~71~ 王都攻略戦 ⑦
(状況把握しときてえな......見るに魔族の内乱ってのはわかるが、どうして反乱がおきた?)
あれ?
ユリウスが屋上から下の階へと降りると、人の気配が無い事に気がついた。
いや、戦闘している奴はいるが......寝る前は、もっと沢山いたよな。皆避難したのか。
つーか城の中で戦闘って、敵に侵入されてるんか。まじか。
う、うーん
......いやあ、めんどくさいなぁ(^o^;)
戦いたくねえ。正直これ負けるでしょ、この攻められ具合は。
無駄な戦いしたくねえんだよね。
あーあ、タイミング悪すぎなんだよなあ。いや、このタイミング狙って呼んだんだろーけどさ!
あのやろう、シルフィのダチだからってしょっちゅうこきつかいやがって。
俺はシルフィの姉だぞ?なんで姉である俺が......。
つか、その肝心の王様はどこ行ったんだ?
ユリウスは、めんどくさいめんどくさいと言いつつ、式神を手に取り、魔力を込める。すると小さな人形の紙は赤く輝いたあと、白い犬になった。
「おはよー」
と、ユリウスが言うと、その白い犬も前足で目を擦りながら返事を返した。
「おはよー。 ......で、なに、この状況? また面倒事? 揉め事?」
察しが良いわんこは嫌いだよ!なんつって。
まあ、呼んだ時はいつもだいたい面倒事だから仕形ねえか。
ちなみにこいつは白い犬じゃなく、白い狼。名前はウルファ。
「俺も状況がわからねえんだよ。 屋上で昼寝して起きたら魔族が内乱おこしてて、事情を聞くために王様捜してるんだよ。 おけ?」
「あー、だから呼ばれたの、わしなのかい。 わーった。 捜す捜す。 おけ!」
ウルファはうんうんと頭を上下させる。そして颯爽と廊下を駆けていった。
これで式神はあと四つ。屋上から町を見渡した感じ、戦い抜くには足りなそうだよな。
まあ、ウルファは私が造った中でも、戦い以外にも適応性の高い式神だから......まあ、あいつだけでも割りとなんとかなんだろ。
これより酷い戦況の争いだって生き抜けたんだ。大丈夫さ。
そーいや、俺が渡した式神どうしたのかな......野営地のあの子。
◆◇◆◇◆◇
目が醒めると魔族の男達が複数人いた。ここは......辺りを見渡すレナ。暗くて良くわからないけど、廃医療館......の受付?
私、どうしてこんな所に......痛ッ!
頭に痛みが。痛みのある後頭部に触ると、包帯が巻かれているのがわかった。
そして思い出す。リザードマンと会話をしている時、殴られ気絶させられた事を。
レナはハッとした。あの子は!?
「......リンド! どこ!?」
響いた声。それに応じたように受付の向こうにある扉が開いた。
「お、起きたか......お前、もう平気なのか?」
髪の毛の逆立っている男がレナに聞いた。
次にロン毛の弓を持つ男が喋った。
「いやー、お前、もう少しであいつらにヤられるとこだったぞ? 俺らがたまたまいて良かったな?」
その後に、おかっぱの女が溜め息をつきながら辟易としながら言葉を吐く。
「ホントに最悪な奴ら。 女をみるやそういう目でしか見れないのね......」
スキンヘッドの大きな男が頭をかきながら口を開く。
「まあまあ、落ち着けよ。 捕まってた奴隷も解放出来たんだから......と言うか、カイト、この子どうするんだ?」
ふむ、と顎に手をあて、そしてレナをじっと見つめる。
「......ちょっと聞いていいか? 君もそれどころじゃないって言うのはわかっているんだが、どうしても会わなきゃいけないんだ......すまない、教えてくれ」
「この王都に、ノアとステラってやついないかな?」
ノアとステラの知り合い......?
◆◇◆◇◆◇
王都の空を浮遊するように飛ぶ、蝙蝠のような体の大型の魔物は、カミナラの使役する魔神、コウキ。
頭が二つあり、手足が無数にある。そして、その無数の手足を変化させ狩に使う。
見た目は人の頭程ある球体で、小さな蝙蝠の羽がついている。そして特徴的なのがその人間のような歯のある大きな口。
コウキは、この無数の手足から産み出した分身に、人を喰わせ魔力を得る。
得た魔力はコウキの攻撃に使われる。右の頭は口から凍てつく吹雪を放ち、左の頭は炎を放つ。
――う、うわああああ!!!なんだ、この黒い化物は!!!
ぎゃあああああ!!
食べないで、ぐぶっ......あっが......。
住民達に抗う術もなく、コウキの餌食となってゆく。
そして、カミナラは神徒教会本部へとたどり着く。
大きな教会の扉をゆっくりと開く。無数のステンドグラスで出来た天井と、彩りの美しい花が一面に広がる。そして、巡礼の人間が座るための椅子が幾つもあった。
魔石と蝋燭により、明るい教会内。
その向こうにまた扉がある。気配がある......大聖女はあの向こうに......おそらく。
「......誰もいねえのは......流石におかしい。 護衛もつけてねえのか?」
ギィ......と言う音でとびきりが開き、そこには天から落ちる光を浴びる、大聖女ティアラがいた。
カミナラの目的の一つにこの聖女の殺害があった。
「......あら、あなたは。 遅かったのね、待ちくたびれましたよ?」
白の着物に分厚い教本を腰に携える彼女は、膝をつき白の長い髪を地に落として祈りを捧げていた。
「あ? 護衛が......いる? やつら......気配がねえ」
ティアラの後方に四人。同じく白の着物を身に纏っている人間がいた。
まるで生物ではなく、それこそ置物のように気配が全く無かった。
「......そいつら、生きてんのか? 気配しねえけど」
ティアラは答えた。
「ふふ......どうでしょう。 それよりお話、しません?」
「カミナラ様と言いましたよね......貴方は何故この場所に来られたのですか? 何かをお探しですか?」
いや、言ってねえ。名前、言ってねえぞ。
何故わかった?......つうか、こいつホントに聖女か?魔族よりやべえ雰囲気出てるんだが。
考え込むカミナラをクスクスと笑うティアラ。
「......ねえ、不思議? 凄く可愛らしいわね、貴方」
――貴方は何故ここに居るのかしら――
!? なんだ!?
――酷く怯えてる......可哀想に。私が貴方に道を示して差しあげましょうか?――
こいつ!頭に直接......なんだこれは!?どうなってやがる!?
言った覚えのない名前を言い当てられた事。そして、言葉を使わずに直接頭の中に語りかけてくると言う、得体の知れない能力を目の当たりにし、カミナラは混乱しかけていた。
もしも、思考を自在に読んだり語りかけたりが出来る能力であれば、殺すのは容易では無い事を瞬時に理解したから。
――(どうする......)――
――ふふっ、さあ、どうしましょう?――




