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~16~ 生け贄

 


 野営地を出て、歩き始め数時間が経った。

 その間、二度ほど魔獣に出くわし、僕とベルゴで難なく討伐できたのだが、ベルゴの強さはまるで次元が違うと思い知らされた。


 その二度の戦闘で、僕はベルゴの戦いかたと動きを追っていたのだが、全身が鎧で覆われているのにも関わらず、まるで踊るかのように華麗に敵を倒していく様は師匠、セルフィを思い出させた。


 この人、セルフィと同じくらい強いのかも......。

 なんて思っていると、視線に気がついた(多分ずっと気がついてたと思う)ベルゴが、僕に話しかける。


「ノア、お前の動きには無駄に力が入っている。 命を懸けた戦い故に体が強ばり、緊張するのはわかるが、それでは強敵の命には届かんぞ」


「でも、死ぬのは怖い......ベルゴは怖くないの?」


「やらねば死ぬ。故に死の恐怖を越えねばならん。」


 死の恐怖を越える......越えられるのか、僕は。


「......しかし逆に、死を恐れない者は強者にはなれない。 そいつらはすぐに死んでしまうからな」


 それから色々とベルゴに戦いの技術を教えてもらいながら、続く道のりを歩いている。

 どうすれば強くなれるのか......きっとベルゴから学べることは、僕のこれからの旅においてとてつもなく大きなモノになる。


 強くなければ、なにも守れないのだから。


 お昼時を少し越えた頃、やっと村が見えた。まだ距離はあったのだが、遠目で村人が二人手を振っているのが見える。

 あの格好的に、農家の人かな。


「こーんにーちはーッ!!」


 ステラが元気よく挨拶をする。遠いから大声になるのもわかるけど、自分が魔族だということ忘れてるんじゃないかと、最近思う。

 あんまり目立たないでほしいけどね!


 村の入り口まで来てみると、大きな畑があり手を振っていた二人はやはり農作業中の農家さんだった。

 そしてその老夫婦の二人は、笑顔で僕らを歓迎してくれた。


「いやいや、旅人さん! 良くこんな辺境の村に来てくれたもんだのう」


「なんにもないけれども、野菜はあるでの。 たくさん食べていとってくれのう」


 アレオスが長距離を歩いていたからか、疲れた声色で訪ねる。


「すみません、この村の宿屋は何処にありますか? (とりあえずゆっくり休みたい)」


「宿屋はなあ、あそこの大きな家がそうじゃ。 あの屋根が赤いの。 こりゃ、レナが喜ぶぞい」


「レナ?」


 誰?と、言うように、僕は疑問を込めて復唱する。


「うむうむ。 あそこの宿屋はなあ、母と子ふたりだけで切り盛りしとるんじゃよ。 その娘が、レナと言ってなあ、お主らと歳が近そうじゃし喜びそうだと思ってのう。 村にはあまり若いのもおらんでの」


 そう言い、僕とステラを見る。

 同い年の子か......女の子。僕よりステラかな。友達になれると嬉しいんだけど。人間の友達......多分、魔族での居場所が無くなったステラには、すごく大事だ。


 ふと、ステラを見るとステラも僕を見ていた。目が合い、彼女はにこっと笑う。

 そしてアレオスが


「ありがとう、とりあえず宿屋があいてるかかな。 行ってみるよ」


 と礼を言って頭を下げた。それに続き、ステラも元気良く「教えてくれて、ありがとうお爺ちゃん、お婆ちゃん!」と笑顔全開で言っていた。

 僕も。


「ありがとう!」......ステラといると元気が移る。多分、気のせいじゃない。


 こんな先の見えない旅だけど、彼女の明るさに助けられて前を向いていられる。


 ありがとう。そう心のなかでステラへと呟いた。



 ◆◇◆◇◆◇



 ――チリーン


 扉を開けると、それに付いていた鈴が来客を知らせる。


「こんにちはー。 誰か居ますかー」


 アレオスは宿屋に入るなり、人気のないカウンターへと呼び掛けた。

 居ないのかな?と、そう思った時、奥の客室と思われる部屋から少女の可愛らしい声が聞こえてきた。


「――え!?あ、はーいっ! ちょーっと、待ってー! 今、行きまー......ぐえっ!?痛ッ......た......」


 見ると、声がしている部屋は、扉があけっぱなしでたぶん掃除とかしているのかな?

 ていうか、明らかに下手踏んだ声がしたんだけど。......大丈夫?


 そして少しして、よろよろとでてきたのは、金髪の小柄な女の子だった。

 深い黒みのある蒼い瞳に、肌は透き通るような白、そして何より......謎の小動物感があった。こう、無条件で守ってあげたくなるようなそんな感じの。......ん?


 隣を見ると、ステラが何かを言いたそうな目でこちらを見ていた。いったいその目は、どういう......。


「えっとー、お客様、ですか? 四名様ですね? 奥の部屋が空いてます!あ、いや、まあ、今は全室空いてますが、此方へどぞどぞ!」


 手招きして一生懸命に身ぶり手振り案内する。

「ありがとう」とアレオスが言い、すぐにステラが話しかけた。


「あなたが、レナさんかしら......?」


 きょとんと、金髪の少女は目を丸くし、頷いた。


「そうですけど、なんで私の名前を知ってるんですか?名前言いましたっけ?」


 僕は答える。


「ううん、僕達がこの村についたとき、村のお爺ちゃんとお婆ちゃんに聞いたんだ。 レナって子が宿屋にいて歳が近そうだから喜ぶんじゃないかーって」


「ああ、そーいうことでしたか! しかし、大切なお客様なので失礼はできません! おそれおおいと言うやつです」


「ううん、私は良かったらお友達になってほしいのだわ......ニーナさんが嫌でなければ、お客さんではなく......あ、もちろん宿泊費はだすわよ!一応言っておくのだわ」


「......ぷっ、あはは。 はっ!ご、ごめんなさい。 ......はい、お客様が良ければ、お友達に」


「ありがとう!とても嬉しいわ!」


 ステラが嬉しそうで嬉しい。もし、隠し通せるのなら、この村でもいいかもしれない。

 少し離れた場所に家を作って住めばバレにくいだろうし。村人も優しそうだし。


 明日にでもステラに聞いてみようかな。


 その時、チリーンと再び扉が開いた。来訪者はレナの母親で、レナが嬉しそうに話し出す。


「あ、お母さん! 今日は珍しい日よ! こんなにお客様が!」


「え、本当に? 最近はお客様も少なかったから、嬉しいわ!」


 食材等、沢山の荷物を抱えたまま、返事をする。レナのお母さんもとても綺麗な人だった。荷物をおろし、僕らに頭を下げる。


「皆様、御越しくださいまして、ありがとうございます。 どうぞごゆっくり」



 ◇◆◇◆◇◆



 食事とお風呂を済ませ、すっかり日も暮れた。食事はレナとお母さんと皆で食べ、ステラはすっかりレナと友達になれたみたいだ。今も一緒にお風呂に入ってるみたいだし。角、見られないように気をつけてって注意してあるけど、大丈夫かな。まあ、ステラの角小さいし髪で隠せるから大丈夫、かな?


 壁が薄いからか、キャッキャと二人の声はしゃいでいるが聞こえる......なんだろうドキドキする。

 ちなみにベルゴは調べ事があると言い夕食前からずっと出掛けて居なかった。


「ただいまーあ。 とっても気持ちよかったのだわ」


「お風呂、あがりました。 すみません、お二人より先に入ってしまって......お客様より先に入るなんて」


 おどおどしているレナにアレオスが、大丈夫だよ~と言い、ね?と、同意を求め僕を見る。

 僕もニコッと笑い答えた。


「うん、大丈夫! ステラもすごく楽しそうだし、ありがとうレナ」


 レナは、湯上がりで火照って赤くなっていた頬を緩ませ、笑顔になる。


「ありがとうございますっ」


 本当に可愛らしいなこの子。


「さて、ノア先に入るかい? お風呂」


「あ、ううん。 アレオスさんが先でいいよ!」


「そっか、ありがとう! いってきます」


 ふらふらとベッドから起き上がり扉を開けアレオスは出ていく。


 ステラのベッドでは、レナと談笑が弾んでいてとても楽しそうだ。髪の毛の話をしているみたいで、撫で合いっこをしている。

 撫でられ気持ち良さそうにしているレナとステラは、なんだろう......うーん。


 なんだ、この気持ち......これは......



  =『尊い』=


 僕は唐突に真理へと到達した。そうか、これが尊いと言う事なんだ。

 見ているだけで幸せになる。見ているだけで......ん?

 二人の着ているものが寝る用のもので、ヒラヒラしているから、なんか見えちゃいけないものが見え......気のせいか。

 と、ずっと見続けていたら枕が飛んできて、ボフッ!と顔面を直撃した。バタリ......。


 その後、ベルゴは戻ってこず、ステラはレナと一緒のベッドで寝た。夜遅くまで二人は話をしていて、夜更かしはよろしくないけれど......微笑ましい限りだ。



 ◇◆◇◆◇◆



 ~翌朝~


 ベルゴが帰ってきたのは朝食のすぐ後で、部屋に入ると普通に居た。

 ドアのベルもなってなかった気がするんだけど、帰って来てるのだから帰って来たんだろう。(?)


 僕は日課である朝の鍛練をして、ステラも一緒にダガーを扱う練習をする。レナはステラの一生懸命な姿をみていた。


 ベルゴは僕たちのそれを眺め時々アドバイスみたいな事をしてくれて、それがとても的確だった。すっごく助かる。

 ちなみにアレオスは部屋で寝てる。


 そして、レナのお母さんが、村の定例集会から帰って来た。この村では毎朝、村長の元へと集まり、簡単な会議が行われているらしく、朝食のすぐあとで出掛けていて今帰って来た。

 あまり時間のかからないと言っていたけど、帰ってくるの結構遅かった気がする。


「お母さん、お帰りなさい! あのね、ステラさんが......」


 と、喋り出すレナの笑顔をかきけすように、母親が口を開いた。


「......レナ、生け贄が決まったの」


 ただならぬ雰囲気。目元が赤くなり生気を失ったかのような彼女をみて、僕らは言葉を出せずにいた。


 生け贄って......?生け贄?




「......お母さん......それって」




「レナ、ごめんなさい......」

 


 頭を抱えて、崩れ落ちた。



「あなたが、生け贄に......。レナが、選ばれてしまったの......」




「え?」



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