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~37~ 闇夜の

 


 川は......そうだ、井戸。近くに空き家とかあれば、そこで水をくめるんだけど。ないかな?


「ねえ、ノア。ちょっといいかしら......」


 ステラが手招きする。


「どうしたの? 大丈夫? ......体、キツい?」


「!? ふ、太ってないわよ!」


「え?」「え?」


 なんの話し!?なんか勘違いしてない?と、とりあえず、わかりやすく......誤解をとかなければ!こんな悲しい戦争、したくないぞ!


「あ、いや、暑いからさ......それで体つらくないかなって」


「え!? あ、ご、ごめんなさい! わたし、勘違いしたのだわ」


 ふふん。良いよ。照れてるステラも可愛いな。なんだろう、たくさん一緒にいて距離が近くなったからかな。

 こんな些細な行き違いでも感情をあらわにしてくれる。でも、それは嬉しい事なんだと思う。


「あのね、近くに魔物がいると思うの......しかも一定の距離をとってついてきてる。 魔力も今まで倒した魔物より、遥かに大きい」


 え、それ、結構ヤバくない?


「どのくらいいるかわかる?」


 話を聞いていたガンディーが僕とステラの間に、するりと顔を割り込ませ言う。


「――大体十五とかそこらだろう。 連中、狩になれていやがるな。 きっと野営地までついてくるぞ」


「! ガンディー達も気がついていたの?」


「ああ、こっちには鼻の効く獣人が二人。 そして俺もハイムも実戦歴が長いからな、あの程度の気配の隠し方なら普通に気が付くさ」


「あ、獣人、成る程なのだわ......!」


「なになにー? おまえら秘密の話かよー! 好きな子の話かー? あはは」


 エルナがその間からにゅっと顔をだし笑いながら言う。

 え、呑気過ぎない?さっきの話的に獣人であるエルナも敵の事は気がついているはず。なんでこんな余裕なの?


 いや、余裕なのか。多分、この人達はまだそこまで本気で戦っていない。それであの強さなんだ。

 それに、きっと能力も何かしら持っているんだと思う。


 それに......やっぱり、エルナの戦闘技術は、とてつもなく高いように見える。獣人なのもあるけど、反応速度と力、俊敏さが異様なレベルだ。

 倒された敵には、自分が攻撃された事すら気がつかずに死に行く者もいただろう。


 ......でも、幸運だったかも。やっぱり強い人からは学べる事は多い。僕はまだまだだ。だから、学び吸収して強くならなければいけない。

 ステラとレナ、アレオス......皆をしっかり守れるように。



 ◇◆◇◆◇◆



「......つまり、具体的にはこうだ」


 ガンディーが出してくれた作戦。それは、野宿をしようと言うものだった。とは言え、水が欲しいので空き家か川、井戸を探しながら歩き、見つけたら補給。

 空き家があればそこへ泊まり、仕掛けてきた魔物と戦う。


 野営地はもしかしたら旅人か冒険者がいるかもしれない。巻き添えになるかもとの事で、着く前に魔物を倒すと言う方向になった。


「でも、野営地にも魔物に困っている人がいるかもしれないよ? 」


 僕がそう聞くと、ハイムが髭を触りながら渋い声で言う。


「いや、いたとしてもこの魔物共を連れていくのは危険すぎるだろう。 助けるにしても奴らを殺してからだ......野営地には結界もある。 どちらかと言うと安全なはずだ」


「成る程......けれど、野宿は流石に危険すぎるだろう。 この魔物の数だ。 夜になれば更に寄ってくる」


 アレオスの言う事も最もだ。これ以上の魔物の群れが闇に紛れ襲いかかって来たら、苦戦する事間違いない。するとハイムがこう返した。


「いや、それは大丈夫だ。 ガンディーが結界を張る能力を持っている。 なんなら野営地のより強力かもな......ただ、小さい結界だからな。 ここにいる奴らくらいしか入れない」


「じゃあ、この魔物達はどうするんですか? 結界で夜を越してまた倒しながらミーナルを目指す......?」


 疑問を投げ掛けたレナ。そうだ、結局この魔物達の具体的な対処はどうするんだろう?どう殲滅するんだ?

 エルナがあっけらかんと言う。


「それはなー、僕が単独で少しずつ狩ってくんだよ。 闇夜でもこの鼻と耳に目があるからな。 前にもやったことあるし」


 単独で、この数を?この人、思った以上に......。

 見たい。この人が戦っている姿と技量を......!

 そう思っていたら、エルナがノアを見た。そしてにっこりと笑う。可愛い......いや、可愛い言い過ぎじゃない?僕。


「ノアさ、お前もやれんだろ? 手伝ってくれよ。 お前の力もっと見たい」


 同じ事を思っていたらしく、共闘を提案された。この人レベルなら気を配る必要もない。

 思い切り戦える......だったら、この人と二人なら、魔物がいくらいても倒しきれるんじゃないか?そんな気がする。


「わかった。 具体的にはどうするの?」


「おー! そうこなくっちゃな! 僕、好きだよお前みたいなノリが良くて強いやつ」


 この時、ハイムからの視線とステラからの視線、レナの冷たい冷気を感じたが、これは気のせいではないだろう。僕は悪くないぞ!今回は!


「キュウ?」


 リンドが首を可愛く傾け、「?」と言う顔をし、くりくりとした目で皆をみていた。



 ◆◇◆◇◆◇



 やがて日が落ちて闇が迫る。


 僕らは魔物の襲撃が直ぐに察知できるように、見晴らしの良い場所に皆でかたまった。


「ここらで良いか......よっと!」


 そう言い、ガンディーが槍を地面に突き刺し、魔紋が広がった。

 この結界、かなりの強度で大体の魔力攻撃や物理攻撃を弾く。そして継続時間は十八時間と言う、破格の能力だ。


 ガンディーの魔力を槍に宿る魔石と織り交ぜ、大地の力と合わせ発動させている。

 かなり特殊な能力で、その名を《地界絶孤》。槍の名をメイキンドゥ。大地の神タイタンの加護を受けた宝神具だ。


 そしてその結界から二人が出ていく。ハイムが真剣な眼差しで二人の背に言葉をかける。


「お前ら......命あっての作戦だ。 無理はするなよ」


 エルナがにいっと八重歯を見せ笑う。


「あったりめーだよっ! なになに? 寂しいの? ちゃんと帰ってくるから、安心してなって。 ハイムもライカムも、ステラとレナ、あとアレオスをちゃんと守っといてよー」


 エルナの尻尾がひゅんひゅんと動いている。

 僕もハイムさんへ返事をして頭を下げた。


「ごめんなさい、皆をよろしくお願いします。 ......行ってきます!」


 二人が闇夜に消える。作戦開始――。




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