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コロナ禍の健太の日記  作者: 蔓草登上
3/6

神が本地 仏が垂迹

続き

但東町たんとうちょう







 夕飯が終わると、先方と明日の打ち合わせを話す寿樹(じゅき

僕は 側近そっきんになったとは言え、まだヒヨコなので、付き添いで見ているだけだ。



 「改めて、紹介します。こちらがその先日 側近になったばかりの坂受(さかうけ)健太(けんた)。」

いきなり寿樹に紹介されて頭を下げる健太。


「はじめまして、坂受健太と申します。」

「どうぞ宜しく。わたしはこの村の村長だから、分からない事があれば何でも聞いて下さい。」


「はい、ありがたいです。本日は遅い時間にも関わらず、お泊め頂きありがとうございます。」

「遠い所から来たから、さぞお疲れでしょう。湯に浸かったらゆっくり休まれると良いですよ。」

人当たりは良さそうなのに、何となくインテリな感じのまだ若い村長だった。



 村長が手をパンと叩く。

すると、小姓(こしょう)一人が現れた。


「はい、旦那様。」


「こちら、御師(おんし)の側近、坂受さまに湯を案内してさしあげなさい。」


「かしこまりました。」


見れば まだ年が15.6才といったくらいの少年だった。

健太の方に身体を向けると、僕の目を見て


「はじめまして、僕は中村と言います。黒田家の湯をご案内いたしますので、宜しくお願いします。」

はきはきしてるいい子って感じだった。

こんな 夜遅くにバイトかな?


寿樹は、目を向けると

「先に行ってこい。」

と合図した。



 席を立つ健太。

それと同時に 村長が寿樹に詰め寄ったように見えて、心配した。


「前の男は引退したのか?」

「弦賀は 研究所へ戻った。二足の草鞋(わらじ)は履けんからな。」

「寿樹よ、わたしを側近にしてくれれば良かったものを。」

寿樹の肩に腕を回す村長。

「無理だろう。今は村長になったのだろう。」

「村長なんて 代わりが沢山おる。わたしは寿樹の側近がしたかった。」

なよなよしく 寿樹に絡みつく村長の姿が 中庭を通して見れた。



あいつ、寿樹とくっついて 何してんだ!



中村君は そんな健太をお構いなしに グイグイ湯まで案内する。


(そんなに 気にしないで下さい。僕は旦那様より あなた様を離れさせるように指示されただけですから。それから湯から出られた際に、お出しするお飲み物に少しの睡眠剤を入れておく、これが僕の今日のお仕事です。)


「中村君と言ったっけ?」健太が聞いた。

「えっ、はい。」

「今日はアルバイト?」


「毎年 お盆休みには働かせてもらってます。」

「こんな夜遅くに偉いね。」

「明日が速いので、泊まり込みからお仕事させてもらっています。」

喋る事もきちっとしているから 頭の良い子だ。


「じゃあ、このお盆の祈祷は何回か経験した事があるの?」

「はい、小学校の頃から ずっと見てきました。」


「普通、お盆にはお坊さんを呼ぶところが多いのに、ここはどうして神主で祈祷するんだろう?むずかしいか。ごめんね。」

「いえ、知っています。」

キリっと答えた。


「この村は、仏様より神様が最終のお姿と考えられてきています。」

「それは、明治維新の神仏(しんぶつ)分離(ぶんり)の後ってことかな?」

また難しい事を言ってしまったと思った健太。


「えっと……。違うと思います。この村は京都にも兵庫にも属さなかった期間がありまして、はじめから正しい神仏(しんぶつ)習合(しゅうごう)が伝わってこなかったんです。」


「そういえば、来るとき京都かと思った地形だよね。」

「そうなんです。のちに兵庫県となりましたが、それだけ昔から見放された村というか、情報が伝わってこない為 仏教も独自の思想が今に至っているという訳です。」


「ほほー、君 勉強しているね。」

「先代様が 毎日のように語ってくれましたから。」


健太が感心していると、家庭風呂とは思えない大きな入口と中にはジャグジーもついてるお風呂へ案内された。


「わぁ!すごい広い。」

「では、こちらでごゆっくりどうぞ。」

「あ、出るときはそのままでいいのかな?」

「何もなさらなくて 結構です。」

「帰り、部屋がわからなくなりそうだ。」

「ご心配なく、僕は直ぐ近くで待機していますので、お部屋までご案内します。」

「中村君、頼りになるね。」


健太は大理石で出来たかと思われる 広い風呂で滾々(こんこん)と湧き出る湯舟につかりながら、この黒田家は一体何でこんなにも金持ちになれたのだろうか?と考えるのであった。









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