~13~ 一方、勇者の里では......
なんでだよ。なんで......俺がこんな目にあってるんだ。
あの日、俺がノアに神器を壊され、勇者としての価値を失った。
それからと言うもの、里での俺へ対しての扱いは酷いものだった。
親は俺をゴミでも見るような目で見てくるし、ノアを一緒にいじめて仲間だと思っていたやつらは皆、ことあるごとに俺を攻撃してくるようになった。
あれほど俺を未来の英雄、最強の勇者と誉め称えていたのに......ゴミ糞どもが......。
そして今、まさに教室で、修行だ!と謎の急な正座をさせられ、三時間がたった。
「反抗的な目だな、アレン? また殴られたいのかよ?」
「ご、ごめんなさい......あ、いや、すみません」
にやりと満足そうに笑うゴーラン。こいつ......俺が神器さえ、もってりゃ......くそ。
ゴーランは大柄の男で、大剣を持つ勇者だ。力も恐ろしく強く、今はもう神器、勇者の資格を無くした俺は逆らえすらしない......。
その時、頭上から大量の水がバシャ!!と降ってきた。
!? ぷあっ......なんだッ!?
「ああ、ごめんなさい。 居たの」
お、桶の水をぶちまけやがったのか......ニーナ......こいつも......。
ニーナは茶髪で後ろでくくり、ポニーテールになっている。レイピアのような神器を使う、女勇者。
常に小馬鹿にしたような態度をとってきやがる、糞女だ。
「水、勿体ないし、せっかくだからそのまま床掃除してよ。 服で床、綺麗にして。ね?」
ま、まじで......?その手の雑巾は使わせてくれないの......?
ゴーランが怒気のはらんだ声で言う。早くやれよと。
俺は寝そべるように、床をずりずりと這った。もはやプライドもなにもなく、攻撃されないように日々過ごしている。
ノア......お前さえいなければ......。
殺してやる。絶対に、俺の人生をめちゃくちゃにしたあいつを......!
あいつを殺せば皆また俺を認めるだろう。最強の神器だかなんだか知らねえが、あの時俺の神器が壊されたのは偶然か、もしくは俺の力が不安定だったからに違いない。
おれのがつよいおれのがつよい。
それに神器なんか無くても俺はあいつを殺せる。大丈夫だ、俺なら......。
その時。
「......うーわ、服、汚れで真っ黒じゃん! きったねー。 近寄んなよ~」
と、ニーナがひきつった顔をして俺に言った。お前がやれっつったんだろうが!!!
流石に頭に血が昇り、反射的に拳が出てしまった。
が、それはニーナには届かなかった。隣に居た男が、出した俺の腕を引き、その勢いを利用する。俺はそのまま綺麗にひっくり返されてしまい宙を舞った。
そしてドンッ!と、地面へ叩き付けられる。背中がとんでもなく痛い。背に走る痛みで、まるで裏返されてしまった亀のように手足をバタバタさせる俺を皆が笑う。
いってえ......!!シン!てめえ!!!
シンもまた勇者の一人で、双剣の神器を使う小柄な男で、こんな風に相手の力を利用して戦うのが上手い。
睨み付ける俺に、シンが言った。
「なあ、アラン。 お前は本当に弱いよな。 戦ってみてわかったんよね。 ノアの方がお前より遥かに、圧倒的に強いって......お前が負けたのは必然なんだよ。 そこ、ちゃんとわかってるの?」
「なっ......んなわけ、ねえ......! 俺の方が......あれはたまたまで......ッ」
口が、まわらねえ......なんでだ?ノアみたいな喋り方に......。
「ふふふ......たまたまね、たまたま」
遠目で見ていたベンジャミンと言う男が笑う。こいつも勇者の一人で、ナイフの神器を使い俺の次に期待されていた勇者だ。
更に後ろから言葉の追撃が来る。凛とした美しい声で彼女は言い放つ。
「バカもここまでくると笑えないわね。 アラン?」
「アルル......」
「君はノアと同じ武器、ロングソードで打ち負けたのよ? それが実力でなくてなんなの?」
この女はアルル。小柄な女勇者で神器は刀。青髪のツインテール。俺の好きな女だった。
今はもう......敵でしかない......。
ゆる、さない......あいつは、あいつだけは。
そうだ、ノアを......あいつを倒して首でも持ってかえれば!
やってやる!この森を出て、そとの世界へと出て、あいつを殺し、この里の連中を後悔させてやる......。
悪魔に魂を売ってでもな。
とにかく、この里を抜け出さねーと。ノアが里にいねえって事は、迷いの森を抜けられたって事だよな?
ノアに出来て俺にできない訳がねえ。
こいつら勇者はあと五日後に、旅立ちの村ダーナムに向かい旅を始める。
勇者の旅立ちが近いせいか、ノアが脱走したせいかはわからんが、里の警備が厳重になってきているからな。
門番なんて見たことない連中も里に出入りし始めているし、早めに出てった方が良い。
でないと、一生この里に良いように使われて終わる。絶対にそうだ。
俺は最強の勇者だぞ?こんなところで終われるかよ!
神器なんかが無くても、俺なら他にきっと何かあるはずだ。
大丈夫だ俺は天才なんだ!やれる!
どんな手を使ってでも、ノアの首を持ち帰ってそして魔王を倒し俺の未来にあったはずの栄光を取り戻す!
手のひらを返した里の連中も、俺の価値を見誤って見捨てた親も、まぐれの偶然でこの俺に勝ち、俺を地獄へと落としたノアも......必ずわからせてやる。
必ずだ!
ドカッ!ぐふっ......!?
後ろから、「邪魔だ、どけよ」とゴーランに蹴り飛ばされた。
くそっ......くそ......ぉ。




