第7話 からかってくる彼女には
出会いの過去編が終わったので、時系列だと2話の続きになります。
この二人のからかいは悪意からではなく、好意から成り立っています。
『ねぇねぇ~ゆうくーん。』
隣にいる彼女がニヤニヤしながら僕を見てくる。
こういうときは、何かよからぬこと…すなわち、僕をからかおうと考えているときだ。
『一体、芝原さんはなにをニヤニヤしているのですか?僕には分かりかねますが。』
なので、あえて名字読みで、あえて丁寧な言葉で質問する。
『んん~?誤魔化そうとしてもダメだよぉ~。いやぁ~…初めて麻衣に会ったときの優くんの第一声は、忘れようと思っても忘れられませんなぁ~。』
一体何キャラなんだ?と思いつつも、出会った頃の話になると、やっぱり初対面のエピソードが出てくる。
メインは、麻衣の秘密に関する話だっただろ!?
『あぁ~そうでしたそうでした。そのときも【美しい】とか言ってたよね~。いや~…出会ってわずか二日で優くんは、この麻衣ちゃんにすでに釘付けだったわけですなぁ~。』
だから何キャラなの?
それにまぁ…すでに釘付けだったというところは否定できないだけに、たちが悪い。
とりあえず、調子に乗りまくっているので、少しお仕置きを。
出会った頃の話をする前は、麻衣が回転椅子で目を回していたので、麻衣の頭を撫でていた。
しかし今度は撫でるのではなく、麻衣の頭をガシッと掴む。
『ふえっ?』
そして、掴んだ状態で、麻衣をぐるりぐるりと円を描くように回す。
『あぁ~うぅ~。』
なすがままにされている麻衣はうなり声をあげている。
反応が面白いので、しばらく彼女の頭を回し続けた。
それから30秒ほど経つと…
『と、とめてぇ~…。ご、ごめんなさぁ~い…。』
と弱々しい声でギブアップを宣言したので、掴んだ手を解放した。
『はわぁ~…頭がぐわんぐわんするぅ~…。』
目が虚ろな状態で、頭をぐるぐると揺らしていた。
つまり目を回している。
『まだぐるぐるするよぉ~…。』
まだ回されている余韻があるのか、止まってもなお、頭をぐるぐると動かしていたので、ガシッと再び麻衣の頭を掴んで止めてあげる。
『これで止まったはず。』
『…まだ世界が回ってます…。』
『目を回しすぎな。』
『だって、ちょっと前まで回転椅子で回ってたし、それに、恥ずかしい過去をもつ優くんの照れ隠しに、麻衣は大きな犠牲にあったわけだし。』
おっ…まだ懲りてないみたいだな。
『麻衣ちゃーん、もう一回いっとく。』
今度は麻衣ちゃん呼びをしながら、満面の笑みで近づいていく。
もちろん目は笑っていない。
『あぁっ!ごめんなさい、ごめんなさい。許してください。次やられたら、麻衣はとんでもないことになってしまいますっ。』
『まぁ半分は冗談として、だいぶ長い時間休憩したから、勉強の続きやろっか。』
『あ、半分なんだ…。うん、そうだね。次は数学だね。』
このように、二人で勉強の合間に休憩しているときは、このようにじゃれてる時がほとんどだ。
今回のように麻衣がからかってきたり、逆に僕が麻衣をからかうことがあったり。
からかわれたほうは怒る素振りを見せるが、もちろん本気で怒っているわけではない。
さっき頭をぐるぐる回されていたときも、麻衣…めちゃくちゃ笑顔だったし。
さぁ気持ちを切り替えて勉強を再開する。
ちなみにではあるが、麻衣は僕よりも勉強ができる。
学年には200人程度の生徒がいるなかで、麻衣は10位以内、僕は20位台である。
そんなに差がないように見えるが、小さいようで大きな壁だったりする。
あと、二人きりのときの麻衣はこんな感じだが、学校では違う顔を見せる。
学校ではTHE優等生といった感じになるのだ。
今日みたいに、デレデレ・ポンコツ・イチャイチャのようなことにはならない。
一応補足ではあるが、麻衣のポンコツは、それも彼女の魅力の一つなので誉めてはいる。
なので、学校では甘い雰囲気にならないはずなのだが…。
それでも、学校公認の夫婦と呼ばれるのは何故なんだ?
次の話は、学校での二人+友人の様子です。
学校では、ポンコツな麻衣は見られません…たぶん。