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~48~ 港町ミーナルの攻防 ③

 


 バチィイッ――!!!


 ナツメが蒼の四騎士の一人を刺し殺し、妖刀を引き抜こうとしたその時、全身に電撃が走った。体が痺れ、硬直する。


「......ぐっ!? あ!?」


 そこに勝機をみるや、隊長騎士が槍を向け凄まじい速さで、突っ込んで行く。


「死ね、キラージャック」


 ドスッ!!!!


 その槍先は深々とナツメの胸を貫いた。しかし、理解する。()()()()()()()()()()()()

 体に空いた大穴から、ふわりと霧にかわり消える。


 ヒュパンッッ!!!!


 そして、霧に紛れ突如として現れたナツメは、隊長の左腕を切り裂いた。血が飛び散る。


「......!!」


 それを見たナツメは悪戯に笑う。


「へへ、ビックリした? 雷系の魔法をもってる奴は大体触れると、痺れさせる技を撃ってくるんだよね。 だから、かかった振りしたの......」


 ナツメは、()()()()()()()()()()()()()()()事によって騎士隊長を欺いていた。


 濃霧の中現れた、本物の蒼の騎士は血にまみれ地面へと転がっている。両腕がなく、ピクリとも動かない様から死んでいるのは明らかだった。

 彼はエルナが参戦する少し前には殺されていたのだった。


「......そして、キラージャック......お前の攻撃速度はその電撃のカウンターを上回る、か。 成る程」


 勿論、騎士隊長にも触れた相手を感電させるカウンター技がある。しかし、ナツメの剣速は、その発動が間に合わない程のものだった。

 故に騎士隊長は片腕を失ってしまった。


「へへ......私、速いでしょ」


 にこりと可愛らしく首を傾ける。


「と、なるとお前の能力は、自分の分身を作るだけでは無いと言うことか......」


「ふむ......お前があの王都で生き残れている理由がわかった。 お前は恐ろしく強い......それこそ王徒十二騎士クラスか」


 ......だが、私には勝てない。と、騎士隊長が冷たい声色で言った。


「一人欠けてしまったが、まあ良い......十分殺せる」


 一方、ステラとレナを襲うべく向かった蒼の騎士は、エルナに阻まれ交戦していた。

 蒼の四騎士の一人であるその騎士は、ナツメ程ではないがやはり強い。

 ナツメとの戦闘の後だったのもあり、エルナの体は限界を迎えようとしていた。


 エルナと斬り結んでいる、蒼の騎士は言う。


「お前、やるな。 獣人と言うことを差し引いても、かなりの物だな......ん? お呼びだな......うーむ」


 彼が騎士隊長に呼ばれ、もう少し遊びたかったとぼやきながら戻っていく。


 これは、チャンスだ。蒼の四騎士がナツメに集中している......しかも騎士は一人減り、よりナツメに集中せざる得ない。今のうちに逃げる......いや、今しかない!


 そう思った瞬間だった。ステラとレナに逃げるよう伝えようと言葉が口からでた直後、蒼の騎士隊長が辺り一帯を覆う電流の結界を張り巡らせた。


 騎士隊長は、ナツメへと槍の矛先を向け忠告をする。


「この結界は、部下の魔力を私へと集める事により発現できる技。 触れれば一瞬でチリと化す高威力の電撃が流れている」


「そして......」


 ボッッ!!!


 一瞬、蒼の騎士隊長が消えたように見え、ナツメの霧の分身が斬り裂かれた。

 とてつもなく早い動き......まさに落雷のような神速の攻撃だった。


「......外したか。 しかし、次は仕留めるぞ」


 蒼の騎士隊長の体には蒼い電流が流れている。

 彼のその能力は、部下の騎士、全ての魔力を自身へと集めることで真の力を発揮する。


 能力《四重奏蒼電》

 1、高威力の電撃の結界発現。(制限時間十分)

 2、高密度魔力と電撃を纏う事による、身体能力強化と破壊力増加。

 3、身体強化は結界の中でしか使えない。魔力の消費が激しく、部下は動けなくなる。使用後、使用者も魔力が一時的に空になる(デメリット)



 ナツメは考える。

 これ程の能力......目では追えるが、避けられるかは別問題。あれは、速すぎる。そしてあの威力はヤバい。

 しかし、逆に考えれば部下二人の魔力を供給しなければ発現出来ない程の魔力消費量。


 妖霧を使い、上手くかわし続ければ勝機はある。......多分。


 ナツメの能力《夢幻妖霧》

 1、妖霧の濃い霧を発生させ結界を作る。(妖力が無くなると消滅)

 2、気配や魔力、全てを完璧に移す霧の分身を作る。(霧なので触れたり攻撃されれば霧散する+結界内のみ使える能力)

 3、漂う妖霧で幻の場面を作り上げ見せる。(結界内のみ使える能力+妖力消費が激しい)



 しかし、度重なる妖力消費により、ナツメの妖力はあと僅かであった。



 ジッッ!!バチチチチ!!!!


 体に電流を纏いながら、騎士隊長がナツメへと槍による突きを放つ。

 槍先から蒼色の電撃が飛び、ナツメはそれを飛び退きかわした......ように思ったが、それを狙っていた。

 騎士隊長は、飛び退いた先にその電流で強化された異様なスピードで回り込む。


「......は!? 嘘!?」


 圧倒的な速度に、驚愕の眼差しのナツメ。


「ではな。 殺人鬼」


 騎士隊長はナツメへと槍を突いた。しかし、ナツメはそれを予測していた。

 あのスピードなら、確実に殺せるタイミングを作り出し、死角から攻めてくるだろうと。


 紙一重で、妖刀で突きの軌道をずらす。


 ギャギギギギギギィン!!


「!!!!」


 ナツメは脇腹を少し抉られたが、致命傷にはならない。


「ぶなぁ......っ! ちゃんと死角から来てくれて良かった!」


「貴様......なんという......!! 今のは仮に読んでいたとしても、普通は死んで......」


 そこまで言い、騎士隊長は気がつく。そうだ、私の相対している相手は王都を震撼させ、王徒十二騎士に追われながらも生き抜いてきた、殺人鬼......キラージャック。

 普通な訳が無いか。


「ククク......面白い。 貴様、面白いぞ!!」


「え、急にテンションあがった!?」


 騎士隊長......片腕が無いのと、四騎士の一人が死んでいるのがせめてもの救いだね。

 万全の状態だったら、今の攻撃で死んでた。


 ていうか、マジでそろそろ......妖力が。


「ふははは!! 行くぞ、殺人鬼!!」


 そして、ナツメの死へのカウントダウンが始まった。



 ◇◆◇◆◇◆



 オレンジ頭の騎士がレジスタンス拠点から出てくる。その手には二つ、見慣れた物が見慣れない姿でぶら下げられていた。


 それは、()()()()()()()()()()()だった。


 ミミと呼ばれていた女騎士が、ぐいっとノアの前髪を引っ張り上げる。


「見えるか? お前の仲間が。 質問に答えなければ、お前もこうなる......わかったなら、返事を......






 もう



 わけわからないや......なんでこんな事に







 ああ、僕か。





 全部僕のせいか。




 僕がこの騎士二人を倒せなかったから......。




 あの時も......そう、あの時だって。





 サリナさんを止められなかったのも。




 村を皆殺しにされたのも。




 あの二人が、首だけになったのも。



 何もかも全部――




『そうね。 あなたが弱いから』




『......あなたが守れなかったもの、思い出せた?』





 守れなかったもの......。



『あなたはもう思い出しているでしょう』






 この神器の......お母さんの事か。




 ――......ノア、今まで厳しくしてごめんなさい。 立派な......勇者になるのよ。――




 そうだ。




 僕が、弱いから......お母さんは神器になって、僕の中に......。




 思い出した。お母さんは、病気で死んだんじゃない......。




『そうね』




 命ごと......魂を神器にされて、僕の中へ入れられたんだ。





 そうだった......。





 でも、しょうがない......しょうがなかったよ。




 僕にはなんの力もない。




『そうかしらね』




 そうだよ!!いきなり訳がわからない!だって、勇者になれとか、戦えとか......何もかも、彼らの都合じゃないか!





 お母さん......なんで僕を生んだんだ。



 この呪いのような神器は......お母さんの命の塊は......。




 どうすれば良かったんだ。









 あと、どれだけ?




 どれだけ僕は大切なものを失うの?



 辛い目にあうの?






 もう






 いいや。



 全部、どうでも良い。










「!? なんだ......?」


 ノアの体をドス黒いオーラが覆い始める。



 ズズズズズ......ギギギギ!



 禍々しく闇よりも深い黒。そのオーラは拘束していたミミを吹き飛ばす。


「ミミ!? なんだ、あいつは......」



 ノアの姿が変わっていく。それはドロドロとした狼のようだった。

 腰と肩からは異形の腕が生えていて、全身から立ち上るオーラにはこの世の全ての不吉を孕んだかのような、禍々しさがある。


 ギギギギ......クケ......ケケケケケ!


「笑ってやがるのか......?」











 ――全てが無くなれば、悲しみも絶望も痛みも何もかも無くなる......だから、全てを壊そう。


 僕が......全てを。



 そしてノアの意識は深い闇の底へと沈んだ。









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