~25~ 罪人
「あなたは、村長の所の......」
アレオスが話しかけると、使用人はハッとした表情になり失礼しました。そういえば、名前、お教えしていませんでしたね。と、返した。
「私は、この村へ配属された神徒教会の者で、名をサリアと申します。 探しましたよ? 旅人の方」
異様な雰囲気のサリア。彼女がこの儀式を行ったことは明白だ。
こんな状況の村の中で取り乱すこと無く、平然と冷静を保っている。
「どうして、こんな事を......?」
僕は怒りと悲しみで混乱していた。まさかこんな......。
彼女はニコニコと笑いながら、答えてはくれない。代わりに腰にある短刀をゆっくりと抜く。
レナがサリアへと、泣きながら途切れそうなか弱い声で聞いた。
「あなたが......お母さんを、刺したの......どうして」
サリアは少し悲しそうな顔になり、レナの質問には答えてみせた。
「そう......ですね。 貴方のお母様は、未来への力となった......といいましょうか。 うん、貴方の母を失った痛みは私にもわかりますよ。 なので......」
そんなわけないじゃない!とステラが泣きながら怒鳴った。
「わかるのなら、こんなこと......決してしないのだわ! あなたは、こんな事を平気で出来るあなたは......悪魔よ!」
ステラの怒りが頂点に達していた。今までにみたこともない程の怒気をはらんだ表情。今にもその手のダガーで攻撃しそうだ。
僕も同じ気持ちだった。
しかしサリアはしゅんとした表情になり、そうですよね。と言った。
「私のしたことは、もはや何を言ったところで何にもならないでしょう。 ならばせめて、レナさんあなたもお母様の所へ......」
ゆっくりとレナに近づこうとするサリア。
「......近づくな」
どこから出たのかわからない。僕の声は重く殺気に充ちていてサリアを牽制していた。
足が止まったサリアは......これ以上は、出来るなら......もう子供は......とぼそぼそと小声で呟いていた。
アレオスが聞いた。
「神降ろしをしたのは......君なんだね? なぜ儀式に手を染めた? これ程の血を流してまですることなのかい?」
「ええ、それは......勿論です。 この神降ろしによって得た力はともすれば国を変える事だって出来る程ですから。 そう、力が必要なのです。 この歪んだ世界を正すには。 見えますか? この迸る人の命、魂により私の身に降りた《神力》が」
とてつもない程の青い色の神力がサリアの体から蒸気のように立ち昇る。背からは天使を思わせるような双翼が神力により形作られて、羽毛のように光が舞う。
これが人の命、魂で得た力......確かに国を変えられると言う程の力がそこにはあった。
「まずは、国。 生け贄などと言う方法を取り、悲劇を悲しみを生み続けている国王を私は......私達、神徒教会が正します。 うん、大丈夫。 必ず貴方達が住み良い世界を作ります。 大丈夫......大丈夫」
まるで自信に言い聞かせるように、サリアは大丈夫と何度も呟く。
そして、貴方達は見逃しましょうと言い背を向けた。
「今は......そうね、私達の可愛い子達を生け贄として食らった魔物達......やつらを殺さなくては。 ふふっ、たくさん苦しめてあげなくてはね......」
羽を広げ、飛び去るサリア。月光にあてられた彼女の神力の翼が煌めき夜の暗さに光の道を作る。
向こうは......領主、ゴブリンと紫オークの城。彼らを殺す気か!
「アレオスさん、僕はあの人を追いかける。 二人を頼んでいい?」
まって!と僕を呼び止めるアレオス。そして首を横に振り言う。
「ダメだよ! 彼女の力をみただろう!? 村人の数百人の命を取り込んだあの神力は......あれはグライン王国の最強騎士団、王徒十二騎士と同等......いや、それ以上かもしれない!」
「君がもし、殺されでもしたらステラはどうするの!?」
確かに......でも。
「僕は、あの魔物達も大事なんだ。 僕を信じると言ってくれた。 だから助けたい......!」
僕はステラを見た。赤い眼と僕の視線な合わさる。
「ステラ、僕は絶対帰ってくる......信じてくれる?」
少し戸惑い泣きそうな顔になるステラ。しかしこらえ、僕の眼を見据える。
「......絶対よ? ノア、貴方が死んだら私は生きられないわ」
「絶対に、帰って来てね」
言葉を受け取り僕はうんと頷き、サリアの飛び立った方へと走り出す。道はわかる。多分、前より早くたどり着けると思う。
みんな、どうか無事でいて......!
暗闇に消えていくノアを見送り、アレオスは周囲を確認する。魂があれば......この傷なら、僕の能力でなんとかできたが、根こそぎ儀式に使われサリアに吸収されている。
何が、アスクレピオスを宿し者だ......悲しむ子供ひとりも救えない。
アレオスは月を見上げ、その無力感に苛まれた。
◇◆◇◆◇◆
岩でできた城へと歩み寄る、光輝く女。翼がある彼女は神々しく天使のように彼らの眼には映った。
「......お前っ」
外を見張っていたゴブリンはサリアへと話しかけた瞬間、頭を顎から上と下と二つにされた。
使用された武器は、命を糧に村長を器とし作られた《神器の鞭》数メートル先からゴブリンの頭を切り裂いた。
それを遠くで見ていたゴブリンが二匹。対象が一匹は敵と判断し手に持つ短剣で応戦しようと前へでた。もう一匹は増援を呼ぶべく、城内へと駆け込んだ......かに見えたが、既に両足を切られていて、その足が前へ進むことは無かった。
「ぐあああああああっ......!!!」
足を失ったゴブリンの叫びが響き渡る。くすくすと笑うサリア。
「良いわね、魔物の哭き声と言うものは。 もっと......まだまだ、たくさん」
足りない足りない足りない足りない......足りない!!!!
「聞かせてちょうだいね」
◇◆◇◆◇◆
ヒュガッ!――ドオォン!!
城の扉を細切れにし、サリアが侵入してくる。ズルッ......ズルッ......と、両手足を切り落としたゴブリンを引きずり、床には血の道がつくられる。
「あら? 誰もいないの......?」
城内は暗く、音ひとつしない。視線を泳がせるサリア。すると突然背後にいたゴブリンが切りかかる。刀を持つゴブリンだ。
鞭の使用できない懐へと入り込まれていたサリア。だが、瞬時に腰の短剣を抜き刀を受け止めた。
「......ッ!!! この女、戦闘慣れしてやがる!!!」
押し退けられた刀ゴブリンは鞭による追撃が一番怖いことを察知し、遠くへバックステップで逃げる。
その間に、ここが隙と判断したゴブリンが三匹サリアへと突っ込む......が、一瞬でバラバラにされ命が終わり消えた。
そして、周囲の物陰に隠れていたゴブリンを七匹頭を跳ねて見せた。
ドシャッと崩れ落ちるゴブリン達。
刀ゴブリンが刀を構え、サリアを見据える。
「......貴方達のボスはどこかしら?」
サリアが刀ゴブリンに聞いた瞬間......




