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コロナ禍の健太の日記  作者: 蔓草登上
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下心の豪邸 完

挿絵(By みてみん)

荷物を車に積めてくれた 中村くんに お礼を言うと、寿樹は村長に惜しまれながら出て来た。

寿樹にくっついたりベトベトする行為は止めて欲しい。と思って睨んでいると さすがに村人の目もあるせいか、今日はスマートにあいさつを終えた。


僕は中村くんを捕まえると、耳元で

「今後、大人を騙すんじゃないよ。」

と言って、中村くんをビックリさせた。

寿樹を車の後部座先へ乗せると、自分は運転席に乗り入れた。

中村くんには手を振って、お別れをした。


村長と中村くんが見栄の塊の豪邸門の下で頭を下げた。

セミがうるさいほど鳴り響いて、まるで走馬灯のように黒田家の宿泊が駆け巡った。

真夏の暑い日だった。





また、車を10時間運転する事となる。

健太は、寿樹に聞いた。

「今日の玉串料たまぐしりょうはいくらだったの?」

寿樹が人指し指とパーを出して、ボストンバックの上に頭を乗せて横になった。

健太が、バックミラーから見て。

「15万、交通費入ってるのかな?」

「入れてだ。」

「じゃあ、今度は近場にしてね。」

寿樹はボストンバックから、何やら取り出し、助手席へ投げた。

ボスンッと落ちたのは、札束。

健太は目を見張った。

「なにコレ!100万?もしかして、玉串料って150万!?」

「経理しているのだろう、これで足らない月に埋め合わせしておけばいい。」

これが、僕が爆睡している間に動いたお金か……。

「これって…寿樹が身体を売ったお金だよね。」

「……。」

「答えないって事は、そうとっていいのかな?」

ハンドルがこんなに細かったのかと思うほど握った。

「眠い。私は寝るから、健太はシッカリ運転してくれよ。」

「運転はするけどさ……。一つ聞いていい?中村くんとはグルじゃないよね?」

「おまえに道中寝られては困るからな、ぐっすり寝てもらった。」

それって……!!

(やっぱり、寿樹が中村くんを使って、僕に睡眠薬を飲ませたんだ。寿樹にとって僕は仕事の邪魔なんだ。)

「運転者は僕じゃない方が良かったんじゃないの?もっと、タンパクに道中の送迎しかしない専門の人みたいに……。」

「それが、今年ばかりは どうしても休みが欲しいと言いよって。勝手におぬしを呼び出したのだ。」

「弦賀さんが、毎年その役目をしてきたんだ。弦賀さんは、寿樹が身を売っている事知っていたんだね。」

ジトっと健太を見る寿樹。

「側近はそういう役目だからな、嫌なら降りても良いのだぞ。」

また、そうやって弱みに付け込む。



6時間かかっただろうか、運転疲れてサービスエリアへ車を突っ込む。

後部座席の寿樹は良く寝ている。

健太はドアを開け、寿樹に声をかけた。

帯を解いてズルっと袴を引っ張る、寿樹が飛び起きた。

「何をする!」

斎服さいふくでサービスエリアには降りれません。」

神主に関しての衣装の定めは、国から出ている。


「わかっておる。」

寿樹はボストンバックから、普段着を出そうとする。

白衣の下から、白く長い脚が出る。

健太は寿樹の後ろ姿をきつく抱きしめた。

「僕がどんな気持ちになるか、わかっていたくせに……。」

僕は、睡眠薬を飲まされなかったら 確実に寿樹の仕事を止めに入っただろう。

そんな僕が寿樹には邪魔で、中性だから 自分の身体の事を安易に考えているのではないかと心配はしていたが、やはり この事態は現実のものとなってしまった。


「もっと、自分の身体を大事にして。」

きつく抱きしめた寿樹の身体は、いつになく華奢でこのまま力ずくで愛せるのではないかと何度と思った。

でも、それは意味がない。

僕は、寿樹に酷い事をする悪い人間でしかなくなる。

自分は抜け殻を抱いて、雲をつかむような事になるのだ。

僕は、生きている価値さえ見失う。


きつく抱かれて身動きの取れない寿樹は観念して。

「わかった、わかったから着替えさせてくれ。」

と言った。



健太は後ろを向きながら。

「今回、僕が側近になったのは 黒田家の側近申し入れを断る口実にした?」

「さぁ。」

「あの村長を側近にするより、僕を選んでくれた事は嬉しい。でも、僕だからって選ばれたらもっと嬉しい。……どっちでもいいけどね。」


ドアが反対側から開いた。

「トイレに行ってくる。」

「僕も行く。」

車を閉めて男子トイレへ向かう寿樹に

「寿樹は、女子トイレだよ。」

と健太に言われる。

「わかってる。」


風呂場で 寿樹と健太の声がする。

「やめろ!何ともなってない!」

「けがわらしいので、身を清めてから入って下さい。」


休暇から帰って来た弦賀つるががローカを歩いて心配そうに語った。

「健太さんどーなさったんでしょ?」

ソファーの重しになっている鬼空が、

「寿樹の仕事見たんじゃねーの?」

弦賀が ハッとする。

「側近の仕事大丈夫でしょうか?」

「免疫付かなきゃ側近やてらんないでしょ」

ムムム…と口をつぼませた弦賀。



「健太!いい加減にしろ!!」

寿樹がキレた。


「そこまでして お金が欲しいなら 僕の給料なんていらないよ!」

風呂場から声が鳴り響いたので 鬼空が笑った。



「健太の給料ぐらいだったら わざわざ出向かないっての わかんないかな。」

「でも、健太さんの気持ちもわかります。」

弦賀が心配そうにもらす。




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