第2話 魅力のひとつ
なんとか今日中に、もう1話分投稿できました。
拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。
麻衣のぐるぐる好きに関しては、僕は別におかしいとは思わない。
実際、小学生のときも休み時間のとき、麻衣以外にもぐるぐる回って遊んでた子もいるし、僕だってそういったことはしたことがある。
確かに中学生になったら、小学生のときに比べたら大人になっているわけだから、なに子どもみたいなことをしているの?というような考えになるのだろう。
しかし僕に言わせれば、ぐるぐる回っている麻衣・ぐるぐる回ったあとの麻衣は、彼女の魅力をさらにアップしていることに気づいていない。
…といっても教えるつもりはサラサラないし、そのことを知っているのは僕と希だけでいい。
その麻衣の魅力だが、回っているときと回ったあとに分けて、それぞれ説明していく。
【回っているときの麻衣】
ケース1
『優く~ん、見て見てぇ~。』クルクル
これは機嫌が良かったり、構ってほしいときによくやるケースである。
満面の笑みを浮かべながら、両手を水平に広げてクルクルと回る。
『楽しそうだね。』
『うんっ!!』クルクル
『でもケガしないでね。』
『ありがと。でも倒れそうだったら、優くん助けてね。』クルクル
『了承。』
ケース2
『う~ん、どうしよっかなぁ?』クルクル
これは考えているときや、煮詰まっているときに回転椅子で回っているケースである。
『解決しそう?』
『う~ん…思い浮かばないから、回転スピードあげてみる。』クルクル
『それでもダメだったら?』
『そのときは、優くんに頭なでなでしてもらう。』クルクル
『どうして?』
『目が回って、頭がクラクラするだろうから。』クルクル
『あ、そっちなんだ。』
ケース3
『それじゃあいくね…。よ~いスタートっ。』クルクル
これは希に教えてもらった遊びや実験をするときにやるケースである。
麻衣は希と一緒にグルグル回るときがあるのだが、希は運動神経が抜群に良い。
麻衣も運動はできるが、希はそれ以上だ。
また目を回しやすい麻衣と違い、希はめったに目を回さない。
その希が『一回これやってみて~』と教えてもらう遊びが、結構難易度が高いものが多かったりする。
実際、やる前にも
『………。』ギュッ
両手を胸の前に組んでお祈りをするかのようなポーズになるぐらい、緊張や不安の表情を浮かべていたりする。
『緊張してるね。』
『うん、やったあとはどんな感じになるんだろ…って感じかな。でもワクワクもしてるけどね。』
『危なそうだったら、全力で止めるから。』
『うんっありがと!!…よしっ、ヤル気出てきた。』
そしてケース3の冒頭につながるわけである。
『それじゃあいくね…。よ~いスタートっ。』クルクル
『どんな感じ?』
『う~ん…そこまでヤバそうな感じはしないけど。』クルクル
しかし終了後は、麻衣は僕に抱きしめられる状態になるのがほとんどである。
僕も時々やることかあるが、希の教える遊びは結構キツイ。
ケース4
『うぅぅ…イヤなこと吹っ飛べぇ~。』グルグル
これはイヤなことがあったり、落ち込んだときに行うケースである。
そのモヤモヤしたものを振り払おうとするので、回転スピードは無意識に上がる。
『うぅぅ…。』グルグル
『………。』
この状態になると、説得をしても聞かないので、麻衣の好きなようにやらせる。
ただ、回転終了と同時に倒れてしまうので、受け止める準備を常にしておく。
受け止めたあとで、何があったのかを麻衣に聞くという流れだ。
もちろんこれらのことは、学校で出来ることは難しいので、ほとんど僕の部屋で行われているといっていい。
次に先程のケースのあとの主なリアクションを紹介する。
【回ったあとの麻衣】
ケース1
『うわぁ…。回ってるぅー。』
楽しく回っているときは、麻衣のリアクションを楽しみにしているので、止めようとしたり、助けることはあまりしない。
助けてねとは言われるが、実はあまり助けてない。
麻衣もこれ以上はまずいと判断したら、ちゃんと止まるからだ。
『頭も世界も目もグルグルだよぉ~…。』
『でも楽しかったんでしょ?』
『もちろんっ!!』
ケース2
『あぁぁ…目が回ったぁ~…。』
回転椅子で回ったあとの彼女は、力なく椅子の背もたれに体重を預けながら、頭をユラユラさせつつ、冒頭のセリフを言うことが多い。
実は、途中からアイデアが思い浮かんだとしても、僕に頭を撫でてもらうために、必要以上に回っていたりする。
なので、思い浮かんでも思い浮かんでなくても、回る回数はほぼ同じだったりする。
『まだ回ってる…。』
時々真顔になりながら、一点を見つめるような表情を浮かべることがある。
これは少し気持ち悪くなっているときだ。
『じゃあ頭を撫でるよ。』
『うんっありがと…えへへぇ~。』
そのタイミングで僕は麻衣の頭を撫でる。
そうすれば、気持ち悪さが多少なりとも紛れるからだ。
『それで麻衣のなかでは解決した?』
『う~ん…ダメだった。』
『そっか。』
この質問をすると、麻衣の回答は必ず『ダメだった。』と言う。
ただこれが嘘か本当かも僕は分かっているが、あえてそこは突っ込まなかったりする。
ケース3
『っ…らめぇ…。』
『おっと!!』
希から教えてもらったことをしたあとの麻衣は、高い確率で倒れる。
そして…
『ふわぁ~…ゆぅくぅ~ん…しゅごいぐりゅぐりゅするぅ…。』
呂律も回らなくなる。
いわば酔っ払いみたいな感じになり、かなりヨレヨレになる。
そして目の焦点が合ってない状態かつ頭をふらつかせながら僕を見つめる麻衣の表情は、どこか妖艶さを感じ、色っぽさがかなり増す。
『ゆうくん、これスゴいよ。』
『どうスゴかったの?』
『まわったあと、なにもみえなかった。』
『うん、麻衣の表情が違う世界に行ったような感じだった。』
『それでしばらくしたら、せかいがまわってて、ゆがんでいるゆうくんがみえた。』
『しばらく膝枕してるから、ゆっくり休んでね。』
『うんっ、んふふっ。』
このときは、いつもの『えへへぇ~。』ではなく『んふふっ。』と艶やかになる。
ケース4
『止めるよ。』
『………あっ。』
『おっと。』
これ以上危ないと感じたら強制終了させ、僕は麻衣が倒れないように抱き締める。
『あっ…うっ…んんんっ…。』
抱き締められた麻衣は目が回っているのか、足元をふらつかせながら、くぐもった声になる。
しばらくするとふらつきもおさまり、そのタイミングで彼女を見る。
『…ひっく。うぅ…。』
回る前や回っている最中は、怒りや悲しみがまざった表情になる。
回ったあとは、怒りは吹き飛んでいるが、悲しみはまだ少し残るようだ。
ちなみにこのケース4のような状況になったのは、今までに2回ある。
そのうちの1回は、一緒に勉強をするきっかけになったことに関連しているのだが、またその話は別の機会にでも。
割合で言うと、ケース1が6割・ケース2が2割・ケース3が1割少しで、ケース4やその他の状況がその残りとなる。
このように、彼女が見せる表情は様々で、これが更なる魅力につながっている。
楽しさ・嬉しさ・真顔・妖艶さ…ときに悲しさもあったが、彼女のクルクル変わる表情に、僕は振り回されている。
以上が、麻衣のぐるぐる好きに魅力を感じる理由である。
『はぁ…だいぶおさまってきたかな。』
椅子で回ったあと、僕のベットにダイブしていた麻衣。
頭を撫で続けていると、徐々におさまってきたようだ。
頭を撫でられて気持ち良さそうな顔を浮かべる麻衣を見ると、どこか愛しさを感じる。
学校では普段見せない表情を、ここでは充分すぎるほど見せてくれるので、彼氏の特権というやつだろうか。
そういえば、麻衣の趣味を知ったのはいつだったかな…とふと考えてみた。
しばらく考えていると…
『麻衣と初めて出会った次の日だったな。』と声が出た。
『ん?どうしたの?』
『ああ、麻衣と出会ったときのことを思い出してたんだ。』
2人の出会いは、小学5年になったばかりの4月はじめの頃だった。
次の話は過去編です。
設定では、今は中学1年生で、出会いは小学5年生なので、その間の出来事をちょくちょく入れていきます。
次の話は優と麻衣の出会いの話を予定していますが、他だと、両者と希との関係や、一緒に勉強をすることになった話や、小学校関連の行事の話を考えています。
それでは失礼します。