~100~ 旅の始まり
あれから数ヶ月、俺は旅の支度を始めていた。新たな戦いの場に赴くべく、仲間を集め始めたのだが流石に事が事だったので、それは難航していた。
声は掛けているが返事がまだ......そんな状態で早数ヶ月、と言った所だった。
まあ、行き先が魔界でしかも魔王城への旅路だからな。最悪、俺とステラの二人旅か......旅の目的地が魔王城じゃなきゃ、ステラとの二人旅は望む所だったんだけど。
「ノア! おはよう。 ごめんなさい、ナツメは見つからないのだわ......」
「あ、ステラ。 おはよう。 そっか、ステラが強いって言っていたから、お願いしたかったんだけど......仕方ないか」
キラージャック。霧を使う暗殺者。彼女はステラとレナの友達で、その戦闘力は凄まじい。
俺は会ったことは無いんだけど、数年前の王都では名のある戦士や、力のある騎士などを殺して回っていたと言う。
十二騎士の活動記録にも残っていて、その実力は十二騎士に相当すると書かれている程。
「......あれから全然姿を見ない。 どこにいるのかな、ナツメ」
キィン――!! カァーン!!
王都から遥か南にある町、シンダイ。その周辺にある廃墟の一つで火花を散らす二つの影。
「――っと、危ない!」
彼女の目の前を剣の軌道が通りすぎた。
「よし、オッケー。 良い動きだったよ。 しかし、どんどん上達していくね......カイン」
カインと呼ばれる男は、剣を鞘に納め静に笑う。
「ナツメさん。 それはあなたの教え方が良いからですよ。 ありがとうございます」
「じゃあ、この辺で逃がしてくれないかな」
「それは出来ません。 あなたは殺人鬼だ。 いくら命の恩人とは言え見逃す訳には......私は亡き者とされ除隊されていますが、一応騎士ですから。 と、言うより、命の恩人にこれ以上罪は重ねさせれないのが本音です」
「ああ、うん。 はあ、本当に面倒な奴を助けちゃったなあ......」
何度も逃げようとしていたナツメだが、このカインと言う男は必ずナツメに追い付き捕らえてしまう。
そんな事を繰り返し、この町へと二人は訪れていた。
しかし、もはやナツメも逃げることを半ば諦め、逆にその才能を認めると共に稽古をつけるまでに至っている。
しかし、カイン......身体能力自体はそれ程高くは無いんだよね。
なのに、私の攻撃が予測されかわされる。それどころかカウンターを的確に入れてくる......とてつもない違和感。
これまで戦ってきたどのタイプにも属さない、おかしな力。これは一体......。
そう言えば、カインはあの時死にかけていた。と言うより、体は爆発で吹き飛び、もう死を待つだけの状態だったのに、再び戻ると傷一つない体で倒れていた。
あの時の事を聞いても記憶が無いらしく、それも嘘をついている感じがしない。
いったいあの時、何があったんだろう。この違和感の正体に関係が......あるのかな。
「ナツメさんは、これから王都へ戻るんですか?」
カインが私に聞く。王都ねえ、もう荒れ果てて私が楽しめるような感じもないし......ああ、ノアって子とは戦ってみたかったな。
ベルフェゴール......魔界でも最強の七人と言われている、七つの大罪の一人。それを倒した十二騎士。とっても強いんだろな。
でも、まあ、彼はステラとレナの大切な人だからね。私も好きになってしまったら大変だ。殺したくなるから。
そんな感じで私は王都には戻れない。ステラやレナにはもう会わない方が良い。そう本能的に感じるようになっていた。
「王都にはもう戻らないかな。 カイン、君は戻るだろ? その腕があればまた国王騎士軍でも入れる。 それどころか、十二騎士だっていけるんじゃないかな?」
「......いや、私は。 確かに王徒十二騎士には憧れた事はあったけれど、人を救うのに必須なモノではない。 だから私も旅をしようと思います。 ナツメさん、あなたの旅に同行してもいいで「やだ!」」
カインが言い終わる前に言葉尻を刺した。嫌だ、絶対に嫌だ!
「何でよ! 今、王都困ってるんだよ!? 人いねえって、戦力足りねえって! それを見捨てるの!?」
「確かに! けれど、先に私を見捨てたのは軍の方なので!」
「子供か? 拗ねてないでさあー」
このままじゃ......このカインにつきまとわれる旅なんて、絶対全然楽しくない!
だって人殺せないんだよ?そんなんむーーりーーーー!!!!
隙見て全力でまかないとな、これは。
~その遥か東、アインの森~
ボロボロの黒いフードを被った男が、倒れている。彼は空を見上げ呆けていた。
あー、良い天気だなあ。俺はさ、雨の日が好きなんだよ。でもたまには快晴ってーのも良いなあ。
見る角度?つーのか?視点が違えば色々と変わるもんだよな。
男は体をさする。まるで黒い蛇が巻き付き、身体中から突き出てきたかのような焼け跡と傷口。
「あいつ、ふひっ。 すげー強くなってたなあ......どうしてあれだけ強くなれたんだ? 俺とあいつで、何が違う? ......何が」
男はあれから考えていた。その強さの秘密と理由。どうすれば自分にもそれが手に入れられるのか。
そして、出した答えは――
「同じ事、したら何かわかんのかな......。 あいつがしてきたこと......それが出来れば、俺も同じくらい強くなれる、のか?」
むくりと背を起こし、腕を組む。そして、うん。と、一つ頷いた。
「旅でもすっか。 ふひっ」
立ち上がり、ふらふらと歩き出す。目的地も決めていないが、何処に辿り着くかもわからないが、それは確かにノアへと迫る一歩だった。
彼が後にした場所、ねていた周囲には無数の死体。魔獣の亡骸があった。
「ノア、こっち!」
人混みの中、背に声を受け振り向くとそこには頭にリンドを乗せたレナがいた。
「あ、レナ! 良かった! すごい人混みだね」
「ね! あ、ステラ! こんばんは!」
「レナ、こんばんは! これは、本当にすごい人混み......人の波にようのだわ」
今、俺達は王都でおこなわれる祭りに来ていた。あの日、内乱の起きた日から初めてのお祭りで、また王都が再び立ち上がった日とされた今日、復興祭と呼ばれる祭りが開催された。
あの日から、王都や他の都市、そして町や村から魔族の姿は激減し、彼等が何処に行ったのかと言うと、この王都へ集められ保護と言う名目ではあるが、実のところ全て管理下に置いておきたいと言ったところだ。
ちなみに集められたのは力のある危険度の高い魔族。戦闘力の低くいものは普通の生活を送っている。
勿論、監視下には置かれているが。
この国は今や魔族の住みにくい国になってしまったのだ。
ドーン!!!
花火が打ち上がった。黄色と赤の火花が夜空を彩る。
「あー! 始まっちゃった! 早く早く! 向こうにカイトさん達が待ってるの!」
「キュキューウ!!」
レナが慌てて手をぶんぶんと振り回してる。危ないからやめなさい。
あとリンドが可愛い。そんなに尻尾ぶんぶんふって......お前、やっぱり可愛いな。
「ノア、ステラ、レナ! こんばんは! 遅くなってごめんなさい」
人の山をかき分けて現れたのは、よく幼女と間違われる十二騎士
の一人、キアリク、キアだ。
「スゴいわね、花火。 とても綺麗」
「キアさん、あっち! あっちいくよ!」
と、レナな慌てている。
「あ、ああ、ごめんね、レナ。 行こう」
キアはレナの事を妹のように見ている。それは直接聞いたことも無いのだけれど、接しかたでなんとなくわかる。
例えば、食事の際に食べ物を皿にとってあげたり、お菓子を作ってあげたり、勉強を教えたり......。
ちなみにステラもキアに甘えたりしている。見た目は幼いが、流石は十二騎士に選ばれる人である。
かなりしっかりとしていて、頼れる女性なのだ。
前の方にレナとステラが二人で人混みをかき分け進む。俺とキアは後をついていく形になっている。
キアの少し後ろを歩きながら、彼女について物思いに更けていると、俺の視線に気がついた。
「......な、なに? じーっと見て。 これ、欲しいの?」
彼女は手に持っていた飴を差し出す。透明な飴で、中にはベリーの粒が幾つか入っている。
色合いがとても綺麗だ。
「あ、いやいや。 ごめん、やっぱりキアは頼りになるなって。 色々と思い出してた」
「......急に何?」
「ううん。 俺はこの王都に連れてこられて、キアが居てくれて本当に良かったと思ってる......君が居てくれたから、俺は今もこうして此処に居るんだ」
「それは......私だって。 ノア、あなたに会うまで私はこんなんじゃ無かったし」
花火の音でキアの話が聞き取れなかった。
「え、なに? ごめん、花火の音が......」
少しかがんで顔を近づけると、キアは俺の額に柔らかい唇を当てた。
「......ノア、あなたが私を変えたんだ。 ......好きだよ」
顔が赤く染まる。これは花火の光が赤いからだけでは無いだろう。
「......あ、お、俺は」
と、何かを返答しようとする俺の唇にキアは人差し指を押し付け、笑顔で言う。
「黙れ。 ......わかってるし」
「......あ、は......はい」
キアは優しく頭をポンポンと手で撫で、「うん」と一言いいまた歩き出した。
ドキドキが止まらない。
「――お? おい、おせーぞ、ノア!!」
「ごめんなさい、待たせた」
やっとの思いで辿り着いた待ち合わせの場。そこにはカイト、ジタナイ、シウ、ジーノ......そして、フローラとバーナルが居た。
バーナルとジタナイはもう泥酔状態だった。え、まだ始まってそんなたってなくね?
そう思いながら見ていた俺の、怪訝そうな顔を察知してフローラが言った。
「この二人、昨日の夜からずっと呑んでんのよ......本当にどうしようもないわよね」
「き、昨日の!? 嘘でしょ!?」
「本当よ。 私とシウも昨日見ているのだわ」
「これがアル中......ステラ、レナ、こうなってはダメよ。 こんな大人になっては、ね」
と、ステラとシウが言い、ジーノが笑う。
「はっはっは! 言われてるぞお前ら」
「うるせえ! ジーノ、裏切り者め! お前も呑めや! バーナル、押さえてくれ!」
ジタナイがバーナルに指示を出す。するとバーナルは元気よく「おう!」と応じ、ジーノの背後へ回り込む。
「まてまて、お前ら......暴れんなよ! 花火! 花火見れよ」
カイトが二人を止めた。そんな一連の流れに皆が笑う。
ははっ......なんだか、家族みたいだ。
美しい花ノ火の間に星が流れた。
~数ヶ月後~
さて、と王が言う。これから起きることは理解している。俺と、俺が集めた三人に魔王討伐の命が下されるのだ。
王の間には、人が集まりその命令の下る時を皆が待っていた。しかし、それは表向きのものであり、俺達の本当の目的は魔王との対話。
ともすれば魔王討伐より難しいのかもしれないが、王は魔王と会ったことがあり、話し合いによる現状の解決が出来る可能性があると言っていた。
そのひとつにステラの存在と、ふたつに魔族であり人を強く憎んでいたはずのベルゴが人との愛を見つけた事がある。
魔族と人は同じだった......ならば、手を取り合える可能性もある。
争い、人が人と戦い国を創る事が出来たように、憎しみを終わらせる事も......きっと。
王の話が終わろうとしている。そして、任命式。
「――であり、この作戦が成功すれば、各国からの注目を浴び、名誉と地位を確立できよう。 皆のもの、異存はあるか?」
王がこの作戦の賛否を確認。事前の幹部投票にて可否は決定しており、これは最終的な確認となる。
「だめよ」
と、黒いドレスの女が言った。いつの間にか後ろの方にいて、まるで影、闇から溶け出てきたかのような印象だ。
彼女の名は、マーリン。この国を愛する魔術師であり魔女だ。
「ノアの神器には、最強の証が現れていた......皆、この人を行かせては行けないわ。 彼が居ればこの国は安泰なのよ? 彼が居れば......魔族の襲撃にも対応できる」
「最強の証?」「ほ、本当か......」「確かに、王と彼が、二人でこの国を守れば......」
ざわざわ......
マーリンが僕にベルゴを倒させたかった理由はこれか。この国の英雄に仕立てあげ、縛り、守護者として置く。
成る程......だったら、俺にも考えがある。
俺は旅の仲間に選び誘った三人に目配せした。
パーティーメンバーは
ノア・チェシャ・ハートキャット
ステラ・アリシアス
ユリウス・クイーン
ウリアラ・ハク・ラビット
さあ、行くぞ。と、合図を送る。実はこの展開、王が予測していたのだ。彼女が姿を現し、確実に捕縛できるタイミング......それを作り上げた。
王はマーリンの動きを先読みし、彼女を剣で牽制し他十二騎士と共に捕らえる。
「マーリン、これがあの時の礼だ」
「! ああ、成る程やるようになったわね、流石はこの国の担い手。 けれど! ......ノア! 戻って来て! あなたの力は、この国を守る為にある! お願い」
マーリンはノアへと素直にお願いをした。動きを止められた彼女にはこれしか出来ない、そして、これがノアには一番効くとわかっていての手段だった。
俺は答える。それは、決まりきっていた答え。
「嫌です、俺は......」
そう、僕は可愛い魔王の娘ステラと。
「旅に出ます!」
一気に城を駆け抜ける、四人。
このパーティーが後に世界を変える伝説の四人になることを、今は誰も知らない。
~第一部・おわり~
今連載させて頂いている、【落ちこぼれ勇者と追放された魔王の娘】はこの100話で第一部終了です。完結とさせていただきます!
続きの第二部は軽く書き留めてから7月中に新たな作品として、連載し始めようと思います。
日にちは決まり次第、追って活動報告にてお知らせします!
ちなみにタイトルは【落ちこぼれ勇者と追放された魔王の娘】で、サブタイトルは変えます!
ノアとステラの新たな冒険にまたお付き合い下さると嬉しいです!
よろしくお願いいたします!φ(゜゜)ノ
ちなみに、100話到達記念とpv100000到達記念の短編を新たに始める連載の方でやろうと思っているので、よろしければお願いいたします。
ここまで続けてこられたのは、読んでくださった皆様のおかげです。
そして何よりも大きな力となったのは、ブックマークや評価をつけてくださった皆様です。
心から感謝しています。ありがとうございますφ(゜゜)ノ
もしよろしければ、ブクマと評価をつけていっていただけると嬉しいです!
今後の作品へと役立てさせて頂きます!
沢山読んでくれてありがとうございました!
では、また!φ(゜゜)ノ




