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~64~ キタミチヲフリカエル

 



 自分は、この王国騎士軍へと配属になり、第四部隊の兵騎士となった、カイン・ウィリアム二等兵です。


 幼い頃、この国で活躍する騎士団に憧れ、目指し、ついに念願であったこの騎士軍へと入る事ができました。


 本当はここだけの話、王徒十二騎士へ入りたかったのですが、普通の人間が入れるような組織ではないとその活躍を見るに思ったわけで。


 え、あ、すみません。そんな話はどうでも良いですね。申し訳ありません。


 とにもかくにも、これから自分達は大きな任務へとあたる事になるようです。

 ちなみに、自分達はその肝心の任務内容を知らされてはおりません。

 上の方々、上層部はその内容を知っているはずなのですが。


 なにやら不穏な......雰囲気が。え、だってですよ?大きな任務で軍が動くって事は、命がけの任務だと相場は決まっているわけです。


 おそらく、多分......。それなのに任務内容が隠されてるって、それって知れば皆に迷いが生まれる、または統率困難な事態に陥る、そんな所なのではないでしょうか?最悪逃げる者が出てきたり?

 ......不安感からか、ネガティブになってもうそうとしか思えなくなっています。


 今から三時間後に作戦が開始されるらしいのですが、作戦て内容わからないのに作戦......。

 自分の回りでも同じような話を仲間としている者が多く、皆そな不安から落ち着きが無いです。無理もない。


 でも、それでも、自分は......この与えられた槍と鎧で、この王都の住民を守る。それだけです。


 だって、そのためにこの王国騎士軍へと入ったのですから。そう、泥水をすする思いと命を削るような思いをして、訓練をこなし、ここまでやっとの思いで這い上がってきた。


 中には金や名誉、地位の為に入った者もいますが(割りと多い)、本来は弱き者を守り平和を築く為のモノなのです。



 はあー......でも、怖い。怖いよ、正直。怖いけど......頑張らなきゃな。




 雨上がりの空には星が瞬いていた。散りばめられた、命の数。






 ◇◆◇◆◇◆




「もうすぐで、ここが戦場になるのかぁ。 現実味ないねえ」


 ナツメが建物の屋上、手すりに腰掛け足をブラブラしている。


「間違いないのだわ。 町中の魔族の魔力が大きく揺らめいている......」


「それって何か関係あるの? 揺らめいてたら何かあるの?」


「魔力を上手に扱う事の出来ない魔族は、どうしても戦いの前には落ち着きがなくなって、無意識に魔力を放出したりする。 それは、ストレスが高いほど大きくなる......」


 なるほど、死ぬか生きるか、生死のかかった戦いならストレスは大きくなる。

 ステラは魔王の娘って前に言っていたし、戦場に出る魔族を多く見ている(と思う)だから分かるのか。

 それがその兆候にある魔力放出量だってことが。


「わくわくしてくるなあ......魔族を沢山殺せるのか」


「王都にいる魔族で強いのは、やっぱり王国騎士軍の魔族部隊かな。 とても難しいけれど、彼らの部隊さえ抑え込めれば被害を限りなく少なくできる......王都十二騎士もいるから、多分大丈夫なのだわ」


 にやりとナツメが笑いこちらを見た。


「お前のだーいすきなノアも居るしな?」


「! そんなの! 好きか嫌いかなんて今関係ない!」


 あははは、と笑うナツメ。ぐぬぬぬ、と睨み付けるステラ。


 けれどそうなのだわ。ノアがいるしこの戦いはきっと何とかなる。

 ......いいえ、違う。何とかしてみせる。そうだ、ノアの助けになると、あの日私は......。



 ステラの考えは概ね正しい。しかし致命的な誤算が二つあった。


 一つは、敵となる魔族が、この王都内の者だけでは無いこと。

 攻めいる敵が、まさか魔王の配下、七つの大罪の一軍だとは思ってもみなく、現状の戦力のみでの計算だったこと。


 もう一つは、ノアや一部の十二騎士が居ないこと、そして、その騎士長がこの内乱の首謀者だと言うこと。




「きっと、何とか......だってそのために私は強くなったのだから」



 ナツメは思う。

 何か予感がする。この戦いはかなり大きなモノになる......良い獲物、見つかるかな。

 ......まあ、ステラとレナの身の安全が最優先だけどね。せっかくここまで育てたんだし。

 誰かにとられるのは絶対に嫌だからね。





 ◆◇◆◇◆◇







「王よ。 開戦だ」


「ああ、元気でな......」


「元気で? おかしなことを言う。 俺達はこれから殺しあうのだぞ......」


「いいや。 お前がいなければこの国は数年前、あの日に滅んでいた......敵である前に、お前は私の大切な友人だ」



 ......。



 フン、と鼻を鳴らす。


「全ては俺の計画だ。 お前の、この国の思惑は関係無い......人を全て殺し、我が力を示すのみだ」



 全て殺す......か。ああ、わかっている。お前は停まらない。ならば......。



「良いだろう、ならば我が剣にてお前を葬ろう」


「ふ......そうだ、その眼だ。 俺は貴様の敵だ」



 ではな。と、振り返り、いつの間にか来ていた大命四魔の魔紋へと溶け込み消える。

 大命四魔は、ぺこりと御辞儀をして、魔紋へと消える。






『さて、魔族の皆......』



 王都中に設置されている魔石による拡声器。そこから響くは、王徒十二騎士の騎士長、ベルフェゴールの声。



『それは、数年前の話......我々の旅の始まり。 魔族は枯渇し、死が降り積もる大地、魔界の檻から這い出てきた』




『そして長い道のりの果てに、この場へと辿り着く事ができたのだ』



『皆、この数年と言う月日において、豊かな人間界がどれ程よいモノか理解できたと思う。 そして、この場に居る我々はこの資源溢れる豊かな地で幸せを掴み、平穏な日々を過ごす事が出来ているのだ。 ......だがしかし、忘れてはいないだろうか?』




『――それはまだ一部の仲間達に過ぎないと言う事を』




『お前達は魔族。 魔界に残されている同胞を忘れ、無かったことにし、幸せを掴むことは出来ない』



『何故なら、魔族の血は人のそれより濃く、繋がりは人のそれより強い』



『我が名は、七つの大罪。 怠惰、ベルフェゴール』



『この王都の魔族、全てに命じる』





 居場所 命 心 幸せ 豊かな大地の恵み......





 失ったそれらを、人から





『全てを奪い返せ』




 そう、人間どもに魔界と銘打たれた絶望と死の蔓延る場所へと追いやられた――我々魔族の想いを持って。




 この地を、未だ魔界に暮らす同胞の為、彼らが住まう場所にする為。



 奪い返すのだ。







 王都の町中が魔族と人の悲鳴に包まれ、彩られる。





 王都攻略戦、開始。









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