~41~ 君の願い
なんだろう。変な匂いがする......。
「ねえ、なんか匂わない?」
すると、ステラも鼻をすんすん言わせ、同じ事を言う。
「ノアも感じていたのね。 何かしらこの匂い......」
「匂い? もしかして、この潮の香りの事か? 海が近いから」
ハイムが聞いてきた。
海が近いから?近いと匂いがするの?......海って水だよね。匂いするのか?
するとアレオスが聞く。
「ああ、ノアは里の出だから......海を知らないのかな? ステラも?」
「なのだわ。 何故潮の香りがするの? それが海の匂い?」
「それはなあ......あー、まあ、行ってみればわかるさ」
ライカムが何かを思ったように言った。耳がひくひく動いている。
これは、良からぬ事を企んでいるな......。
エルナが言ってた。ライカムはイタズラ好きで、思い付いた時に耳がああやって、ひくひく動くのだと。
「海は広いぞー! あと、綺麗だ! 楽しみだなあ、お前らと海! なあ、着いたら遊んでも良いのか? お姉さんが泳ぎ方ってーのを教えたるよ! ステラもレナも一緒に泳ごうぜ!」
エルナがウキウキしながら話している。泳ぐ......僕も教えてもらった方が良いのかな。泳げるかな。
そして木々の隙間から、煌めく水面が見え始めた。ノアが気がつきステラに教え、二人でテンションが高くなる。なぜなら思っていたのと全然違うのだ。写真でも見たことのある海だったが、実際に目の当たりにすると、なんていうか......こう、迫力?凄かった。
ちなみにレナはお父さんが生きていた頃、ミーナルに住んでいたみたいで、海は海だよ!と言っていた。
「すごいね、ステラ!! 海ってこんなに大きいんだね!」
「これが海なのだわ! 綺麗で大きい......」
エルナは二人の笑顔を見て思う。ノアはステラといるとき、あの顔で笑う。
ステラはノアにとってかけがえのない、大切な存在なのだと。
エルナには弟がいた。故郷に神徒教会が来て、奴らが次々に命を奪っていく中で、僕は母と父を失った。
獣人と言う種族は見てわかる通り、普通の人間とは体の構造が違い、身体能力が高い。それにより戦闘能力が高い傾向にある。
じゃあ、なぜ故郷は神徒教会の神器を創る儀式、神降ろしをさせてしまったのか。
神徒教会から来た男もかなりの実力者だったが、その一人ならまだ戦えた。問題は、仲間の方だった。
やつは何故か王徒十二騎士の二人を連れて来ていた。
神徒教会は国王と繋がっていたのか、もしくは一部の繋がりだったのか。
それはわからない。
僕は、あの時弟に言った。「お姉ちゃんが必ず守るから」と。
ノア、ステラ、レナ......僕は守る。今度こそ、必ず。
そして、必ず復讐する。あの時逃げた王徒十二騎士の二人へと。
死壊爪のヴィーナル......そして、戦霊鬼のハルゲイヤ。
◆◇◆◇◆◇
ぶぇっ......かっは!僕は口から水を吹き出した。なんだこれ、しょっっっっぱい!?
あはははと笑う皆。ステラもうべーっと海水を垂れ流した。
これが、海の水か。誰がどういう目的で、こんなに塩いれたんだろう。
そんな冗談を頭に浮かべていると、海水を舐めてみろと言った張本人、ライカムが水をカップに入れて手渡してくる。
「いいリアクションだな、ノアとステラ! ほら、水だ。 口ゆすいでうがいしろよ」
「ありがとう......」
「......これは、美味しくないのだわ」
ステラがくちゅくちゅと可愛らしく口の中を水ですすぎ、べっと吐き出す。
何か違和感が......え、美味しかったらどうしたの?飲むの?
そして、初めての海水と海に触れ、味も知り潮の香りの正体がわかった所で、僕らはやっと港町ミーナルの町並みを遠目で見える所まで来ていた。
リゾート地とエルナが言っていたけれど、すごい。海に隣接して作られる町は、斜面にずらりと建物が並び、海沿いには小さなものから大きな物まで、沢山の船がある。
そして何より驚いたのは町の大きさ、その規模だ。生まれて初めて見た町は、里と村しか知らなかったノアには、とてつもなく広く感じた。
次に、遠目でもわかる人の多さ。このミーナルには、観光で訪れる人と住民を合わせ、三万人居ると言われているらしい。
ノア的にはもう意味がわからないレベルの人の多さで、目が回りかけている。
ちなみにステラは魔界出身だし、大きな町とかは見たことあるのかな。と、思っていたら、ほえーっとした表情でふらふらしながら歩いている。
多分、あれは僕と同じ感じだと思う。だって僕の足取りも町のわくわくで浮わついているから。
すごいな、町って。
こうして僕らは港町ミーナルへとたどり着いた。
◆◇◆◇◆◇
「――よお! 生きてたか、お前ら。 どうだった、魔物の動きは? って、誰だそっちの奴らは?」
当初はミーナルまでの同行だったが、ガンディー達が行くとこないならとりあえず来ないか?とアジトに誘ってくれたので、お言葉に甘えアジトへと行くことにした。
そして、今その場所へと来たわけだが、ガンディー達の仲間らしき、長髪の男に敷地の入り口で止められた。
それはそうだよね。急に誰かもわからからない奴が四人もきたら、誰だそいつらになるよね。
「あ、僕はアレオスと言います。 この子はノアで、こっちの子がステラ、レナ......旅人です。 急に来て申し訳ない」
ハイムが、ああ、すまねえ。とアレオスに謝る。
「そうだ、俺達が遠征で行った所であってな。 色々と助けられたから、礼をするのに来てもらったって訳だ。 いいか?」
え、とノアが思う。助けられたのは僕らなのに。
「ああ、そう言うことか。 また入隊者を連れて来たのかと思ったから......了解。 ボスはまだ帰ってないから、挨拶はあとでだな」
......入隊?何に?
と、疑問の顔をしていたら、ハイムが答えてくれた。
「言ってなくてすまねえが、俺らはある組織の者なんだよ。 連れてきといてあれなんだが、ここの話は口外しないでくれ。 お前らは信用できると思って連れて来たんだからな。 半分は」
「半分?て......?」
ノアが聞いた。
「ああ、半分だ。 もう半分はお前らに入隊してほしくて連れて来た。 どうだ、お前らも一緒にこの国を、世界を変えてみないか......?」
「我々......グライン王国へ反逆せし、レジスタンスと!」




