されたマーリン。
「さて、これで私の仕事は一つ終わりましたね。 あとは王を捕らえるだけ......ふふ。 王はどんな顔をされるのか。 きっと驚くでしょうね......裏切り者のように見えますから」
でも、私はこの国を愛しているのです。であれば、世界を変えようとするのは理解できるでしょう?
ノアは貴方より強い。おそらく魔王を討ちその先にある悪の根元をも壊せる程に......。
私の国は壊させない。
ノアを導き、そしてこの国を先の魔の手から守る。あの人の創ったこの愛しき花の国を......。
さて、王を拐いましょうか。
◇◆◇◆◇◆
「あん? なんだそいつは?」
「ま、まじなんすよ! あの鎖使いのバカ強オーク......一本角のガガンを一瞬で......殺しちまったんです! 俺、見てたんすよ!」
「はっ、お前、寝ぼけてんのか? ガガンが簡単に殺されるわけなぃだろ......しかも人間だろう? ありえねえな」
人の体に獣の頭。イビルウルフと言う魔族のリーダーが首を振り、呆れたように部下に溜め息をつく。
「まあいい、俺様がそいつを殺してやる。 案内しろよ」
ふん、バカな野郎だよ。それがもし本当の話ならば、ガガン、お前が人間ごときに殺されたんだとしたら......油断しかねえ。
油断して殺されるなんざ、本当にバカだぜ。
まあ、敵はとってやっからよ。
と、その瞬間、腹の辺りにとてつもない衝撃と熱。体が後ろにあった建物へと打ち付けたれた。
「ガッ......はっ......!?」
な、なんだこりゃあ......腹に黒い刃が!こ、これは......!?
「ひゃああああああああ!!! て、てめえは!!――あぶゅっ」
「ぎゃああああ」 「やめっおわあああああ......」
百もの数の部下達が次々と黒いコートの男に斬られていく。
こいつか!こいつにガガンが殺られたのか!?あ、あり得ねえ!!
まだ......子供じゃねえか!くそ......ダメか......腹の傷が深すぎる。
ああ......いるんだな、化物って
油断か......油断じゃねえな、これは......
ズパッン!!!
――ゴトンッ、ドシャ。
落ちる頭。最後に見たのは悪魔染みた強さの少年の鋭い瞳だった。
イビルウルフと一角オークは、今回の国取りの為に魔界から転送されてきた魔族である。
イビルウルフ一派は魔界でのランクはS、その連携攻撃で縄張りとしている魔界の一帯では敵無しの強さを誇っていた。
一角オークはS+、イビルウルフとはベルフェゴールに仕える前は犬猿の仲で、しかしひとりでイビルウルフ一派と互角以上に渡り合う程の戦闘力だった。
ちなみに大命四魔は魔界ランクSS+になる。(ランクSで人間界の町一つくらいなら簡単に攻め落とせるくらいの戦闘力)
「......すごい数だな。 殺しても殺してもきりがない」
ステラは、レナは、エルナは......皆無事なのか?
いや、とにかく一刻も早くこの内乱を止めないと!それからだ。
また次々と何処からか飛んで来る丸い蝙蝠。それを斬り殺しながら町中を進んでいく。
あれは廃医療館。あそこなら誰かいる......か?




