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~67~ 王都攻略戦 ③

 



 幾度も放たれた落雷は、当たらずに地面へと着弾した。敵を追って攻撃をし続けるステラの過ぎ去った後には、その破壊痕が続く。


 走りながら穿つ雷は命中率も低く、もしかするとその標的以外へと当たる可能性もあった。

 けれど、今や巻き添えがどうのなど言ってはいられない状況で、この魔族を止めなければ被害はとてつもない人数になる事は明らかだった。


 今、追っている敵は、これまで戦ってきたどの相手よりも強く、そして悪意に充ちている。



 ――数十分前、町の魔族が反乱を始め、間も無くしてそれは現れた。


 はじめに、突如として巨大な魔獣が現れ、暴れ始めた。鳴る轟音と町全体に響くような地揺れ。まるで地震のような衝撃に近くの建物の窓は割れ、倒壊するものもあった。


 現れた魔獣は、巨大な体を持つ蛇。しかし、ただの蛇ではなく頭が複数あった。


 ステラは、以前その魔獣を見たことがある。

 魔界に住むサーペントヴァイス。元々、気性の粗い性質で、好戦的でしかし魔界の奥深くの深淵の森に生息しているはずのそれが、何故かこの場に出現した。


 しかも、彼女の知るそれとは違い、頭の数がかなり多い。おそらく人為的なモノだろう。

 体中にそれらしき跡が......幾度も改造されたようなツギハギの跡がみられる。

 そして体を覆い繋がれている魔力線が伸びていた......改造されたあげく誰かから操られている。戦闘兵器として。


 止めなければ。そう思い魔力線をたどった先に奴がいた。彼は相対すると、驚いた表情を浮かべる。



「......おまえは、まさか、いや。 何でこんな所に......魔王の娘が? 護衛は......いないのか?」


「......あなたは......私を知っているの?」


「知ってるさ。 おれは......おれ達は、おまえを殺すために魔王城まで呼ばれたこともあんだからよ」


「......!?」


「まあ、そんな昔の話はいいよ。 おまえ、なんで俺のとこきたんだ?」


 私を殺すために......なんで?なんのために?

 い、いや、今はそんな事考えている場合じゃないのだわ。


「......あなたを止めに来た」


 とは言え、止めに来たと言った所で止まる筈もない。戦闘態勢、紅い電流がステラの身体中を走る。

 すると、彼は歪な笑みを浮かべ、「俺はラッキーだ」と言った。



「まあ、一応名乗りはあげるか......」


「我が名は、カミナラ。 大命四魔の一翼、大悪魔ベルフェゴールの使徒なり」


 そう言った途端、カミナラは一目散に逃げ出した。

 それを私は追いかけ、カミナラを止めるために雷撃を撃ちながら追跡中だった。



 ちなみに、信じられない事に、カミナラは三体の魔獣を同時に操っていた。魔獣を一体使役するだけで、莫大な量の魔力を消費するのに、それを三体も。


 私に、カミナラを倒せるのか......これ程の魔力量の差を、どう埋めたらいい?


 そんな事を考えながら、カミナラの後を追っていると、急に彼が足を止めた。

 そして話しかけてくる。


「お前さあ、そんなにふっつーに追ってきて良かったんか?」


 ハッと気がつく。後ろを振り返ると、サーペントヴァイスが口からとてつもない量の毒液を吐き出し、建物を焼いていた。


「ひとたくさん死んでるぜ? あれとめなくていいんか? よくねえよな? あれ止めるために俺のところ来たんだもんな?」



 ステラはこの状況、予想もしない事の連続に焦り混乱し、正常な判断が出来なかった。

 仲間だと思っていたベルフェゴールの裏切り、王都にあらわれた魔界の魔獣。住民を助けにこない国の騎士達。



 確かに、三体の魔獣を操っている本体を倒せば被害は少なく済む。

 ただしそれは倒せればの話で、大抵の魔獣使いはその使役する魔獣より強い。故に本当に被害を少なくとどめたければ、その魔獣を撃破していく事が最善であった。


 そして......




「さて、と......殺るかな」


 そう言った途端、カミナラの雰囲気がさっきまでのひょうひょうとした感じから、がらりと変わり、見るからに禍々しい魔力を体から立ち上らせ始める。



 体がメキメキと変化し、その体躯は二倍もの大きさになる。



「魔族の......王族の血は、特別なんだよなぁ! 頂くぜ! 全部......あはははは!! あいつらには秘密だ!! 一人占めだ!!」


 身に纏っていた、黒いフードの衣服が破れ、その体があらわになった。


 カミナラは、体長三メートルをこえる大きな熊になっていた。鋭く長い牙と爪があり、爪の方には黒いもやが漂っていた。

 そして、ふさふさとした体毛は全身を覆い、所々に赤く丸い模様があった。



 その姿を見、対峙したステラの戦闘の意思は消え失せた。



 ステラは思った。これは、私には倒せない。


 気がつくと、左手が震えていて、そしてそれは、左手だけでは無いこと......全身が震えている事に気がついた。

 呼吸も上手く出来ず、汗が止まらない。


「はやく俺を倒さないと、人間共がみんなしんじまうぜー? ほら、こいよ? ひひひひああああはははッ!!」


 カミナラの足元から影が広がり、ステラに迫る。ステラは、恐怖で強張った体を無理やり動かし、後方へ飛び退いた。


「あれ? 逃げるのかあ? 俺を倒すんじゃねえの?」


「――まあ、逃がさないけどな」


 ドゥッ!!!と地面を蹴り飛ばしステラに突進を仕掛ける。地面の石畳は砕け、吹き飛び、その脚力の力強さを物語っていた。


 瞬く間に距離を詰めるカミナラ。腕を振り上げ、ステラの頭を吹き飛ばした。ボッ!と言う音と共に消える。






「......あ? なんだこりゃ」




 頭を跳ねられたステラは、霧となって霧散した。





「......ご、ごめんなさい。 危ない所だったのだわ」


「ステラさあ、あれはヤバいでしょ。 はじめてみたな......あんな化物」


「どうしよう、ナツメ。 私......」


「いいよ。 あいつ殺そっか。 でも多分二人がかりでも難しいだろうね......レナを探そう。 リンドなら色々やれるから勝ち筋をつけられそうだ」


 まあ、私的には不本意だけど、ステラが殺されるよりはマシだ。





 カミナラは舌打ちをした。


 あいつ逃げやがったか。あれは......魔王の娘の能力じゃねえな。あの偽物の霧からは魔力を感じなかった。


 仲間がいるな。......はっ。





 やべ





 楽しくなってきたな?あいつは絶対に俺が見つけ出して喰う。



 さて、ほいじゃあその前に......与えられた仕事でも終わらせるかね。あいつらはその後の楽しみにおいとくか。



 祭りはまだ始まったばかりだからな。







 そして、神徒教会本部へとカミナラは向かった。








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