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~66~ 王都攻略戦 ②

 



(王はあえてノアとキアリクを戻さなかったのか? ......いたとしてまだ成長途上のノアも、戦闘向きではないキアリクも大した問題にはならないが......)



 奴等の身を案じて、か。



 しかし、王はどこへ消えた?王都にもいないようだが。

 民をおいて逃げるような奴でもない......どこへ行ったのだ?




 黒き鎧で全身を包んだ男が、暗き無人の王の間にたたずむ。





 ◆◇◆◇◆◇





 ひでえな......住民保護班の奴ら大丈夫か......。


 町の状況を見た、王城潜入班のヘンリー。予想の遥か上、まさかの本格的な魔族の進行に戸惑いを隠せない。

 このまま王を討ちに行ってる場合か......?これ、俺達もここで戦わねえと......被害を食い止めねえと、ヤバいんじゃねえのか?


 国の行く末、人民の命......天秤にかけるまでもなく、大事なのは人の命だ。

 国は人によって成り立つもの。だが......。


 この期を逃せば、王を討ち国の改革などもう出来ない。



 どうする。その時、同じ班のエルナと目が合う。

 そして彼女が冷たく言った。


「......行こう。 王を討ちに。 僕らはそのために来た」



 エルナ......お前は。




 ◆◇◆◇◆◇




 孤児院を、子供たちを守らなければと駆け出したレナは、すぐに武装した魔族と出くわした。


 武器は斧と丸い盾。体格の良いリザードマン。


「まて......! 私は敵じゃない!」


 臨戦態勢にあるリンドを制止した。そして警戒をしつつ会話をする。

 魔族の皆が敵ではない、多分。だから判断しなくてはいけない......無駄に命を奪うことの無いように!




 レナはこの数年で強くなった。リンドに指示をだし戦う、獣使いに近い戦いかたで、それはナツメやエルナに認められる程のモノに。

 しかし、レナには決定的に欠けているものがあった。それは、実戦経験。

 レナにとってこの内乱が、はじめての命のやりとりの場であった。



「あなたはここで何をしているの?」


 私、声、震えている......だ、だめだ。頭が混乱してきた。


「俺か? そうだな、何から話したものか......」


 リザードマンが、下をうつむき悲しそうな顔をした。

 この人、もしかして誰かのために戦っているのかも......敵ではないって言ってたし、人間を守ってる?


 だったら、仲間になれる!


 ガッ!


 レナの視界が暗くなる。後頭部に突然の衝撃。意識の落ちる瞬間、微かに見えたリザードマンの嬉しそうな笑顔でわかった。

 多分、そういう事なのだろう......。


 わた、し......。



 レナの後ろには黒い袋を持ったリザードマンがいた。


「よし、気絶させた! 可愛い人間の女ゲットー! こいつは遊べるぜ!」


「おい、俺が目をつけたやつだぞ。 俺が先だ」


「わーってるって! しっかし、めいえんぎとはこの事だよなあ? 完全に騙されていたぜ」



 レナに話かけていた斧を持ったリザードマンは囮で、後ろから仲間が忍び寄って気絶させる。この内乱が起こる前から何度かやっていた、手慣れた手法だ。

 彼らは王都の闇の部分。人をさらい売りさばく......奴隷商人の一味だった。


 彼らはレナに前から目をつけていた。


「側にいたペットも上手く処理できたし、これが綺麗な仕事ってやつだな」


「奴隷商人で綺麗な仕事か、ウケるなそれ!」




 ◆◇◆◇◆◇






 王城前、植物園の中。


 王徒十二騎士、フローラが誰かを探していた。



「誰さがしてるんだ?」


 フローラが声のした方を見ると、そこには同じく王徒十二騎士のバーナルがいた。


「うーん......やっぱり気がついていたの。 貴方はとはできるだけやりあいたくは無かったのだけれど......」


「ああ、もう知ってる。 だから教えてくれねえか? お前の標的」


「......ふふっ。 教えるわけないでしょ」


「フローラ、お前は......いつから魔族と......」


 フローラが扇子を出した。

 そして撫でるようにそれを触る。


「もうお喋りは終わり。 時間が無いのはお互いそうでしょう?」



 殺すしかねえ、か。やるか......。


 覚悟を決めたバーナルは武器を抜く。細身の直剣。真っ黒な刀身、(のこぎり)状のそれは凶刃と言うに他なく、禍々しい形状をしていた。


 宝王器《死剣千》


 バーナルは、その剣をヒュンヒュンと八の字に振り、フッ......!とフローラの目の前から消えた。消えたように見える程の神速。


 移動先は死角、後ろ。しかしフローラも歴戦の王に支えし十二騎士。その首筋を狙った一撃は届く事はなく、フローラの持つその扇により弾かれた。


 宝王器《王扇刀》


 美しく、扇に見えるそれは、フローラが王より賜りし武器。扇の先、曲部が刃になっている。そして



 ブァアアアッ!!ゴウッ!!!



 フローラがそれをバーナルに向け扇ぐと、とてつもない突風が放たれた。


 その風をもろに受けたバーナルは吹き飛ばされ、そこらにある花を巻き込み城の壁へと突っ込む。

 大きな轟音と、 その激突部分の割れ方で、破壊の凄まじさが伺い知れた。


 城のフローラの突風を受けたと思われる、城の窓ガラスが全て割れ、キラキラと破片が落ちている。



 はははっ......!と、土煙の中からバーナルの笑い声がした。



「すっげえな。 それがお前の宝王器の能力か......シンプルだが、それだけに強力! 反応は出来たが、対処出来なかったぜ」


「そうでしょう? それにこんなことも......」


 フローラが真横に一閃。扇を振り抜いた。



 シュピ――ッ



 飛ばされた風の刃で、バーナルの後ろにあった木々が全て真っ二つに斬られ、ドドドドと言う音と共に倒れて行く。

 紙一重で真下へと身をかわした。


「......ぶねっ! すげーな、ははっ」


「すごいわね。 振りはしたけど、今のに反応できるなんて......」


「はあ? 舐めてんじゃねえよ。 そりゃ自惚れってやつだ......そんなんだと足元救われっぞ」


「ご忠告ありがとう」


「へへ、どういたしましてッ!」


 その時、バーナルの剣がキィイイイイィンと高音を放った。すると、フローラの扇がその手元から離れ、剣へと引き寄せられた。


「こいつは預かるぞぉ」


 ――(!! 私の武器が! あの剣に引き寄せられた!?)――



 バーナルは思考する。武器は取り上げた......が、これで倒せるなら、十二騎士には居ない。その程度なら。


 まだ何か能力を持っていると思って良いだろう。



 へへっ......ぞわぞわするね。この感じ。

 昔、魔界に行った時のような高揚感。


 同じ十二騎士、この国最強の!殺るか殺られるか!


 ひりつくようなこの命のやりとり......俺は、これをずっと待っていた!





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