~44~ 僕の
「さーて、どっから行っかね、ミミちゃん?」
斧を背負った、男が言った。オレンジ頭の短髪で、背が大きく、背負う斧が少し小さめに見える。
「まずは、情報を集めよう。 正直、ガルデアの言うように全て殺してしまうのが手っ取り早いが、後が面倒だ。 時間はかかるが仕方ない......」
ミミと呼ばれる女騎士は、淡々とそう言った。黒髪の短髪、上半身は鎧で包まれ、下半身は足元までにおよぶ長いスカートをはいている。身長はとても高く、ガルデアを一回り小さくしたくらいだ。
「おめーはツラッとこええこと言うな。 まあ、全部ぶっ潰とか言った俺が言えたことじゃあないがな」
「......あれだな。 行こう」
「え、無視......? ぐすん」
ガルデアは泣き真似をし、目を擦る。それをまったく気にもせず、長いスカートをたなびかせ目的地へと歩き出すミミ。
◇◆◇◆◇◆
レジスタンス拠点、借りている部屋の中で僕はアレオスと二人で話をしていた。
アレオスがノアに言う。
「......ノア、僕は君が組織に入るのはやめた方が良いと思う」
「どうして......? だって、皆あれだけ強いんだよ? 僕一人ではどうにもならないかもしれない、そう思って旅をしていたけど、アレオスさんも見たでしょ? あの人達の強さ」
「確かに強いよ。 でも、だからこそだ。 君は自分で思っているより弱い。 それは技術的な、肉体的な戦闘力の話じゃなく......」
ノアはアレオスの話を遮った。
「それは理由にはならないよ。 だって、そうでしょ? 道の途中で襲われた親子、旅の商人、沢山いた。 僕が弱いから戦わないなんて......僕には残された想いがあるんだ。 それをとげるまでは」
そうだ、止まれない。
「......可能性があるんだ。 この組織に入れば、王に想いを届け国を変えられる......可能性が!」
ノアの話を黙って聞いていた、アレオスを見ると、悲しく辛いような、複雑な表情となっていた。
アレオスは思っていた。ノアは恐ろしく強い。それはきっと、一部の強者達に勝るとも劣らず、もしかすれば王徒十二騎士にすら勝てる可能性もあるほどに。
けれど、個人の強さはこの世界においてそれほど重要ではない。ノアが国を変えると本気で思っているのなら、もっと根本的な根幹的な国の問題や流れを理解し、そこを変えていこうと努力していかなければならないのだ。
ノアがやろうとしていることは、正に対極の反逆。しかし、ノアの中に流れている「想い」はもはや止められる物ではない。それがわかるから、アレオスはもう何も言えずにいた。
「......わかった。 ノア、僕はもう君をとめたりはしない。 けれど決して無理はしないでね」
座っていた椅子からギッと言う音と共に、腰を 起こす。そして、アレオスは荷物をまとめ始めた。
「アレオスさん......ごめんなさい」
「え......いや、ノア、これは謝る事じゃない。 それは君が考え、出した答えだ。 戦いの中で生きるなら、迷えば命を失うよ......決めたのなら、迷うな」
「僕はここで道を違えるけれど、別に敵対するとかじゃないからね。 僕は君の味方で友達だ。 いつまでもね」
蛇が印象的な杖を手に取り、リュックを背負う。
「目指す先が王都であるならまた会えるかもしれない。 皆によろしく言っといてくれ......またね、ノア」
「うん、また、いつか。 アレオスさん、沢山ありがとう」
「こちらこそ、だ」
そう言い、手を振り出ていった。
◇◆◇◆◇◆
~酒場~
酒場内にはまだ日もくれぬ内から、沢山の人で賑わっていた。
酒を飲み、すでに酔いつぶれ机に突っ伏している者、情報集めに話しかけ、巧みな話術で酔っぱらいを相手している者、様々。
「マスター! ドラグワイワインをくれ! ミミお前は?」
「......貴様、これは仕事だぞ。 酔っぱらって仕事に支障があったらどうするつもりだ? ドラグワイフィッシュの丸焼きください」
「俺が酒つええのは知ってるだろーよ(あ、食べるんだ......てか、それ食べたら腹一杯で動けなくない?)」
「......」
「......ああ、やっぱり酒場ってのは人が集まるからな! 賑わっていてイイねー! 騎士の仕事も忘れたくなるな」
「忘れるな」
ガヤガヤ
「......ガンディー、出よう。 少し酔っぱっちまった」
「ああ、わかった。 ライカム、行くぞ」
「んあ、まだお餅食べてねーぞ? ......ああ、持ち帰りにするか」
カランカランと、酒場のドアベルがなりハイム達三人は店を後にした。
「今の......資料のやつらだな。 俺らが騎士だってわかった途端、体内魔力が揺らいだな」
「ガルデア、お前は記憶力だけは良いな。 そうだな、それに奴等が持っていた武器、布にくるまれていたが、魔力が込められている魔器。 あれは国王軍にしか支給されない物......」
「まあ、外装をいくら隠しても俺らには《魔眼》があるからな。 見えるし意味ねえからな......行くぞ」
「まて!」
ドラグワイフィッシュの丸焼きが目の前に出され、一心不乱に食べだしたミミ。もぐもぐと、真剣な顔を横目で黙ってガルデアは見ていた。
こいつ......さっきと言ってることがまるで違うじゃねーか。まあ、いいか。
◇◆◇◆◇◆
そしてもう一方、ステラとレナ、エルナの三人は仲良く買い物をしていた。
ステラとレナは自由に出来るお金もあまりなかったが、僕と遊べ!との命令?でエルナに連れ回されていた。お姉ちゃん命令と言うやつか。そして巡りめぐって甘味処に来ていた。
「い、良いのだわ? こんなに沢山......」
「なんか凄く申し訳ないです......」
「ああん? 僕が食べてって言ってるんだよ! 食べてよ! 幸せそうな顔みせてよ!! 美味しいよ!? このお菓子、まじで頬っぺたおちるから! ......あ、ていうか、嫌いな物だったか? だったら食べないで!!」
ぷっ......と笑うステラ。強気だったのが急にしおらしくなったエルナがおもしろく、笑いだしてしまった。レナも同様に笑いだし、エルナは顔を赤らめ、なんだよ!とぷんすかしていた。
出されたお菓子も、ほんのり赤い透明なゼリーで、紅葡萄のソースがかかっている。中には葡萄の実がまるまる一個入っていて、とても美味しそうだった。
「お? 仲良し美人姉妹、三人発見! 君らかわいーねー!」
と、後ろの席に座っていた人が話しかけてきた。長い黒髪のストレートヘアーで、泣きぼくろがある。美人さんだ。
「うおっ、びっくりした! 誰だ!? って、あんたが美人じゃねーかよ! 二度びっくりだわ」
「あははは、すまん、急に話しかけて。 楽しそうに話すのが聞こえてきたからさー。 良かったらまぜてよ」
ステラとレナにエルナが問うと、二人とも良いよと言って席を同じくする。
自己紹介。エルナ、ステラ、レナがそれぞれ終わり、謎の黒髪美女の番。
「私の名前は、ナツメ! よろしくね!」
美しい黒の着物を纏う彼女の名はナツメ・シノメ。
またの名をキラージャック。
王都を生き抜く凄腕、一流の殺し屋だった。




