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もう何者も私を止めることは出来ない。
私は中田に「わかった」と頷いて、ロープをポケットにしまった。
中田が胸を撫で下ろす。
私に「落ち着け」とジェスチャーをした。
再び私は頷いた。
そして、気を静めるフリをして、中田の背後へと回った。
中田はしばらく私を見ていたが、そのうちに妻の方へと顔を向けた。
私に背中を見せた状況だ。
中田は私の妻への憤怒を、かわいさ余って憎さ百倍の憎悪を侮っていた。
私はどんな困難を背負い込もうとも、今すぐに妻を制裁したいのだ。
私はもう一度ロープを出すと、背後から中田の首を絞めた。
この奇襲は成功した。
中田は声も出せず、大した抵抗もしないまま、やがて動かなくなった。
依然として燃え上がる妻への憎しみが、大柄な探偵という難敵を倒したばかりだというのに私に無尽蔵の力を与えた。
すぐそばで理不尽な殺人が行われているとも気づかず、歌を唄い続けている妻の背後へと私は忍び寄った。