~8~ 嘘と真実
ノアが杖使いの女性の攻撃を剣で受ける。狙い済ましたように、また弓による援護射撃がくるが、ノアは最小限の動きで避け、杖による連撃を受け流し続けている。
――ジタナイ(だからッ! なんで俺の弓を避けられるんだ!? 場所も変えてるし、気配も消しきってる。 殺気だって漏らしてない......あいつ、なにかの能力があるのか!?)――
盾の男が再度突進を試みるが、杖使いの女性が巻き添えをくらわないように引いたのをノアは見逃さなかった。
突進してきた男の盾に剣先を当て、体を半回転させながら受け流す。そしてその勢いを使い、男の首筋に剣の持ち手で打撃を当てる。
気絶した盾の男は惰性で数歩前へ進み、崩れ落ちた。
仲間が倒された事で、杖使いの女性が同様し動きが鈍る。
「うそ......!? やばッ!!」
一瞬で杖使いへと距離を詰め、右足をおもいきり踏み込み体重を乗せる。そのまま両手持ちにしたロングソードを下から斬り上げ、カァーンッ!!と音が響き杖が真っ二つになった。
「......な、あっ......」
杖使いの女性が戦意を失い、化け物でも見たような表情を浮かべへたりと座り込んだ。
......こ、これは、すごいのだわ。と、ステラは小さく言葉を漏らし、ぽかーんと口を開けている。
――カイト(......なぜこんなにも実戦慣れしてるんだ......里の話しは定期的にこちらにも入ってきているが、これ程の勇者が育っているなんて聞いていないぞ)――
――ジタナイ(俺の弓が通用しない......だと? こ、こんな子供に......十数年もの月日を費やした俺の弓が......?)――
カイトが槍を構える。それに応じるようにノアも剣を構え、考える。
おそらく、弓の人は僕が隙を見せる時を予想し狙っている。なら......
先手はノア。突進するノアにあわせカイトが槍で突きを繰り出す。その滑らかでいて鋭い突きは、国の上級騎士ですら目で追う事も出来ない......しかしノアは違った。
その異常な反応速度で剣を使い突きの軌道をそらしそのまま槍の側面を滑らす。
カイトの懐へと入ると槍を弾き、首筋を狙う。――そこを狙い済まし、矢が飛んでくる。
――ジタナイ(動き出し......動作中を狙った! これは絶対に避けられない!!)――
パンッ!!!
ノアは飛んで来た矢を空いている手で掴んでみせた。
――そこか!やっと見つけた!弓を先に倒す......また居場所がわからなくなったら面倒だ!
「――待て!」
カイトが槍をその場に置き、両手をあげて言う。その目を見るに、もう戦闘の意志は無いとわかった。
「俺達ではお前には勝てない」
するとノアが向かおうとしていた場所、草むらから弓を持った男が現れる。
「......お前、すげえな。 なんで俺の矢が避けれたんだ?」
ノアはきょとんとした顔で答えた。
「え、だって矢が飛んで来たら音がするでしょ?」
「......は?」
「だから避けただけだよ」
口を開いたまま弓使いの人が固まった。ど、どうしたんだろう......。
ぷっ......はっはっは!と、カイトが笑いだす。 すると、いつの間にか意識を取り戻していた盾使いの人が言う。
「お前、ノアと言ったか。 お前はその力を持ってすれば、俺達を殺そうと思えば殺すことができたはずだ。その方が楽だし、追ってこられる心配も無くなった。 なぜそうしなかった?」
「だって、殺す必要なんてないから......それにカイトさん達だってもっとやりようはあったはずだよ。 それは、それをしなかったのは僕が勇者だからっていうのもあったかもしれない」
「でも、戦う前に言ってた事。 僕のお母さんの事......あれは嘘じゃなかった。」
カイトは腕を組みノアに聞く。
「なぜそんな事がわかる? お前を懐柔する為の出任せかもしれないぞ?」
「......僕は、里でずっと虐げられてきた。 だから、そういうのはわかる。」
「でも、カイトは本当に心配してくれていた。......そこの女の人も」
カイトは深く息を吐くと、仲間達に目配せした。
「......これでも里を十年近く守り続けてきたんだがな。 これ程簡単に追い詰められるとは」
目を瞑り、少しの沈黙の後。ノアとステラを順に見た。
「......お前ら、ノアと......ステラだったか。 魔獣の類いがいないとは言え、暗くなった森を行くのは危険だぞ。 信用できるならだが......俺達が寝泊まりしている家に来るか?」
ノアはステラの顔をみた。ステラは頷く。
「ありがとう、カイトさん!」
そしてカイトはずっと引っ掛かっていた事を聞いた。
「......そういえば、ノア。 お前は俺達が全員で四人だとわかっていたのか?」
首を横に振るノア。
「僕は、師匠に色んな戦いかたを教わったんだ。 一対一は勿論、多数を相手にする戦いかたも」
得意気に語るノアにカイトは恐る恐る聞いた。
「お前......もしかして、どれだけ敵がいようと、どんな相手が出てこようと、勝てると思っていたのか......」
ノアはにっこり微笑んで、頷いた。
「末恐ろしい奴だな......お前」
と、ジタナイがひきつった笑顔を浮かべていた。




