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~33~ 甘い雨上がり

 



『――ノア。ノア? 聞いているの?』


 懐かしい。これは......お母さんの声だ。

 なに?お母さん。



 あれ?僕の体......小さい。




『どうしてちゃんと剣を握れないの?』


 だって、僕の手にはまだ大きいから......


『こう......そう、こう。構えなさい。違うわ。そうじゃない』


『もっと腰を落として。』


 パシンッ


『何回言わせるの!真面目にやりなさい!』



 痛い



『あなたは、......の、希望なの......そんな事では困るの』



 ごめんなさい。お母さん。ごめんなさい。



 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい





 ――




 ――はっ





 ......。


 ここは......。


 ......そっか、僕は熱を出して倒れて......そうだ。

 今のは......夢か?


 お母さん......?あれ?何かおかしいな......。


「ノア! 目が覚めたのね。 具合はどうかしら」


 頭には濡れた手拭いが乗せられている。少しひんやりする。気持ち良い。


「うん......ごめんね、ありがとう。 だいぶ良くなったと思う」


 身をよじり起き上がろうとするが、ぐらつく。

 うっ......気持ち悪い。頭がくらくらする。


「まだ駄目ですよ! 熱はひいてきましたけど、ゆっくり休んでください」


 レナが慌てて言うと、となりのアレオスも頷いた。


「でも良かったよ。 ステラが頑張って薬草をとってきたから......その甲斐があったかな?」


「ううん、私だけじゃないでしょ? アレオスがいなかったら薬草の見分けもつかないのだわ。 あと、レナがノアについていてくれたから」


「私はお留守番していただけなので......」


 そっか、皆僕のために......申し訳ないことしちゃったな。


「皆、ありがとう。 レナのおまじないも効いたんじゃないかな? ありがとね」


「え、あっ......しーっ!」


 レナが口の前に人差し指を立ててる。あ、誰にも言わないでって......ごめん。

 レナの顔が赤い。......可愛いな。って思ったらステラが睨むんだよね知ってる。


 ステラの方を見ると冷たい視線をこちらに向けていた。


 はっはっは。怖いよ......。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌朝、皆のおかげで体調はすっかり良くなった。これならもう大丈夫だな、と伸びをする。ずっと横になっていたから、体が痛いな......。


「あ......おはようございます、ノアさん」


 レナが、ぐらつくスプーンの入ったカップを二つ持って来た。良い匂いだ。

 彼女はスープを持ってきたらしく、どうぞと手渡してくれる。


「ありがとう。 これ、なに?」


 スープは黄色のトロトロとしたもので、所々に元になった野菜であろう黄色い小さな粒があった。

 凄く良い香り。


「ガトウキビっていうお野菜のスープです。 お野菜だけれどとても甘くて美味しいんですよ......どうぞ」


「ありがとう......あちっ」


「あ、ごめんなさい、温め過ぎたかな。 本当にごめんなさい!」


 慌ててるレナに大丈夫だよと言い、カップを床に置く。とりあえず冷まそう。と、思ったらそれをレナが手に取り、スプーンでひとすくいして、ふーふーと息を吹きかけて冷ます。


 そして、僕の口許に差し出す。


「どうぞ......」


 え、これ、え......良いのかな?なんかちょっと恥ずかしいし......ステラが怒りそうな。

 と、レナを見ると顔が赤くなってる。これは、断ったら可哀想だよね。


 あむ。


「う、うん、美味しい! ありがとう」



 ◆◇◆◇◆◇



 ああ、やってしまった。ノアさん火傷とかしてないかな?

 ごめんなさい......。

 お母さんにもよく注意されてたのに。火にかけすぎると熱くて飲めないわよって。


 あ、そうだ。前に私が風邪をひいて寝込んだとき、お母さんがふーふーして食事を食べさせてくれた。

 ノアさんもお腹すいてるのに冷めるまで待たすのは、ちょっと可哀想......よし!


 ふーふー......ん?あ、いや、待って......これ良いのかな?


 あ、ノアさんが驚いてる。それはそうだよね、だって私、ノアさんの親でもなければ恋人でも無いのに......あ、ああ、ヤバい。

 それなのに、ふーふーって、他人が息を吹きかけたスープなんて、飲みたくないよね。は、恥ずかしい......。


 あ......。


「う、うん、美味しい! ありがとう」


 の、飲んじゃった......気をつかってくれたのかな。本当に、ごめんなさい。


 ......でも、嬉しい......かも。



 ◆◇◆◇◆◇



 よし、行こうか。空き家の扉を開けて、外へ出る。

 快晴だった。空が澄みわたるような綺麗な青。


 体も軽いし、これでミーナルへと進む事が出来る。僕のせいで旅が遅れている......頑張らなきゃ。


 すると、ノアのポケットが淡く光っているのにステラが気がつく。


「さってー! 天気も良いし、行きま......え、何それ」


「ん? え、な、なにこれ!? 光ってる!?」


「ノア、なんだいそれは!? 生命力の反応があるんだけど!?」


「わあ、綺麗......」


 レナが一人だけ、のんきなことを言っているけれど、そんな事気にしている場合じゃないよこれ!

 ポケットから慌ててそれを取り出す。


 これは......!?


 光っていたのは人形に切られた紙だった。一部赤黒く、そして碧く翆にも染まっている。......なんかヤバくない?


 ノアは思いだした。野営地で、「これに魔力を流して使え」と言われて女騎士の人に貰ったやつだ。

 完全に忘れてた......これどうなるの?


 光が大きくなる。そして、形が変化し丸々としてきた。これは......!


 ふさふさとしていて、綺麗な碧色の毛並み。頭には小さな赤い宝石のような一本角が生えている。


 少し大きめの兎が現れた。


「......」


「......」


「......」


「可愛い!!」


 レナがすぐさまその兎のような生き物に抱きつく。もふもふしてる......気持ちよさそう!

 いいなあ......じゃない、大丈夫なのか?魔物とかじゃない?


「何なのそれ......デビルラビットみたいな姿なのだわ」


「本当だね、でもデビルラビットのような敵意も感じない......」


「? とっても可愛いですよ。 うふふ、すりすり~......きゃっ」


 ペロペロとレナの顔を舐める謎の生物。レナに凄く懐いている。

 大丈夫か。多分......レナも喜んでいるし、様子見しようか。

 と、その時僕の気持ちに反応するように「キュイッ!」と、兎(仮)が鳴いた。


 そしてステラはとても羨ましそうに、レナがもふもふしている光景を見ていた。ステラも僕と同じく、いいなあって思ってるんだろうか。


「いいなぁ」


 わかる。もふもふしたいよね。




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