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短編ホラー

白い服の女

作者: 早寝早起き

今でも時折思い出すあの駅での出来事。

 当時私は関西にあるベットタウンに住んでいました。


 小中高と地元に通っていた私は、春からの電車通学が楽しみで仕方がありませんでした。


 そして遂に初通学の日を迎えました。初めて電車で通う学校まで快速電車で30分。


 最初はワクワクしていたんですが、ひと月も過ぎると感動も薄れて行きました。


 そんな時、友人の紹介でアルバイトをする事になりました。そのアルバイト先は学校から帰る路線にあり、降りた駅から徒歩で10分程度。


 所謂居酒屋だったんですが、従業員やお客様に可愛がってもらい毎日が楽しくなりました。


 しかし営業時間が終わる頃には、帰る電車が終電の1本前になるんです。週5日働いていると疲れもあり、最寄り駅まで寝てしまう事もありました。


 眠たい目を擦りながら電車を降りる為、立ち上がった時。ふと隣の車両を見ると白いワンピ-スを着た女性が目に入りました。


 肌が白く肩まで伸ばした黒髪の女性は、とても綺麗に見えました。その時は良いものが見れたと、思っていた記憶があります。


 その日は鼻歌交じりに家に帰り、翌日が休みだったので直ぐに就寝。休みが終わる頃にはその女性の事など忘れていました。


 そしてまた学校とアルバイトの日々が始まります。授業が終わりいつもの様にアルバイトへ行き、何時もの電車で帰る。


 最寄り駅について何気に見た隣の車両には、あの女性が居ました。あっ! あの人だ! なんて思ってましたが、声を掛ける事等私には出来ません。


 まぁ目福だったし儲けものと思い、また心を躍らせて家に帰ります。翌日もアルバイトが終わりお決まりの電車へ乗りました。


 その時、気になったんです。あの女性は何処から乗ってるんだろう? 私が乗る駅では見かけたことがありません。


 そこで最寄り駅に着くまで停車する駅をチェックしました。ですがあの女性を見つける事は出来ませんでした。


 結局そのまま最寄り駅に着いてしまいました。落胆しながら降りようとした時、ふと隣の車両を見るとあの女性が!


 あれ? それまでも隣の車両は見ていたんだけど、その女性の姿は無かったんだよなぁ。


 とは言え違う車両から移動して来たかも知れないと思い、会えてラッキ-だと思い直しました。


 それからアルバイトが休みになる前の日まで、毎日その女性を見たんです。何度か顔を確認しようとしましたが、私の乗っている車両がちょうど駅の階段前に停車する位置。


 わざわざ女性が居る位置まで行くのは、勇気がいります。その時はそこまでは出来ませんでした。


 そして休みの日。家に居ながらその女性を思い出します。もう好きになって居たのかも知れません。


 早く翌週になれ! なんて思いながら、通学の日を楽しみにしていました。しかしその日は駅の様子がいつもと違います。


 私の乗る電車は通勤ラッシュが終わる時間なので、学校のある駅まで座れる程空いているんです。ですが今日に限ってホ-ムが混雑していました。


 駅の案内を見ると人身事故との事。私は1時限目を諦め、電車を1本ずらす事にしました。すると人の空いたホ-ムにあの女性の姿がありました。


 あまりの幸運に飛び上がりそうになりましたが、にやけた顔を見せる事は出来ません。


 そっと覗いてみた所、何時もと同じ服装です。その時不思議に思いました。あれ? よく考えたらいつも同じ服装なのかな? それとも同じような服なのだろうか? 


 そうは思いましたがジロジロ見るのも失礼なので、到着した電車に乗り込みました。なんとか目の中に女性を入れようと努力するも、隣の車両に女性は見つけられません。


 少し気分ダウンのまま学校のある駅に到着。授業が終わりまたアルバイトです。そして何時もの電車で帰ります。


 朝からあの女性を見れたし、帰りも見れるかな? なんて思っていました。すると最寄り駅であの女性を発見。


 ですが良く考えるといつもその女性は、私の最寄り駅では降りないんです。ああ今日もここまでだな。


 そう思い駅の改札へ向かいます。改札を出て家の方向へ歩き出した時、後ろからの視線を感じました。


 何だろう? と思い振り返るとそこにあの女性が。ただ下を向いて立っているので、顔は見えません。


 誰かを待っているんだろうか? まだ最終電車があるしな。と考え家に帰りました。


 


◇◇◇





 その日からです。朝・夜・改札出口で、その女性を見かける事になったのは。


 数日は嬉しい気持ちが勝っていました。ですがあまりに頻繁に出会うと、怖くなって来ていたんです。


 そうなるとこれまでと違い、早く休みになって欲しいと願うようになりました。


 ですが休みの日はあっという間に過ぎてしまいます。私はとうとうその話を友人に相談しました。


 すると友人が最寄り駅まで迎えに行ってやるよと言ってくれました。その友人は高校時代から仲良くしており、最寄り駅も同じです。


 終電間近の時間になるので申し訳なかったのですが、背に腹は代えられません。


 そしてアルバイトが終わり電車に乗りました。迎えに来てくれるとは言え、気分は落ち込んでいます。


 出来るだけ周りを見ない様に頑張っては見たものの、駅に着くと女性が居るはずの車両に視線を向けてしまいました。


 やっぱりいる。私はそそくさと階段を駆け上がり、改札へ急ぎました。すると改札の向こうに友人の姿が見えます。


 その姿を見た瞬間、張り詰めた気持ちも楽になりました。


「おお。時間通りだったな」


「ほんとにありがとうな。助かったよ」


「で? その女って何処に居るんだ?」


「さっきまで電車に居たよ。俺は走って来たから」


「なんだ。お前の言うその女を見たかったのに」


 冗談交じりに言う友人を急かす様に家の方向へ向かう。その時、また視線を感じました。


「なぁ俺が今から振り返るから、お前も確認してくれないか?」


「え? 何かあるのか?」


「良いから頼む」


「何か分からんが、言うとおりにしてやろう」


 私達は駅の方向を振り向きました。やはり視線の先にはあの女性がいます。俺は目線で友人に合図しました。


 しかし友人の様子がおかしいんです。キョロキョロと周りを見回して、女性を見ようとしていません。


「おい! どこ見てんだよ! あの女だって!」


「はぁ? どこにそんな女居るんだよ!」


 何を言ってるんだろう? 居るじゃ無いか! そう思った時、耳元で声がしたんです。


 〝もう少しだったのに......〟



 この後訳の分からない友人を、無理やり引っ張るように家へ帰りました。


 その翌日、私はアルバイトを辞め、通学の時間を友人に合わせる事にしました。


 それからその女性の姿は見ていません......。


 

私は霊感など持ち合わせていませんが、この時の事は鮮明に覚えています。


話に出て来る友人と昔話をした際に、この話を思い出しました。


とても不思議な体験ですが、あの女性はいったい何者だったんでしょうか?


そしてあの時、友人に相談しなかったら......

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