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~11~ ダーナムの村を目指して

 


 そんなことで目的は決まり、僕らは魔族の安心して住める場所を求め旅することになった。


 人と魔族との関係、里では教えてくれなかった世界の現状。

 それは、お前が実際に自分の目でみて感じ、真実を知る方が良いだろうとカイトが言った通り、僕自信で体感し考えるべきことだと思う。


 人と魔族が平和に暮らせるかどうか。


 国が魔族と共存していると言う噂に、生け贄を捧げているという話し。

 そういう形で成り立つ国に、住まう人々に平和があるのか......そして、僕らの行きたい場所は......居場所は見つかるのか。


 不安と希望が入り交じる。


 そして最後にひとつ、カイトが忠告してくれた。「ノア。お前の強さはかなりのものだ。だから利用しようとする者が必ずでてくるだろう......気をつけろよ」と。


 僕とステラは、新たな思いを胸に、眠りについたのだった。


 ステラはシウの部屋へ、僕はカイト達の男部屋で夢の中へと旅立った。


 

 ◆◇◆◇◆◇



 ......小鳥の(さえ)ずりが聞こえる。朝か。


 ん?


 何か腕にしがみついてる......?

 ......柔らかいものが?これは......




 ――ああ、ステラか。


 !?


 いや、ステラ!?なんでッ!?


 目覚めるとステラが僕の腕を抱き締めて寝ていた。いや、胸胸胸ッ!!柔らかくて大きなモノが当たってるんだけど!!

 ど、どどど、どういうこと!?ステラは別の部屋でシウさんと寝てたはずじゃ!?

 昨日、寝るとき部屋に入るのも見てたし!なんで!?


「......ん。 あ、おはよう、ノア」


 眠気眼(ねむけまなこ)で目を擦りこちらを見る。


「お、おはよう......なんでここで寝てるの......?」


 あー、うー......と、ステラが赤面し言いよどむ。そして理由を述べた。


「......ノアが居ないと、寂しくて。 ごめんなさい」


 上目遣いでこちらを、ちらちらと見てくる。反則だと思う、それは。



 ◆◇◆◇◆◇



 翌朝、部屋をでると、カイト達が旅に必要な物を揃えてくれていた。

 ステラには魔族の特徴である角を隠す為に、フード付きの赤い上着と肩からかけるタイプの小さな白い鞄。

 僕にもこの地方の旅人が好んで着るという黒いポンチョとリュックにツバの付いた黒い帽子をくれた。

 似合ってんじゃーん!とシウが僕らを見て褒める。なんだか照れる......。

 他にも色々と困らないように、「少しだけど持っていけ」とお金(通貨=リーン)もくれて、本当に感謝してもしきれない。


「......カイトさん。 こんなに良くしてくれて......ありがとう。 でも、バレたら里で怒られるんじゃ?」


「大丈夫だ。 バレやしないから、心配するな......けど、そのかわり約束しろ」


「絶対に死ぬなよ」


 カイトが言うと、ジタナイが「ははっ」と笑いながら言った。


「死なねーだろ。 あんだけ強いんだからよ。 まあ、気をつけてな」


 ジーノも頷き、少し微笑みながら。言葉を口にする。


「そうだな。 しかし油断だけはするなよ。 本当の命のやり取りでは、驚くほど簡単にそれが失われる......またお前達の元気な姿を見せてくれ」


 エールをくれる皆に僕は感謝の気持ちを込め、笑顔で答える。


「うん、カイトさん、シウさん、ジタナイさん、ジーノさん......皆ありがとう! 今度、必ず皆にお礼をしにくるね!」


 ステラも感謝の言葉を述べ、想いを伝える。


「皆、お風呂もご飯も、お家にまで泊めてくれて......本当に良くしてくれて、ありがとう。 シウさん、お話しとても楽しかったわ。 またお話ししてね」


 にこにこしながら話すステラに対して、シウは悪戯に言う。


「あら、次はのろけ話をきかされるのかしら。 楽しみね。 期待しているわ」


 顔を赤くするステラ。のろけ話しってなんだろうと思ったけど、二人が仲良く笑い合っている姿を見ていると、そんな疑問はすぐに消えてしまった。

 なんだか本当に姉妹みたいだ。


「うふふ、また会えるのを楽しみにしてるわね」ステラの頭をなでるシウ。ふにゅうと気持ち良さそうに目を閉じなでられるステラ。


 里の伝令役が来る可能性があるため、道案内はカイトのみ。

 だから、他の三人とはここでお別れだ。


 惜しむように寂しさが入り混じる笑顔を交わし、ステラも泣きそうになっている。

 いや、少し泣いてた。僕も寂しい。


 ――さて、森の出口まで案内しようか。そう言いカイトは扉を開けた。



 ◆◇◆◇◆◇



「出口だわっ!」とステラが嬉々と叫ぶ。森の向こうに広々とした草原が見える。

 な、長かった......。


 森の出口までは結構あって、三時間くらいかかった。でもカイトが言うには、出口に一番近いところでこの時間らしい。

 この森めちゃくちゃ広かったんだな......。


 森から出ると道が続いていた。カイトが道の先を指で示し、説明する。


「この道沿いに十数キロ北へ行くと、ダーナムの村がある。

 言ってなかったが、そこはそれぞれの国の使者が時期をみて、里で鍛練し育った勇者を勧誘しにくる場所なんだ。

 勇者にとっては旅立ちの村でもある」


 旅立ちの、村......。


「まあ、時期は少し早いから、里の勇者は居ないし、お前が勇者だとわかるやつもいない。 その点は安心していい」


「だが、家でも言った通り、勇者はその戦闘力がある故に色々な事に巻き込まれやすい......くれぐれも気を付けろよ」


 心配してくれているカイトに心を込めてお礼を言う。


「うん、本当にありがとう、カイトに......皆に会えて良かった」


 ああ、また会える日を楽しみにしている。じゃあな。と、カイトに肩をポンポンと軽く叩かれ、僕は頷く。

 そして来た道へとカイトは帰って行った。


 二人になった僕達は、言われた通りの道を行く。ここからは迷いの森と違って魔物や獣が出るかもしれない。気をつけないと......。


 道中、ステラに負担をかけないよう定期的に休憩をとりながら進み、昼食用にシウが持たせてくれたハクトの卵巻きを食べた。


 この料理は、ハクトと呼ばれる白い鳥の卵に少量の砂糖を加えかきまぜ、バターをひいた丸形の鉄板に流し込んで、焼き固まる前にくるくると巻き棒状にした物。

 ハクトの卵は黄身まで白いのが特徴で、完成した料理は焼きあとは所々あるけど、美しい程の純白だ。

 そして、その卵巻きを、瓶に入れてくれたウラムラ蜂という蜂の作る蜂蜜をつけて食べる。


 食感は泡のようにふわふわで、ウラムラ蜂の蜂蜜は甘さも控えめでいて美味しい。

 これ食べると、昔お母さんが作ってくれたのを思い出すな。


 ステラはとても幸せなのだわ!と言わんばかりの満足そうな顔でむしゃむしゃと食べていた。


「――ああ、幸せなのだわッ!」


 っていうか、言った。今、言った。



 のんびりとしたダーナムの村を目指す旅が始まった。




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