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~35~ 獣人

 


 ライカムが先導するように、時折出くわす魔物を退け野営地にたどり着いた。


「いやあ、すげえなあんたら! あれだけ魔物と戦えるなんて、ただの旅人には出来ねえよ!」


「ううん。 ライカムさんが助けてくれなかったらこんなに早くここまでこられなかったよ......ありがとう」


「しかし、それだけ強いと言うのに名を聞いたことがない......あんたらは何者なんだ」


 髭をたくわえた、体格の良い白髪混じりのおじさんがそう呟いた。背には大きな斧を背負い、お腹が少し出ている。名をハイム。


「ハイム、詮索は無しだろ。 君たち、気にしないでくれ」


 と、気をつかい微笑みを向けるのは、ガンディー。彼も鎧を着ていてがっしりとした体つき。槍を背負っている。髪はブロンドで長く、肩まであり後ろで纏められている。

 アレオスが言う。


「ありがとう、でも僕らはただの旅人だよ。 ミーナル港町に行きたいんだ。 この先もこんな感じで魔物が多いのかい?」


 ライカムが言う。


「そうだな。 こっから向こうは、進めば進む程多くなっているように感じる。 ミーナルの町付近は領主の蒼の四騎士が守っているから魔物は少ないと思うがな」


「ええっ、これ以上なの!? ううう......とても億劫なのだわ」


「ああ、これ程ひどいことになるとはな......魔物側の領主ってのは意味はあったんだなと今になって思うぜ」


 ハイムが、ははっと笑いそう言った。そして僕は聞く。


「その魔物の領主って誰が倒したんだろう?」


 ガンディーがノアに笑いかける。誰だろうなと。

 僕はさっきから違和感を感じていた。これは匂いだ。嘘をついてる......というか、誤魔化している?なんで......?


 あと視線を感じるんだけど。場所がわからない......この人達の仲間かな?どうしようか。

 そのノアの疑念を察したのか、ガンディーは聞かずとも答えてくれた。


「......そんなにきょろきょろしなくても大丈夫さ。 魔物が来ても俺達の仲間が森の中から見てるからな。 あとで紹介しよう。 うちで一番強いやつ......エースだ」


「それと、俺達もこのままでは拉致があかないと思っててな。 ミーナルに一旦戻ろうと思っているんだ。 君たちに動向してもいいかな?」


 敵ではないのか?でも下手な事を言って、戦いになったら戦闘経験の少ないステラにレナ、戦えないアレオスがいて、皆無事に勝てる見込みはあまりない。

 彼らはかなりの戦闘能力を持っている。動きでわかる。


 それに僕の感じた違和感が、ただの嘘で悪意のあるものではないかもしれない。単純に知られたくない秘密を隠してるだけかもだし。


「アレオスさん......ステラ、レナ、いいかな?」


「うん、僕は良いと思うよ。 むしろ助かる」


「私も良いと思うわ。 どんな魔物がいるのかだってわからないのだもの」


「皆さんが大丈夫なら私も大丈夫です。 ね、リンド」


 キュウ!とリンドが尻尾を一振りして鳴く。よしよしとステラがもふもふ撫でていた。



◆◇◆◇◆◇



「......そろそろ交代だな。 呼んでくる」と、ガンディーが夕食の皿等を片付けながら、席を立つ。

 そして森の中へと歩き出した。


「さっき言ったうちのエースだ。 ひとつ言っとくが、かなりお喋りでうるさいから気をつけろよ」


 ハイムが酒を飲みながら言った。その時、ハイムの背後からにょきっと手が出てきた。そして、そのまま首が締められる。


「だあああーれが! うるせーってええー?」


 ググググッ......!


「か、かはっ......く、苦しい! まて、わかった! 悪かった! 離してくれ!!」


「わかったなら良し......って、んなわけに行くかよー! お前何度目だよー! おらおらー!」


 その首にかけられた細く白い腕をタップして降参を示すが、まったく解放される気配はない。話を聞く限り自業自得なのかな?でも可哀想。

 と、そのときライカムが、お前腹減ってねえの?と聞くと、パッとハイムの首を離した。


「あ、そうよ! めーっちゃ腹へっててさー! いつまで待たせんだよー! 骨と皮になっちまうぜー」


「その前に、自己紹介な。 お前の耳なら話は聞こえてただろ? これからミーナルまで旅を共にする仲間だ」


 うっす!と敬礼をする。猫耳少女。そう、彼等のエースは小柄な獣人の女の子だった。


 ステラより少し低い背丈。腰からは尻尾が伸びていて、ぴょいぴょい動いている。

 髪色は透明感のある青で、どちらかと言うと白っぽい。長さは肩まであり、ぴょんぴょんと癖毛だ。八重歯がちらりと見えている。

 あと、胸が大きい......はっ!


 横を見るとステラが不機嫌そうに見ている......って、レナ?なにその目の色が消えたかのような怖い視線!?

 二人にびくついてると猫耳少女は自己紹介し始めた。


「僕の名前はエルナ。 よろしくー! いやあ、女の子いるじゃんかー! 仲良くしよーぜー! うちはむっさい男しかいねえからなー! すげえ嬉しいよ! あ? なんだこいつ!? このもふもふした生物は一体......!? ねーねー、触らしてー!!」


 ――((((なにこの子、すっっっっっごい喋る!!!))))――


 ノア、ステラ、アレオス、レナの気持ちがシンクロする。


 けれどこの子から嫌な感じはしない。大丈夫だろう。

 ステラとレナにまた友達ができるのなら嬉しい。明るい子だし、ステラもよく喋る子だから、気が合うかも。


「そ、その前に食事しろ......腹へってんじゃないのか? ごほっ」


 ハイムは首をさすり、食事を指差す。優しい......ていうか、食器が片付かないから早く食べてほしいんだろう。


「あ、そーだ! 腹へってたんだった! きょーのごっはんはなんだろなーっと......おおお!? お肉あんじゃねーか! やったぜ! ありがとうハイム神」


 両手を合わせハイムへと祈りを捧げる。なんか、手を合わせる相手は違うんじゃないかな?と思ったが言わないどこう。


 「なんか違う......」


 って、あっ!!口に出て......!?


 「......ほほーっ......何か文句あるのかね、少年」


 エルナがそう言い、こっちをじーっと見ている。にやりと歪む口元、そして物凄いスピードで僕の後ろへと回りこむと、首を締めてきた。

 が、ただでやられるほど僕の反応は遅くない!

 腕を差し込み首が締まらないようにガードした。けど、あれ......これは!?


「おおお!? まさかガードされるとは! やるなー! 少年......ん?」


 胸があたってるーーーーー!!!


 攻撃の失敗したエルナは、ノアが胸を意識しているのを察知するや否や、耳元で吐息をかけながら小声で言う。


「......えっち」


 ノアは静かに目を瞑った。そう、ガードには成功したが、戦いには負けたのだ。心臓が破裂しそうになりながら、倒れこんだ。

 すると、ステラが言い放つ。


「ちょっと! 何してるの!? 私のノアなんだから、そんなにくっつかないでよ!!」


 私のって、なに!?

 やばい、これは僕の精神と心が削られて行く音がする。恥ずかしいんだけど。かなり......。

 なんで口に出してしまったんだろう。まさか、こんな事になるなんて。


「え!? そうなんか? それはすまん、もうしねえーから許して」


 エルナは両手を合わせて、ステラに素直に謝っていた。


 こうしてエルナ達と一緒にミーナルへと向かう事になったのだった。




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