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~61~ その矛盾

 



 ここが......王都。やっと......ついた。



 私は、勇者パーティーを抜け、逃げるようにここまできた。


 私の故郷である里が数年前に襲撃され、今はもう帰る場所もない。


 だから、ある噂があったこのグラインへと来たのだ。


 高くそびえる塀。出入口には、門番が二人いる......通してくれるのだろうか。



「......あの、私、町へ入りたいんですけど」


「ん、町へか? 今は入ることは出来ないぞ」


「え、そんな......」


「今は王の意向でな、魔物を町へと侵入させないよう警戒措置をとっているのだ」


「私、帰る場所が無いんです。 お願いします、入れてください」


 少しの沈黙。門番は私をじろじろと見ている。


「うむ。 そうか、であれば()()()()()()()()()()()


「......どうすれば良いんですか?」


 うん、と頷くとすぐそばの草むらを指差した。もう一人の門番が小声でずるいなと言った。


「あそこの草むらで体を調べさせてくれ。 それで、魔物でないと確認できれば通してやろう。 ......どうする?」


 にやにやと下卑た笑みを浮かべる男。


 どうするって、この人達......そう言うことか。本当に......最低。


「やはり怪しいな。 他の門番達に連絡をいれて通すなと伝えておこう」


 な......こいつ、他の門に行かせないように......。

 最低、最悪の人間性だ。


「さあ、どうするんだ? 早くしろ!」


 ちらちらとこちらを見る門番。そんなに......くっ。


 その時、内側から門が開いた。



「ん? 何を揉めているんだ?」


 現れたのは白髪の少女。黒いコートを来た彼女は、門番に話しかける。


「あ、いえ......キアリク様。 なんでもありません」


 こんな子供なのに、敬語!?っていうか、門番の態度が......お偉いさんの子供か何かだろうか?


 そして、それに続いて出てきた男が言う。


「......お前達の話は聞こえていたよ。 王にその働きを伝えておこう。 なに、礼はいらない」


 ぐっ......と門番の顔が歪む。そして、その白髪の少女と同じ黒いコートをきた男が彼は私に話しかける。


「早く入った方が良い。 入りたかったんだろ?」


「あ、ありがとう......」


 こうして私は王都へと入ることができた。けれど、あの男の顔......そして門番は去り際に「死神」と呼んでいた。


 じゃあ、やっぱりあの人が......雰囲気が変わっていて驚いてしまったが......。


 私と同じ隠れ里の出身、ノア・チェシャ・ハートキャット。



 ノアが王都の騎士になったと聞いた時、助けを求める事をすぐに思いついた。

 里が襲撃され人がみな殺され、私達、勇者六人がある男達により拐われた。

 その男達の元で、今日までずっと血みどろになりながら戦闘技術を叩き込まれ、生きてきた。


 人も魔物も関係ない。彼らが殺せと命じたものを殺す。ただそれだけ、それが出来ないものは皆殺された。



 私達は戦闘兵器として、ここまでの人生を育てられたのだ。



 しかし、ある村を襲撃した戦いの時......私は、小さな魔族の子供をこの手にかけた。 その時、心に深い影が落ちたのを感じた。

 その子は「お母さん」と一言、死の間際に言った。


 子供の声と生気の抜け落ちていく瞳。


 それが......その日から、時折現れては私の首を締め、呼吸が出来なくなる。



 このまま、この人達の命令を受け、命を奪い続ければ、私はきっと......そう思っていた矢先の事だった。彼の......ノアの話を耳にしたのは。


「......本当に王徒十二騎士になっていたんだ」


 王徒十二騎士は、この国最強の騎士達。


 私達を拐ったあの男も言っていた。十二騎士は相手にするなと。

 それほどの強さを、彼は......ノアは手にしていたのか。


 アランにいじめられ、いつも一人で泣いていた。あのノアが。



 さて、これから何処に行こう。とりあえず、働いてお金を稼がなければ。

 私を雇ってくれる所、あるかな......。


 おそらく、ノアにすぐに近づくのは難しい......どうにかして話ができるようにならないと。



 彼女は少し青みがかった黒髪をなびかせ、王都の町へと消える。





 ◇◆◇◆◇◆




 おーい、ヘンリーさーん。と、遠くから彼を呼ぶ声がし、ヘンリーは野菜の入った紙袋ごと振りかえる。


「ん? レナか......どした?」


「また、孤児院へ行くんですか?」


「まあ、孤児院の院長に頼まれた野菜だしな」


「あ、そうなんですね、なるほど」


「いや、こんなに沢山ひとりで食べないからね。 おじさん独り身だし」


「あ......そんなつもりじゃ、ごめんなさい!」


 あれ、なにこれナチュラルにダイレクトに、おじさんの心をえぐってくるよ?こんな可愛い顔して!


「いや、いいよ。 で、どうしたんだ? ノアは元気だぞ? その話じゃなく?」


「ノア、孤児院にいないじゃないですか、嘘つき」


 俺が初めてこのレナと言う子に会ったのは、仕事帰りに酒を買いにこの子が勤める店へ行った時。


 町を巡回していた俺を覚えていたのか、訪ねられた。

「生き別れた人、ノアという人を探していて、この町にいるはずなんです......見かけたら教えてくれませんか?」と。


 この広い王都だからな。はっきり言って、もし王都にその生き別れたそいつがいても、見つけることは困難だろう。可哀想だが、多分無理だ......と思っていた。


 けれど、違った。俺はノアと言うやつを知っていた。それも身近なところにいたのだ。


 ベルフェゴール隊長が拾ってきた少年。その時、俺は少年の名前を覚えていなくて、王都十二騎士に配属になった際にノアと言う事を知り、気がついた......ノアが、レナの探していた生き別れなのだと言う事に。


 しかし、王徒十二騎士はその危険性の高い任務が多く、命を落とすこともあるし、その親族や家族にも危害が及ぶ可能性も高かい。


 ......伝えたら、会いたくなるよな。


 レナは俺の死んだ娘に似ていた。だからかな、真実は言えないけれど、安心はさせてやりたかったんだ。


 その時、レナに言ったのは、部下に調べさせたら孤児院に引き取られているようで、無事で元気そうだと聞いている。だから安心しろ......場所はまだちょっと教えられない。そこの院長に打診中だから待って。だった。


 まあ、誤算だったのはレナの行動力で、王都中の孤児院を調べあげ訪ね回ってしまったことと、この広い王都で奇跡的にも十二騎士の制服着たノアを見つけてしまった事だよね。


 それが一年前で、嘘つきと言われてる理由だ。まあ、その理由を話したら理解してくれたし、近づこうともしなかったから、最初からそう言えば良かったのかもしれない。


 おじさんにもなると色々考えちまって、あげく下手な手を打っちまう事も多い。



 そうさ。だから、俺は......あの時、娘と妻を......。




「......ヘンリーさん? 大丈夫ですか?」


「ん、ああ、おう」


「孤児院いくなら、これ! お菓子も持っていってください。 仲良く食べてねって、言っておいてくださいね。 すぐケンカするから、あの子達」


 ふふっと笑顔を浮かべるレナ。ほんとに似てやがる。


「おう、サンキュー」


「いえいえ、ヘンリーさんの......騎士のお仕事で皆救われてるんです。 私も孤児院の皆も、この国の人々も......こちらこそありがとうです」


 ちげえよ。


 救われてるのは、多分俺だ。まるで、娘と話しているように思える。


 おじさん、揺らいじまうな。




 いや、違うそれこそ。俺はこういう、娘のような子がしっかりと生きていける世界を、命の危険のない平和な世界を作りたくてここまで来たんだろ?


 そうだ、迷ってる場合じゃない......俺はヘンリー・ストーン、王徒十二騎士。そして、




 レジスタンス幹部、参謀長ヘンリー・ストーンだ。




 娘の最期の言葉が頭に響く。

  「お父さん、頑張ってね......!」

  その顔が、声が記憶の底から甦る。




 ああ、わかってる。


 お父さん、頑張るからな。......必ず王を討ち果たし、平和を勝ち取るぞ。





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