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~2~ 最強の剣と最弱の盾

 


「......え」


 期待に満ちた僕の想いが、崩れ去る。僕の神器は、盾であった。

 しかも、他の勇者とは違い、輝きは無く歪んでいて、ひび割れてすらいる。これはもう盾として使えるかも怪しい。


 先ほどまでの、勇者達やアランの神器発現での賑わいはいつの間にか静まり、目の前にいる神器を発現させてくれた女性も顔をひきつらせ固まっているように見えた。


 僕は放心状態で自分の盾を見ていた。

 う、嘘だ......なんで?僕の神器......これ?


「......ぷっ」


 アハハハハハハ


 と、僕以外の七人の勇者が笑だした。


「いやー、やっぱりノアは違うな!」「すげーカッコいい神器じゃん? 小さくて壊れかけだけど」「いやいや、盾とか武器じゃないじゃん! どうやって戦うん? はは」


 やがて勇者達の嘲笑は広場の皆に移り僕の悪口へと変わって行く。


「やっぱり親がいないから......」「才能がなかったんだな。 かわいそうに」


 そしてアランが僕に言う。


「おい、ノア。 お前、大丈夫か?」


「そんなんじゃ勇者になっても戦いで死ぬだけだぞ?」


 そういうと彼は僕にロングソードで斬りかかってきた。

 咄嗟に盾で防ぐも、盾はミシミシと悲鳴をあげていた。こ、こ壊される!?


「ははっ、ここで勇者アランが終わらせてやるよ! お前の勇者としての道を! 優しいこの俺がな!」


「お前、毎日こそこそと鍛練してたみたいだが、それもぜーんぶ無駄だったのなあ! 笑えるぜ」


 あざけわらい、その剣に力を込める。すると僕の盾が、本来壊れるはずのない神器がバキッメキッと言う音と共に、みるみる崩れていく。


「うっ......あぁ......!」


 僕の口から情けない声が漏れだす。


 すると、流石に神器を壊してしまうのはまずいと思ったのか、大人達が止めにはいった。


「......ちっ。 せっかく俺のロングソードがどれだけ強いか試せるとこだったのによ。 まあ、いいや」


 そしてアランは去り際に僕に耳打ちをする。



「おめでとう、最弱の勇者」



 ◇◆◇◆◇◆



 それからどうなったのかあんまり記憶にない。気がつけば僕は家には帰らず、里の外の森にでていた。

 そこはいつも僕が里の人にみつからないよう、隠れて鍛練するのにつかっている場所で、師匠シルフィと最後に話しをした場所だ......。


「シルフィ......ごめん。 僕、良い勇者にはなれそうにもないよ......」


 そう口にして、シルフィとの鍛練と思い出が蘇る。

 アランに努力の全て否定をされ、どうにもならない現実に悔しくて頬に熱いものがつたいポタポタッと地面へと落ち、土へと吸い込まれて行く。


 ああ、終わったんだ。何もかも......足りていたかはわからないけど、精一杯の沢山の努力と鍛練。師匠シルフィの教えと母さんの想い。勇者になって、シルフィの(かたき)を討ちたかった。恩返しもなにもできなくなってしまった。ごめんなさい......。


 そう心の中で呟き涙を脱ぐって顔をあげると、ふと足元のそれに気がつく。ん、何だろうこれ......と、観察してみる。

 さっきまでは絶望と悲しみでいっぱいだったので、全然気がつかなかったけど......



 寝転がっているこれは......





 どうみても魔族の女の子でした。



 ビクッと、僕の体が跳ね、あまりの驚きに逆に叫ぶこともできず、その子を見つめ硬直した。


 普通、魔族に対して感じる感情は恐怖だ。人間と長きにわたり、争ってきた、魔王の配下である魔族は人類の敵である。

 数々の魔族との戦いや支配の歴史を里の先生や大人達に聞いてこれまでそう教えられ生きてきた。

 だから、魔族は怖いはず......なのに。


 僕がこの女の子に感じた感情、それは。


「......綺麗だ」


 なめらかな黒髪、立てば腰まであると思われるその長髪は、日の光を浴びてうっすらと(あか)くみえ、美しく綺麗だ。

 そして、額の少し上あたりに生えている二つの小さな角は、悪魔を連想させるが、その幼くも整った顔立ちは女神のようにみえた。

 これ程美しい女性は僕は見たことがなかった......あ、シルフィごめん。


 どきどきしながら、彼女の様子を伺っていると、黒色のドレスの下から出ていた、黒く細い尻尾がぴくっと動いた。

 意識を取り戻したみたいで、目を擦りながら彼女が言う。


「......だ、だれ......あなた」


「あ......えっと、僕は......」


 僕の歯切れの悪い応答に表情を不安に歪める。

 この子、声もすごく可愛いな......。


「あ、あいつらの仲間......? いいわ。いいわよ! 私を殺したければ、殺せばいいわ!」


「こ、殺す......!? な、なにを言っているの?」


 だ、誰かと勘違いしている......?

 よくみると着ているドレスはボロボロで、彼女自信も相当疲弊しているようだった。


「なにって、あなた私を襲ってきたやつらの一人じゃ......」


「ち、違うよ、僕はこの近くの里の人だよ。」


「でも......私を殺すのでしょう? 見ての通り魔族よ、私」


 少しの沈黙。確かに、魔族は殺す決まりで、里の戦える人達で処分する事になっている。どうしよう。でも、彼女は......魔族だけど見た目は普通の人間みたいだ。

 僕が迷っていると、彼女が静かに喋りだす。


「いいわ。私、もう生きている意味もないのだろうし。 ......でも、最後にお願いをしてもいいかしら。」


「お願い......?」


「私とお友達になって。 最後に少しだけお話しをさせて......ほしい」


「寂しいまま死ぬのは......嫌だわ」


 その寂しいと言う言葉に僕の心は動かされた。

 なぜなら僕も、お母さんやシルフィがいなくなってから、ずっとひとり孤独で寂しい日々を送ってきたから。


 だから信じるとか、誰の目から見ても、あり得ないくらい馬鹿な事だと自分でも思ったけど、僕もその気持ちがわかるから。

 すがるように僕の目を見つめる彼女。赤くて綺麗な瞳が潤んでいる。

 僕は......


「わかった。君と友達になるよ......僕の名前は、ノア。君はなんていうの?」


 ――その願いを聞いてしまった。


 彼女はまさか僕がその話を飲むとは思っていなかったのか、目をまるまると見開きまた色鮮やかな深紅の瞳でこちらを見て驚いていた。

 数秒の間の後に、若干の戸惑いをみせながら彼女が口を開く。


「い......いいの? ......ありがとう」


 そして彼女はその頬を緩ませそれだけで、心臓への負荷で人を殺せそうな、花が咲き誇るような可愛い笑顔を僕に向ける。

 しかし、可愛いなと内心デレデレしていたのも束の間。

 衝撃の発言で僕はまたさらに心臓に負荷がかかった。



「私の名前はステラ」


「魔王の四番目の娘、ステラよ。 よろしくねノア」



 んーと、魔王の......え、なんだって?




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