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コロナ禍の健太の日記  作者: 蔓草登上
4/6

下心の豪邸

気がついたら 鳥のさえずりが聞こえる朝だった。

まずい!早く起きて 祭壇の準備をしなければ!

とガバッと起きた健太。


ドアを開けると、おばちゃん達の声と

朝食のニオイがした。


「おはようございます。これから起こしに参ろうとしていました。」

昨日よく聞いた覚えのある声だ、足元を見ると 部屋の前で座って僕を見る中村くんが居た。

「昨日、きのう僕はどうした?」

「グッスリ寝ておられましたよ。」

「ちがう!祭壇の準備があるから 目覚ましを掛けるはずなのに それもしていないなんて……。」

「ボクが起こしに行きますと言ったら、喜んで寝ておられましたけど?」

「そ ん な……。」

「覚えてらっしゃらない?」

ない!

昨日の風呂上がりの記憶をたどってみる。

まさか、目覚ましを掛けないで寝るなんて 自分として有りえない。


「とりあえず、ご朝食はこちらが準備しております。どうぞ顔を洗って食堂までいらして下さい。旦那様がご挨拶すると思います。」

「寿樹は?昨日、風呂から一度も会わずじまいなんだ。」

これもおかしい。

夜に必ず打ち合わせや挨拶をするのに、昨日はお風呂を上がってからというもの、本当に記憶がなくなってしまったぞ!!

どうした自分。


「側近さま、朝から顔色が悪そうだね。眠れなかったですか?」

黒田家の主、村長だ。

「中村、もういい。下がって。」

「はい。」


「寿樹は!?寿樹はどこにいますか?」

昨晩、この男と寿樹がベッタリくっついている姿を見てから 寿樹と会っていない。

「御師さまはね、朝のお風呂へ入っています。」

「昨日の晩 何があったんですか!」

「お喋りしていました。久々お会いしたもので。」

(ウソだ。)

寿樹は21時には寝てしまう。

僕がお風呂へ入ったのが20時、その後お風呂へ入ったとしても21時にはいつも寝てしまうんだ。お喋りなんかしている時間なんてなかったはず。


「御師は21時には消灯するはずです。」


「ちゃんと、お喋りしていましたよ。御師さまに聞いてみればわかる事です。」


寿樹が髪を乾かして、風呂から出て来た。


「寿樹!」

寿樹は健太を見て 動きが止まった。


「昨日は、何も言わずしてスマナカッタな。」


「ちゃんと、寝たの?」

「お前の案ずる事ではない。朝食に行くぞ。」

なんとなく、寿樹が寝不足そうな顔に見えた。



朝食が終わって、直ぐに祭壇の準備へと取り掛かる。

村の人が集結するとあって、徐々に人が混み始めた。



寿樹と僕はフェイスシールドを装着した。

村長もフェイスシールドを着けると、集まって来た村人たちに告げた。


「長椅子には決められた距離を保って、お座り頂けたかと思います。」

村の人がお喋りを 止める。

「この度は お集まり頂きありがとうございます。新型コロナウイルスで自粛生活が長く続きますが、この村は幸いな事に感染者は0です。」


よかったわー。と言う声が聞こえる。


「……幸いではありますが、私たちの生活は今もなお、窮屈な生活を強いられます。満足に外出も出来ず『楽しみ』の少ない日々ですが、お盆くらいは先祖の霊を弔ってあげましょう。今年も御嶽霊山ごごくれいざん 真正寿樹御師しんせいじゅきおんしにお越し頂きました。」

拍手が起こる。

「拍手は良いですが、お喋りはお控え下さい。」


簫など音のなるモノはないから、テープを流してごまかす。

中村くんが手伝いに来てくれた。

「何かお手伝いしましょうか?」

「ありがと。」

音響の担当になってもらった。

「僕が合図をしたら、小さく絞って停止してくれる?」

「はい。」

「やり方わかる?」

「ここの機材なんで、分かります。」

「そっか、頼もしいな中村くんは。」

本当に頼もしかった。我が真正家にも欲しいくらい、よく出来た人材だった。ただ、僕をうまく騙したりしなければの話だが。


昨晩はどこで騙されたんだろう?

寿樹と村長がくっつき始めた時に 中村くんにお風呂へ連れていかれ、出て用意してあったお茶を飲んで、部屋まで送ってもらった。その後すぐに寿樹を探しに出たのだけれど、どこにいるか分からず、また中村くんに押し戻された。

寿樹はお風呂に入っているからと、出たら教えてくれと言っておいたのに、凄く眠くなってそのまま朝まで気が付かなかった。


中村くんはタイミングよく音響をこなしてくれた。

何でもできる優れた子だ。

僕なんか騙すのも、朝飯前なんだろうな。


寿樹の祈祷後も 村長のスピーチが繰り広げられる。

なんだかんだ、村の人に人気に見えるこの村長も この村の人たちのお金集めて豪邸に住んでいる。


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