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~19~ 紫毒のオーク

 


 村を出て結構歩いた。時間にして一時間くらいかな?

 僕らはベルゴの先導でステラとレナの行方を追っている。ベルゴは二人が拐われたとしたら、領主の城だろうと言うことでそこに向かって歩いている所だ。

 拐われていないにしろ、生け贄がどのみち運ばれてくるなら城に居た方が良いとの判断で村を出た。


 でもアレオスは言っていた。「僕の《千里眼(せんりがん)》って能力を使えば、この村くらいの広さなら一度みた人の魂の居場所を見つけられる。......だからわかるんだけど、ステラもレナも村には居ないね」


 村に魔族が入れば、村を囲っている塀についている警報がなるはず。それが無いということは拐ったのは魔族ではない。

 となると、村長が怪しい。ステラとレナの二人が居なくなったのも村長の屋敷を訪ねてからすぐだったし......。

 って言うか、そんな凄い能力持ってたんだアレオスさん。魔法治療師ってだけでも凄いのに......もしかして名のある人なのかな?


 そんな事を考えていると、遠目に城のようなものを発見した。背の高い草むらがあったので、そこから様子を伺う。

 そして城を見た僕は驚いた。城は結構な大きさで、とても立派だった。細部に装飾もされ、とても魔族の、魔物の住む城とは思えなかった。

 驚きながら僕は言った。


「す、すごい......これが、魔物の城?」


「うん。 魔物といえど、ここら一帯を治める領主の居住施設だからね。 国で作らせた岩の城だ。 ちなみにてっぺんに刺さっているのがグラインの国旗だ。」


 アレオスが説明してくれた。それにベルゴも続く。


「これ以上近づくと奴らの結界に感知される。 ここから内部をさぐれるか?」


 ベルゴはアレオスに顔を向けて聞いた。


「うん、多分......できるかな? 結界の質にもよるんだけど、あの感じは大丈夫かな......ごめん、わかんない。 ダメだったら戦っておくれ」


 と、片目を閉じて舌をぺろりと出したアレオスは、僕がわかったと頷くと、目を閉じ城内部を探りはじめた。

 結界は反応はしてないみたいだけど、油断はできない。


「いたよ。 魔力の低い人らしき魂が二人と、あとは結構な魔力を持っている魔物が十五匹と、多分これが領主だと思うんだけどとんでもなく大きな魔力の魔物が一匹。 二階の玉座に座っているね」


 見つけた!多分ステラとレナだ!


「二人は無事なの!?」


「うーん、どうだろう。 死んではいないから魂が見えるんだと思うけど......動きがないから、眠らされているのかな」


 ノアは考えた。すぐに助けないと殺されるかもしれない。けれど、十五匹もの手練れのゴブリンにそれ以上の力を持つオーク。

 まともに戦えば負ける危険性も......。

「ノア」と、ベルゴが話しかけてくる。


「見せてみろ。 お前の覚悟と領主の器になれるかどうか、その力を」


「......うん、わかった。 ありがとう」


 ベルゴに背を押され、気持ちを新たに戦闘モードへと切り替える。

 僕は城を見据える。まずは......。



 ◇◆◇◆◇◆



 緑色の小鬼、ゴブリンの一匹が城の掃除をし終え、次の仕事に取り掛かろうと考えていた。


 ――さて、と、村からいただいてきた人は、そろそろ俺の力で眠った頃合いだな。すぐに儀式の準備をしないと。

 あの村長、急に呼び出しやがって......まあ、でも人を喰えるなら良い。


 時代が変わり、今、人間を喰うには許可がいる......しかし、国という大きな力にさえ逆らわずに従っていれば、こうして城や住むところを与えてくれて、なに不自由なく生きていける。


 好き放題殺し人を喰えたが、常に殺される可能性の高かった昔と今......どちらが良いんだろうな。

 そんな事をぼんやりと考えていると、後ろから声をかけられた。


「おい、お前さー、生け贄の服なんで毎回脱がさないんだよ? 喰うとき手間だろーが」


 仲間のゴブリンが俺に辟易とした感じで言ってくる。勘弁しろよーと。

 でも服は着せといた方が見栄えいいと思うんだよな。食べるのにも飾り付けって結構、大事じゃないか?

 ......まあ、もめ事は面倒だ。こいつ結構強いし、ここは言うとおりにしよう。


「わかった。 あとで脱がしとくよ」


「ああ、今度もちゃんと脱がしとけよ?」


 しつこいな、わかったっつーの!......はあ、なんで俺の能力もこんな地味な力じゃなくて、皆みたいに炎だしたり、雷だしたり戦闘向きの能力が良かった。

 まあ、ボスはこの触れた相手を眠らせる能力、《スリーピングナイト》を重宝してくれてるけど、それにしたって......。

 眠らせるのは強力だけど、それには時間が必要で、触れて十秒魔力を流し込まないとダメ。まじで使い勝手悪すぎる。

 そしてまた別の仲間のゴブリンが来た。


「おい、ボスが呼んでいる! 玉座の間に集まれ!」


 いや、俺は儀式の用意あるからな。行けない。


「儀式の用意がまだなんだよ。 すまんけど」


「そうか、ならば仕方あるまい」


 今、俺を呼びに来たのは刀と言う武器を使うゴブリンで、触れた物を発火させる能力を持っている。

 多分、俺らゴブリンの中では一番の戦闘力を持っているだろう。

 実際、国の魔族にスカウトされた時もこいつが一番敵を殺していた。


「......なんだろな。 ぱっとしないなあ」


 生け贄の間、行くか。......しかし今日の生け贄は若い女が二人。豪華だな。


「おお、ここにおったか......」


「あ、あれ? ボス!? なぜこんなところに? 集会があるのでは......」


「うむ。 先に貴様にも伝えておこうと思ってな。 儀式の準備を担当する貴様は集会のタイミングに合わないこともある故。 いつもすまないな......」


 ホントにうちのボスは.....魔物の中でも位の小さい俺たちゴブリンだが、うちのボスは良くしてくれる。

 ボスはオークだが、本来オークと言う種族は格上で、いつもゴブリンを奴隷のように働かせ、使う。


 けれど、うちのボスは違う。時には自分から戦場の前へと出て俺たちを守ろうとする。

 生け贄だって一人占めしたりもしない。


 俺たちはボスを信頼し信用し、ボスのためなら命をはれる。ボスが俺たちのために命をはっているように。


 まあ、うちのボスは強いから俺らが命をはるなんて事はないんだけどな。

 猛毒を持つなんて規格外のオークはボス以外いない。

 うちのボスは最強の魔物だ。



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