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34/103

~32~ 可能性

 


 ザシュ!!


 ステラの放つ赤の一閃。それはとても鋭く鮮やかに、兎型の魔獣の頭を跳ねた。


 次々と襲いかかるその魔獣は黒い体毛に頭に一本の大きな角を生やし、その脚力により敵の体を貫き致命傷を負わせる、これも沢山の冒険者や旅人の命を奪っている魔物で、名前をデビルラビットと言う。


 ステラは跳んでくるデビルラビットをかわしながらその首に的確にダガーの刃を打つ。ギィッ!と悲鳴をあげ倒される魔獣達。


 体が......!どんどん、軽くなっていく!


 死角から飛んできたデビルラビットの角を掴み、前方から来ていた一匹に投げつける。


 何かしら......見た目のせいでかなり心が痛むのだわ。もふもふ......くっ。


 とても複雑な気持ちになりながら敵の数を減らしてゆく。


 これで、十二匹......!って、多すぎないかしらっ!?


 と、思ったらデビルラビット達がぴょんぴょんと退いていった。ごめんね、と小声で謝るステラ。

 けれど、今の戦闘と前のレッドグリズリーとの戦いで、魔獣とはちゃんと戦える事がわかった。

 ノアと一緒に戦える。ステラは、それがわかった事が嬉しかった。


「やっぱりステラ、君は強いよ。 今のデビルラビットだって、結構強いって有名だし。 けれど、魔法は使わないのかい?」


「え、私、魔法は使えないわ......なんで使えるってわかったのかしら?」


「うん? え、あ......」


 しまった!と言うような表情のアレオス。そして沈黙が流れる。

 そしてアレオスが口を開いた。


「......あー、うん、その。 君がオーク達に捕まった時があっただろ? あの時に僕は人の魂の位置がわかる能力を使ったんだ。 千里眼っていうね」


「その時に君の魂が魔族の色だったから......魔族は皆魔法をつかって戦うから。 君の行方を探るためとはいえ勝手に君の魂を見て魔族だということを知ったのは、ごめん」


「そう......アレオスさんは......私の事が怖くないの?」


「? なんで? 怖くないけど......ああ、そうか」


 なるほどと言うふうにアレオスは頷いた。


「今、この国では魔族は普通に暮らしているんだ。 王都は勿論、町にも魔族がいたりする。 彼らは大体が国の兵だが、その他にも店をしている者や農業している者、色々だ。 皆、普通に暮らしているんだよ......だから君は普通なんだよ」


 私は普通......じゃあ、普通に暮らして行けるの?


「村の生け贄の時も思ったけど、本当にこの国の事知らないんだね。 君が、どこから来たかは知らないけど、そうなっている。 だから......隠さなくても大丈夫なんだよ」


「あ、でも、普通の人間より、戦闘力の高さから来る危険性があるから、そういう意味では厳しい目で見られることはあるかな。 気をつけたほうが良いのも確かだね」


 そうなんだ。でも、それなら......私にかけられている封印魔法の事を聞ける。アレオスなら詳しいかも。

 できれば解いて欲しいのだけど、出来るかな......?


「あの、アレオスさん......私、魔法を封じられているの。 解く方法とかわからないかしら? もっとノアの力になりたいの。 もっと......だから」


「そうなのか。 少し君に施された封印術?魔法かもしれないけど......見てもいいかな? 簡単なモノなら解けるかもしれない」


 やった!これを解くことができれば、魔法でもっとノアを助ける事ができる!


 うん、と私が言うと、アレオスは私の額の前に手出し、目を閉じた。すると光が手に集まる。


 なんか温かい。......あ、お風呂に入りたいのだわ。ずっとはいってない。


「これは......」


 と、アレオスが困惑したような声色で言う。


「どう? 難しい......?」


「難しいなんてレベルじゃないね。 これ、誰にかけられたの? かなり高位の魔法と魔術が複雑に組合わさってる。 とてもじゃないが僕には解除できない......しかし、けれど美しい術式だなぁ」


 アレオスはしきりに、すごいとか美しいとかずっと言っている。よくわからないけれど......という事は要するに魔法を使うことは無理と言うことか。

 と、諦めかけた時、アレオスが言った。


「そうだね。 これを解けるのはかけた本人か......あるいはステラ自身か」


 私?......私が?


「この封印魔法術(仮)は、魔法の上に術がかけられているんだよ。 その術が魔法を覆っているんだけど、厄介なのはこの術の方で、これは呪い......呪術なんだ」


 呪術......成る程、私はやっぱり恨まれていたのだわ。()()()達に。


「その原因を解消できれば呪術の効果は消えるんだ。 あとはベースの魔法なんだけど、これはステラが内包している魔力による。 魔力で、ごり押しできれば壊せると思うんだ。 大きな魔力を内包している、魔族だからこそ出来る方法だけどね」


「わかった。 ありがとう、アレオス」


 御姉様の呪いは解くことは不可能。皆、私の事を嫌いだった。だからこそ私は魔王城を、魔王一族を、魔界を......そして魔王であるお父様に嫌われ、追放されたのだから。


「......薬草、探し再開しましょう」





 ――ステラは魔王に嫌われ追放された。そう思っているが、それは逆であった。

 魔王はステラを追放することで、ステラの命を守っていた。

 ステラは生まれた魔王の子供達の中で突出して強大な魔力と能力を持っていた。しかし、彼女は人を殺せない心の優しい魔族だった。

 それ故に、危険視した者達やその力を妬んだ姉達が、陰でステラを殺そうと計画していたのだった。

 それを知った魔王は娘、愛するステラを迷いの森へと追放した。魔力感知されぬよう封印を施して――



 ――呪いの正体、それは魔王、父親の愛だった――




 ◆◇◆◇◆◇




 ――眠ってしまった。


 さっきはびっくりした。だって、急に目を覚ますんだもん。

 タイミングが悪すぎだ......まさか、額にキスした時におきるなんて。


 ていうか、私、あんなこと......良くないよね。隠れて。

 ステラちゃんがいるのに......。


 お母さんがいなくなって不安定になってるから?


 命がけでお母さんの魂を持ち帰ってくれたから?


 優しいし、強いから......?


 村であんな事があって、お母さんも......それなのに、私。ノアさんの事ばっかり目でおっている。



 私は――



 そうだ。


 あの時、お母さんの魂をかえしてもらったとき......。



 私の中に流れ込んできた、ノアさんの想い。



 ――生きて......負けないで......こんな悲しい結末は、ダメだよ......死ぬな――



 あなたの優しさに触れて、私は。




 ノアさんの事が好きになったんだ。




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