~10~ 人と魔族と
シウとステラがお風呂からあがり、僕たちが入る事になる。
なんだか楽しそうな声が響いていて、ステラの笑い声も聞こえてきて、僕はなんとなく胸いっぱいに幸せな気持ちになり、嬉しかった。
カイトが先に入って良いぞと、言うのでありがたく先に入る。
流石に体の小さな女性陣ならともかく、男が狭いお風呂に入るのもあれなので一人ずつ入る。
そしてお風呂で疲れと汚れを流し、カイトが用意してくれた着替えを着る。
体格が違うからぶかぶかだったけれど、着替えまで貸してくれて感謝しかない。......すんすん。服からはほのかにカイトの匂いがする......変態かっ!
調理場ではシウとステラ、ジーノが夕食の用意をしていた。シウとジーノがせっせと食材と調理をするなかステラはほぼ見学みたいな感じで、時折、食器の用意をしたりお手伝いしていた。
メニューは、オニオンスライス等の野菜たっぷりのサラダと、細長いパンに切れ目にバターを詰めるように、これでもかと塗り、そこにウインナーを挟み込む。
火の魔石を使い、いっきに熱を入れ焼き上げ、パンとウインナーが焼けた匂いが胃袋を鋭く刺激する。
そこにトドメと言わんばかりのチーズを振りかける。熱でとけだしたそれが見た目的にも、美味しいぞ!熱いうちに早く食べろ!と訴えかけてくるようだ。
パンが焼かれた辺りから、僕とステラはもはやそれ以外目に入ってなかった。
ジタナイがお風呂から出てきたのを見て、先に食べてて良いぞとシウに言い残し、ジーノがお風呂へ。僕たちがお腹すかせてると思って先に食べててって言ったのかな......?
森で一緒に歩いてるときもそうだったけど、ジーノは僕たちに疲れてないかとか、怪我はないかとか話しかけてくれて、気を遣ってくれていた。
ジーノはとても優しい人なんだと思った。
美味しそうな食事に、熱烈な視線を送る僕とステラをシウが見て、ふふっと微笑む。
カイトが頷き、シウが「めしあがれ」と言うと、二人とも満面の笑みでサラダとウインナーがサンドされたパンを口いっぱいに頬張る。
溢れ出すソーセージの肉汁と、とろとろのチーズに風味豊かなパンのコンビネーションが舌を直撃し、思わず唸る。
「美味しい!!!」「幸せなのだわーっ!!!」
僕とステラは笑顔を爆発させていた。
◇◆◇◆◇◆
食事が終わり、カイトは僕たちに、これからどうするんだと聞いた。
これから......ステラを連れてとにかく里をでなきゃと思って、ここまで来たけど、そうだ。これからどうしよう。
漠然と考えていたのは、あるかはわからないけれど、魔族が迫害されない場所に行きそこで暮らす。
ステラが魔族に拒まれてしまっている以上、魔界へは帰らせられないし、帰るのも心配だ。
考え込む様を見てカイトが言葉を投げ掛ける。
「......考えて無かったか。 まあ、逃げるようにして出た来たんだ。 仕方ない」
「ひとつ聞いておきたいんだが、お前は魔王を倒しに行く気は無いのか?」
「......僕は、どうしたら良いのかわからない。 でも」
「思っているのは、ステラを守っていく上で戦わなければならないのであれば......戦うよ」
真剣な眼差しで聞くカイト達。多分、彼等は僕に魔王を倒して欲しいと思っているだろう。
と、思ったんだけど......。
「そうか。 わかった。 お前がどれだけステラを大事に思っているのか......」
「おそらく......あるぞ、魔族が差別されない場所」
「え?」
予想外の言葉に、言葉を失う。魔族が......差別されない?
驚く僕とステラに、カイトは目を閉じ続けた。
「まあ、あるかもしれないって話しだ。 現にここから一番近い王都グラインでは魔族が何食わぬ顔で表を歩いているし、軍を束ねている長も魔族だって話だ」
「ホ、ホントに......? じゃあそこでなら」
ステラは普通に暮らせる!やった!と、思った矢先にカイトはやめといた方がいいと言った。
あくびをしながら、ジタナイが補足するように言う。
「あの国には出来るだけ近づかない方がいいぞ。 入ったら出られないし、噂によると......」
「魔族を束ねるために、国民から人間の生け贄を定期的に献上しているらしい。 噂だけどな」
僕は背筋が凍った。い、生け贄......?
「ひとつに、国同士の争いがあげられる。 魔王の城に近い二つの国は他の国と争っている暇も余裕も無いが、その他の国は違う。 日夜、国同士で牽制をしあい、酷くなれば戦争を仕掛け領土を広げようとしている。 そこで戦力として使える魔族に戦って下さいとお願いをするんだ。 その為の生け贄、だ」
ジーノが深刻な顔をして頷く。
「未だに魔王を討伐できないのは、この人間同士の争い......国の戦争も大きな原因になっているんだ。 ちなみにその戦争には勇者も使われ、魔王討伐を目指す前に命を落とすこともある......酷い話だよ」
初めて聞く話し......しかも、恐ろしくも戦慄するような内容の世界情勢の一端を聞かされ、僕は混乱していた。
里では、国々に選ばれ、そこで魔王討伐を目指すとしか聞いてない。なんで教えてくれなかったんだろう......。
けれど、希望も見えた。
魔族が差別されない場所もあるということ!
「......わかったよ。 ありがとう。 でも、魔族が差別されない場所も確かに存在するんだね。 それじゃあそこを目指して旅をするよ」
僕はステラの方へと目を向ける。それで良いかな?と聞くと、ノアが良いなら......と言い、困ったように微笑んだ。
きっと僕に気を遣っているんだ。察した僕はステラに笑いかける。
「大丈夫、僕が守るから」
ジタナイとジーノがニヤリと笑って、シウの顔が赤らんでいた。カイトは真顔だった。
「あり......がとう」
ステラが顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに言う。
僕も言った後に、あ、僕すごい恥ずかしいこと言ったこれ......と思ったけど、もう遅かったので顔に表さないように頑張った。
......。
や、やっぱりだめだ......恥ずか死ぬ......。




