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~26~ 悪人

 


 サリアが刀ゴブリンへと質問投げた時――


 二階からタイミングを見計らっていた紫オークが飛び降りてきてた。紫オークはその大きな斧をサリアの頭目掛け思い切り振り下ろす。


「うおおおォォおおおッ!!!!」


 ――シュパンッッ!!!


 しかしその斧をがサリアの体を割ることは無かった。逆に紫オークの斧が腕ごと宙に飛びテーブルに落ち、血しぶきが辺りを染めた。


「うぬああぁーッ!!」と叫び思わぬ反撃に、着地も出来るはず無く地面へとバランスを崩したまま落下する。


 綺麗なカウンターを決められた紫オークはまるで噴水のように噴き出している腕の付け根を残った手で押さえ、よろめきながら片ひざを立て起き上がる。まだ戦う意志は折れてない。


 すぐさま刀ゴブリンが死角から斬りかかるが、鞭で吹き飛ばされる。刀が粉々に砕け、家具に突っ込み派手な音をたてる。

 それに乗じて、他のゴブリン達もそれぞれの武器を手に襲いかかるが、腹を裂かれ、頭を飛ばされ、頭から体を半分にされ、モノの数秒で命がその鞭の露と消えた。


 オークが問う。


「......お前はいったいなんじゃ? 目的は賞金狙いの魔物殺し? いや、その武器は神器......しかし色合いが勇者の物と違って白い。 ......神徒教会の幹部か?」


 サリアは目を丸くした。


「あら、魔物でもそれなり知識はあるのね、驚いたわ。 そうよ私は神徒教会の使い。 でもこれはただの魔物狩りではないの。 私は貴方達の罪を裁いているの」


「罪......じゃと」


「そう、罪。 今まで沢山の命を生け贄とし奪ってきたでしょう? 生け贄だけではない、貴方達は他にも沢山人の命を奪ってきたはずだわ」





 二人が会話をしている中、睡眠魔法のゴブリンが刀ゴブリンを救出していた。


「お、おい、大丈夫か......!? あいつヤバすぎだろ」


「ああ、ぐっ......がっ......。 す、すまねえ、あの鞭、とんでもねえ威力だ......」


 刀ゴブリンは腹を押さえ、苦痛の表情を浮かべる。そして、すぐに予備で腰に差していた、もう一本の刀を抜き睡眠魔法のゴブリンへと指示をだす。

 怪我を負ったのか呼吸が荒い。


「はあはあ......俺があいつの動きを数秒とめる。 だからお前は、睡眠魔法を使ってくれ」


 え?と、睡眠魔法のゴブリンは思った。俺の魔法を......?


「頼むぞ......お前しかあいつを止められない。 お前の《スリーピングナイト》で、あいつを無効化するんだ......はあッはあ......」


 俺しか?......い、いや、無理だ。と、睡眠魔法のゴブリンは思った。しかし刀ゴブリンの真剣な眼差し、そして「頼むぞ」と言う言葉。

 今まで戦闘では価値の薄い能力だと思っていた《スリーピングナイト》の力を、俺を頼ってくれている。


 ......死ぬかもしれない、恐怖で動けないかもしれない。だって、俺は戦闘なんて全然したことないし。


 でも、この気持ちには応えたい!!



 ゴブリンの中に熱くなるものが確かに生まれた。



 ――やってやる!――



 そして刀ゴブリンは能力、《ファイアエンチャント》で刀を発火させ炎で包み戦闘体制へと入る。




 紫オークがサリアの話に首を傾げた。


「じゃが、お前さんもかなりの血の匂いがするのう。 それは人の血じゃろう? お前がしとることはわしらとなんら変わらないと思うぞ? ......どうじゃ?」


 ――サリアの頭にレナの顔が、悲しみが、苦痛と涙がよぎる。――


「――違うわ。 ......もういい、喋る気力がなくなるくらい哭かせてあげる」


 と、鞭を振るおうと手を振り上げたとき、死角から炎にまみれたゴブリンが突っ込んできた。それに気がついたサリアは急遽ターゲットをその炎を纏うゴブリンへ変更。


 シュパパパッ!!と細切れになるゴブリン。だがサリアは斬る瞬間に気がついた。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()と。


 斬ったのは炎に包まれたゴブリンの死体。


 その陰から、刀ゴブリンが飛び出し《ファイアエンチャント》の力で発火させ炎の刀と化した武器で斬りつける。


 ヒュバッ......ギュルッッ!!


 しかし、ギリギリで刀の持ち手ごと両手を鞭で縛られ、止められてしまう。


「......どこまでも汚らわしいわね! 死体とはいえ仲間でしょう? そんな仲間への辱しめをして平気だなんて、やっぱり魔物ね」


 汚物を見るような眼差しのサリアに、ははっ汚らわしいか、と笑い刀ゴブリンが言葉を返す。


「......そうだ、俺らは命はってんだ。 誰のため? 仲間のためなんだよ。 そうさ、みんな同じだ。 だからよ......」


「なにもしねえですぐに殺されたら、あの世にいった時に死んだあいつらに怒られんだよ!」


「俺がそいつ、その燃やされた死体だったら! 俺の死体でも何でも使えるもんは使って、生き延びろって迷わず言うぜ! 仲間だからなァ!!」


 ギリッと歯軋りをし、勘に触ったサリアは、鞭で縛り付けていた刀ゴブリンの両拳を刀の柄事、グシャッとバラバラにする。

 ぐあああっ!!と両手を失い悲鳴をあげる刀ゴブリン――しかし、そのときサリアは異変に気がついた。


 !? なんだ、これは......。サリアの意識がぐらぐらと揺らぐ。


 会話に意識を取られ、いつの間にか背後にいたゴブリンに触れられていた事に気がつく事が出来なかった。


 よし!!!《スリーピングナイト》!!!かかった!!やったぞ!!


 しかし、サリアの有する凄まじい程の神力で魔力が浸透しにくく、眠りに落ちるのにまだ時間がかりそうであった。


 睡眠ゴブリンとサリアの目が合う。


 私の体に触れている、こいつが術者か!?ならばこいつを殺せば! ――!?


 ヒュンッと、鞭を振ろうとするが、手が震えてうまく動かない。見渡すといつのまにか辺りには紫の煙が漂っていた。

 見ると、紫オークが毒を体から放出している。体が痺れ始めたところを見ると、麻痺毒の可能性が高い。

 眠り魔法に気を取られいつのまにかサリアは毒を吸い込んでいた。


「......あいつが、あのひよっこ勇者がかえた世界を見るまでは死ねねえぞ、お前ら!」


――(死んでいったあいつらの分まで!!)――


 紫オークが叫び士気を高める。勝ち筋が見え、生き残っている二匹のゴブリンはこのまま眠らせれば、イケると思いサリアを見据えた。しかし――


「仕方ないわね。 あまり神力を使いたくはないのだけれど......《聖浄化》」


 そう唱えたサリアの体を青白い炎のようなものが包み大きな光を放つ。

 やがてそれが消え、サリアを蝕む睡眠魔法と毒魔法は青白い炎と共に消滅してしまった。


「はい、残念。 これは体内に侵入した魔力を浄化する聖なる炎......私にその類いの魔法能力は通用しないわ」


 そして、息もつかぬ間に、刀ゴブリンがパンッ!と頭を割られ崩れ落ちた。


 声も出せずに目の前で簡単に殺される、群れで一番強かった刀ゴブリンをみて、睡眠魔法のゴブリンは、ああ、終わったんだ。と自分へと振り下ろされる鞭に目を閉じた。



 ごめんな、皆......ボス。


 ヒュオッ......



 ――ガキィィンッ!!!!




 鋭い音が聞こえ、瞼を開ける。振り上げられた死神の鎌がゴブリンの首にとどく事はなく、目の前のサリアは扉の方へと顔を向けていた。


 鞭の攻撃を弾かれた彼女は驚き、扉の向こうにいる少年を見据える。


「......貴方は」



 そこには、神器の弓を構えた勇者ノアがいた。




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