第3話 出会い ★
★付きは過去の話です。
第1章のタイトルにもあるように、小学校時代の話を入れます。
第2章以降も補完という形で入れるかもしれません。
第1章は★の数が多くなると思いますが、ご了承ください。
『麻衣と優くんの出会い?』
『うん。麻衣がぐるぐる好きを知ったのがいつだったかな…って思ったら、出会って次の日だったな…って。』
『そういえばそうだったね…。あのときのことはスゴい覚えてるよ。麻衣の秘密もそうだったけど、初対面のときとか。』
『あっ…。』
僕は内心しまったと思ったが、もう遅い。
すでに麻衣はニヤニヤした表情で僕を見ていたからだ。
『初対面でいきなりあんなこと言われたら忘れられませんっ。』
『だって正直にそう思ったんだから…普通に口に出てしまうぐらい。』
『だからスゴい嬉しかったんだー。』
二人は、2年ほど前の出会いを振り返っていた。
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小学5年生になったばかりの4月の春休み中のことだった。
『優~、ちょっと下に降りてきなさい。』
部屋で寛いでいたとき、いきなり母さんに呼ばれたので階段を降りた。
『どうしたの?』
『今日引っ越してきたお隣さんが、もうすぐ挨拶に来るから、優も一緒に来て。』
『えぇ~っ…。』
何だかめんどくさい…という表情がモロに出たのか、母さんはこう続けた。
『お隣さんは芝原さんって言うんだけど、娘さんが一人いるの。その娘さんは、優と同級生の小学5年生よ。』
なるほど…そういうことか。
『その娘さんも挨拶に来るから、僕も参加してほしいわけね。』
『そういうこと。新しい環境で不安なこともあるだろうから、優が色々教えてあげて。これから長い付き合いになるわけだし。』
それにしても女の子か…。
別に苦手というわけではないけど、友達と呼べる女の子って少ないんだよな~。
まぁこれは僕に限った話ではないけど。
男子は男子のグループがあるし、女子には女子のグループに分かれることが多いから。
僕の中だと、女子の友達で真っ先に思い浮かぶのは希…かな。
2年生のときに同じクラスになったけど、どこかウマが合う部分があって、仲良くなったんだよな~。
希はどこかサバサバしているところがあったから仲良くなれたけど、もし、僕の苦手なタイプだったらどうしよう…という不安と同時に、家のチャイムが鳴った。
『はい。』
『あ、すみません。芝原です。』
『あっ、お待ちしていました。どうぞどうぞ。』
どうやら芝原さんが来たようだ。
もし、向こうから挨拶をしてきたら、自己紹介をしながらの挨拶になると思うけど、どのような感じで言えばいいのか軽くパニックになっていた。
その間に、母さんは玄関のドアを開けて僕を呼ぶ。
『優~。早く来なさーい。』
とりあえず無難に自己紹介をして、すぐに戻ろうと判断した僕は、母さんについていく。
『竹内さん、芝原と言います。今日からよろしくお願いします。』
『芝原さん、よろしくお願いします。もし分からないことがありましたら、遠慮なく言ってください。あっ、息子の優です。』
『あ、竹内優といいます。よろしくお願いします。』
うん、普通に挨拶ができて、少し肩の荷がおりた。
だけど…芝原さんの娘さんも来ると聞いていたけど、見あたらない…。
一瞬そう思ったけど、芝原さんの後ろでモゾモゾと何かが動いていた。
『こらっ、麻衣。恥ずかしがってちゃダメでしょ。』
『まぁまぁ、芝原さん。仕方ないですよ。』
確かにそうか…。
僕だって、会う前は不安な気持ちになったり、緊張もしていた。
向こうは、引っ越しで環境がガラリと変わっているし、転校先の小学校では、誰も知らない状態から始まるわけだ。
僕以上に不安な気持ちを彼女は持っている。
もしかしたら、仲良くなれるかもしれないと思った。
この状況で全く緊張せず、堂々と自己紹介ができるタイプの子だったら、少し苦手意識があったかもしれない。
でも、緊張している様子を見て、分からないことがあったら、協力したいという気持ちが生まれた。
だから、もう一度挨拶をした。
『竹内優です。これから同じ学校になるけど、よろしくね。』
そのあと、芝原さんの後ろに隠れていた彼女は意を決したのか、僕のところに移動して挨拶をした。
『しっ、芝原麻衣です。よ、よろしくお願いしますっ。』
彼女と初めて対面したとき
『うん、こちらこそよろしくね。』
と返すべきだった。
しかし、彼女を一目見た瞬間、無意識にこの言葉が出てしまったのだ。
『…かわいい。』
これがのちに彼女となる…芝原麻衣との出会いだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
次話以降も、過去の話を3話分考えています。
なるべく早いペースで投稿しようと思いますので、よろしくお願いいたします。