~70~ 王都攻略戦 ⑥
ヒュオンッ――パツッン!!
その鋭い蹴りは、魔族を数百は斬ったかと思われる今でも、勢いが衰えない。
「あーあーあー。 だらしねえな! それでも魔族かよ? 張り合いねえなあ!」
「マニアラァーーーー!!!!!」「うあああーーー!!!!」「ここで死ぬわけには......家族が、待っているんだ!」「やられるかよ!」
叫び飛び込む魔族達、しかしその声と想いも届く事は無く、脚の剣の露と消える命ばかり。
果ての無いような地獄の時を紡ぐ。
◇◆◇◆◇◆
~王城内~
ウリアラは、転移魔紋により王城へと魔界から武装した精鋭の魔族を十五人転移させた。
その十五人を引き連れ、城の内部へと進む。目指すのは固有結界の護りし地下。
そこにはこの国の力の元、魔力結界の魔石がある。
ウリアラの目標はその魔石の破壊、そしてそこを守る結界師と王徒三仙騎士の殺害。
彼らは生まれながらにして、守護神としての座を与えられ、大きすぎる力のせいで、そこから出られずにもう百年が経とうとしている。
が、彼らはそれでいいと思っているし、引きこもれるのは幸せとさえ思っている。
彼らは、神徒教会の産み出した忌み子である。数多の命を注がれ、常人の比にならない寿命と神力を得た子供達。
そして、彼らは王の血を持つ者には素直に従う。故に、その場所へと隔離され保護されていた。
ウリアラは城内を歩く内に、気がついた。先程、王を拐った時には人が沢山いたし、多くの人の気配に満ちていた。
だが、今は誰の気配もしない。これは......王が拐われる前に、皆、避難か何かしたのか?
地下を目指し歩く一行は、その道中に誰も居ないことに不審がる。
おかしい......マニアラの結界があるから、外には逃げられないはず。
と、その時。
「はい、ストップー! お前らどこ行くの?」
中央階段を下る途中、黒いコートを纏う隻腕の男が現れた。
「動くなよ。 お前、大命四魔のウリアラだな......王をどこへやった?」
隣には同じく黒コートの隻眼の女。あれは王徒十二騎士の制服。
十二騎士がいるのは予想......というか、まあ当たり前だからいいんだが、なぜ他に人間が城の中にいないんだ?
こいつらに聞いてみるか......いや、聞いたところで無駄だな。と言うか、そんな事はそもそも気にすることでもないか。
「はっ......王はもういねえよ。 残念だったなあ、可哀想に。 もう終わりだよこの国もお前らは人もな」
隻腕の十二騎士、ガルデアは頭をわしゃわしゃとかいた。
「あーまあ、な。 これだけの魔族が攻め込んでくるとは正直思って無かったしな......だがよ、はいそーですかなんて、言えないからよ。 守れるモノは、必ず守るぜ」
「おい、ガルデア! まあなとはなんだ? お前のようなやつが十二騎士をしているから、こんなに簡単に攻めいられてしまうのでは無いのか!?」
「ミミ......あの、俺が今ちょっと良いこと言ったばかりなのに......」
この反応......俺達が魔族が攻めいる事を知っていた......?
これは、情報が流れているのか?
まあ、良い。俺たちもここまで来たら、もう止まれない......予定外が起こったところで、俺らにはベルフェゴールがいる。あいつが本気を出せば、後はどうとでもなる。
「そーかよ。 まあ、こっちも仕事なんでなあ......そこ、通してもらうぜえ? お前ら、行くぞ」
「いや、行かせねえってーのっ!」
ガルデアが武器である斧を振り斬撃を飛ばした。しかしその攻撃は突然目の前に現れた黒フードにかき消された。
「あとは頼むぜえ、シンララ」
「ういっす! 予定通りに! ウリアラも気をつけて!」
ガルデアは戦慄した。こいつ......恐ろしく強い!!
「ねえねえ、あんたら、王徒十二騎士ってやつなんすよね? とーっても強いんすよね?」
「......さあな、確かめてみると良い」
そう言ったミミの表情が強張っている。ああ、わかってる。こいつはヤバいの引いたな。
「おっけーっす! ではでは......」
ゆっくりと歩いてくるシンララ。その動きは淀みなく自然。
隙だらけ......!どうする?
ガルデアが考えている途中、ミミは既に行動に移っていた。弓により放たれた矢が、シンララへと流れる。
すると頭に直撃する直前、パシッと矢を手で掴む。
「遅いな......けど、狙いは百点っすね」
その手に握られた矢がボロボロと崩れる。
「なん......だと?」
ミミが驚いているのは、矢をキャッチされた事ではない。
その矢は神力で出来ている。そして魔力を無効化する力を秘めている。
その矢を、魔族であり魔力による能力で破壊している事に驚いた。
ミミの矢はその性質上、魔物には握る事すら出来ないはずだぞ......!?
どう言うことだ!?
「あんたは、なにもしないんすか? 斧のおにーさん」
魔族なら、人間と違い魔力しか扱えないはずだ......魔力の能力で矢を壊した。その力を理解しなければおそらくこいつには勝てない。
あの速度のミミの矢を簡単に掴み取れる反応速度だ......まともにやりあっても勝ち目はゼロ。
とにかく、いくつか攻撃を試し能力を解明する事が必須だ!
この時、シンララは少しがっかりとしていた。強いと言われている王徒十二騎士。それが思っているものとは違っていた事に。
シンララは魔界においての戦闘力の序列で言うと、限りなく上位に位置する。
戦闘狂の彼は、大命四魔に入る前は、魔王の城に戦闘員として仕えていた。
故に、魔界の強者や魔王を倒さんとする勇者達と戦った事のある彼は、この二人の力には満足が出来なさそうだと早々に見切りをつけようとしていた。
あーあ、これは退屈な戦いになりそうっすね。さっさと殺して他の十二騎士でも見つけようかな。
上......屋上になんか強そうなのいるみたいだし......よし、決めたっす。この二人はすぐ殺す。
シンララの能力は【分解】それが何で出来ているか、対象について詳しく理解する事が出来れば、それを右手で分解する事が出来る。
そして左目、魔眼【戦真眼】見たものが何で構成されているかが瞬時に理解できる。しかし知識として知っている物でなければ理解出来ない。
◇◆◇◆◇◆
ー王城屋上庭園ー
王都の喧騒に、目を覚ます女が一人。
「......なんか、昼寝してたらやベー事になってんだけど?」
数時間前、王に呼ばれこの城に来たは良いが、庭園で暇潰しに寝てしまい、今さっき起きた彼女。
中身全裸の寝袋のままぴょんぴょんと移動し城の外を眺めていた。
「だから呼んだのか......まあ、仕方ねえ。 式神あといくつあったっけな」
とりま鎧きねえとな。と言い、純白の鎧の元へぴょんぴょんと戻る。
金色の薔薇の模様が入っている白の鎧。
白亜の騎士、ユリウス・クイーン
シルフィ・クイーンの姉である。
ぶぁーっくしょんッ!!あー、さみいな。......裸で寝てるからか。




