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~34~ 形になる力

 


「――うん、そう。 魔物との遭遇率がおかしいんだ。 今さっきも二匹倒して......って、あれ? あそこにも何匹かいるじゃないか!」


 僕らが空き家を出てから、一つ目の野営地を目指し歩いている。しかしその旅路は順調とは程遠く、魔獣との遭遇回数が異様で、もう僕らはまだ半分も進んでいないのに、既に十体は倒していた。


 そして道端には時折、旅人や冒険者の魔物に襲われたと思われる無惨な遺体が、転がっていたりする。


 こういう犠牲を無くすための魔物の領主なはずなのに......ここの領主は何をしているんだ?

 とにかく、考えても仕方ない。倒さなければ殺される。



「――ノア! こっち終わったわ!」


 ステラがイビルドッグと言う体が赤黒く、二本角の真っ赤な角を有する魔獣をダガーで素早く倒し、僕へと声をかける。

 僕がステラにダガーの扱いを教えてからそれほど時間は経ってない。

 努力も勿論あるけど、才能の比率が大きいように思う。戦闘の才能が。


 グガアアア!!!


 身もすくむような叫び声をあげる魔物は、僕の四倍くらい(もっと?)ある大きな体で一つ目が特徴的な巨人の魔物......名をアークサイクロプスと言い、その強靭な筋力で覆われた体を使い戦う。


 ひとしきり叫ぶと、アークサイクロプスは棍棒......というか、その辺に生えていたと思われる大木を僕めがけ振り下ろしてきた。


 ガッ――ギィッッンン!!ドオォーン!!


 僕はレナから貰ったカイトシールドを大木の側面にあて流すようにかわした。振り下ろされた大木は地面を割り、大木がおそろしく頑丈なようで当たった場所へ深々と刺さる。恐ろしい程の腕力だ。


 けれど......ここだ!僕は、攻撃直後で隙だらけの伸びきった腕、その間接を狙う。これは村で買った銅の剣。それにより斬り裂いた腕から血が噴き出した。

 グアガアア!?と叫び怯んだ所でステラが敵の振り下ろした大木をかけ上がっていく。そして恐るべき素早さで、アークサイクロプスの顔へと到達した。


「――ごめん、ねッ!!」


 ヒュッ!と赤いダガーの軌道。


 一つ目を潰される。視界を奪われ膝から崩れる大きな巨人。そしてレナが叫ぶ。


「今だよ! リンド!」


「キュイッ!」


 リンドと呼ばれた兎ような魔獣?がアークサイクロプスへとじぐざぐに走りだし、その脚に角をドスッと突き立てる。すると、リンドの体が光だし敵のからだから何かを吸い取るように、どくんどくんとリンドの体の光が点滅する。

 やがてアークサイクロプスは生命活動を停止したかのように動かなくなった。

 おそらくリンドは魔力と生命力を角を通し吸収しているんだろう。......すごい。


 リンドはレナが名付けた名前で、あれからずっとレナの側にくっついて歩いている。かなり懐かれているみたいで、一度魔物がレナを襲おうとしたときに、リンドが守って戦っていた。


 その時に、リンドが角を刺して敵を倒しているのをみて、戦力になることがわかった。もふもふしていて強いって......最強だ。


 ちなみにステラにも懐いている。さっきもふもふしてた。


「よし、おりこうだね、リンド! なでなで」


「キュイィッ」


「なんというか......すごいねリンドは。 魔力はまだ百歩譲って分かるんだけど、生命力を吸い上げるなんて......かなり高位の魔法使いでも出来ないんだけどね。 でもこの子がレナを守って戦ってくれるのはかなりありがたいね」


「うん、レナも嬉しそうだし、良かった」


 レナ自身は戦えないから、それを補ってくれるリンドの存在はとても心強い。

 リンドは結構賢くて、僕達が言っている事を理解しているようにも見える。その証拠に話しかけると頷いたりする。

 そして、現にさっきの戦闘でもきちんと合図したタイミングで、アークサイクロプスに攻撃を仕掛けていた。


 あと、心強いといえばもう一人。


「ノア、大丈夫だった? 病み上がりな上に、たくさん戦ってるし......疲れていない?」


「うん、ありがとう、大丈夫だよ。 ステラのおかげでかなり楽に敵を倒せているし......」


「それにしてもすごいね、ステラ。 魔獣もひとりでたくさん倒せてるし......強くなったね」


 と、なでなでする。ステラの赤み掛かったやわらかく綺麗な髪が、さらさらと心地よい......てか、僕、普通に頭とか撫でてるけど良いのかな?今更だけど。


「えへへへ」


 ステラは少し照れながら、頬を緩ませていた。可愛い。嬉しそうだから、良い......のかな?



 ◆◇◆◇◆◇



 パタパタと僕の周囲を鳴きながら走り回るリンド。心なしか目が潤んでいる。

 しゃがみこんで撫でてあげると、キュイー!と喜んでいるように長いふさふさの尻尾をぶんぶん振っていた。やばい、この子、めちゃくちゃ可愛い!

 そしてそのままレナの所に走っていった。本当にレナが好きなんだな。


 しかし、確かに魔物の出現数が頻繁な気がする。今までの道と比べて。考えても仕方ないとは言ったものの、原因はしりたい。


「......アレオスさん、この先の野営地に誰かいるかもしれない。 人がいれば魔物が多発してる事について何か聞けるかもしれないね」


「うん、そうだね。 今はとにかく進むしかない、か。 けれど、本当に君たちについてきて良かった。 この魔物の量......僕一人だったら確実に死んでたよ」


「でも、アレオスさんがいなかったらノアの熱はあんなに早くひかなかったかもしれないのだわ。 ありがとう」


「そうだね、アレオスさんありがとう」


「ありがとうございます、アレオスさん」


「え、あー、いや、それくらいは......ねえ?」


 アレオスが照れてる!可愛い。歳上の人に失礼かもだけど。でも本当にありがとう。頼れる大人って感じだ。



 ◆◇◆◇◆◇



 道中、また人が倒れていた。しかし、今まで見てきた人達とは違い、まだ息があった。しかもこの人は......。


「この人は、獣人だ......!」


「僕、初めてみた......」


 ふさふさの(たてがみ)に猫のような耳、黒い獅子みたいな容姿だ。体は鎧に身を包んでいて、結構大きい。

 横には真っ黒な大剣が落ちていた。


「う......あれ、俺は......なんで」


「目が覚めたかい? 僕らは旅の者だ。 とりあえず、これ」


 アレオスが水を手渡した。


「あ、ああ......ごめんな。 ありがとう」


「体は平気なのかい? 怪我は、見える所にはないようだけど」


「うん、大丈夫だ。 ちょっと疲れていてね。 眠りに落ちていたんだと思う......最近は睡眠をとっている暇もないから」


「えええ? それはどうしてかしら?」


「この辺を歩いているとき、魔物に会わなかったかい? 最近、こここ一帯を領地として治めていた魔物が殺されたんだ。 それで俺が抑えのきかなくなった野生の魔獣を狩って回っていたんだが......あまりに多すぎて、この有り様って訳なんだよ」


「なるほど......でも、無理は良くないですよ」


 レナが心配そうに言った。


「ありがとう。 でも、これは俺達が始めた事だから......」


 俺達が?てことは、魔物の領主を倒したのって、この人達ってこと?


「知ってるかもだけれど、この先に野営地があるんだ。 俺達は今そこを拠点としている。 とりあえずお礼もしたいし、一緒に行かないか?」


「うん、僕らもちょうど目指していたんだ。 一緒に行こう!」


「あ、そうだ。 俺の名前はライカム。 よろしくな!」




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