7/23
7
私と中田は手前の通路の陰から様子を伺った。
しばしの後、急に明かりがついた。
どうやらランタンが設置されており、妻がそれに火をつけたようだ。
わざわざ、ここでしか使わないとは念の入ったことだ。
入口で誰かに見とがめられたときの用心か、それともランタンがひとつしかないのか。
何にせよ、これで妻の姿はよく見える。
妻は何度もこの場所を訪れているからか、とても落ち着いて見えた。
半分こちらを向いた顔が最近、見せることが無くなった、花のように可憐な笑顔であることに私の全身の血が逆流した。
本来、私に向けられるはずの妻の愛は、これからここに現れるであろう男に盗まれていたのだ。
そして妻は。
歌を口ずさみ始めた。
花畑で遊ぶ少女のように。
隠しきれない喜びが妻の口から外へと、こぼれ出したのだ。
私の中の何かが壊れた。
もちろん、こうなるおそれのあることは分かっていた。
そのための準備も、ちゃんとしてきている。




