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そして次の水曜日、そう、まさに今日なのだが、私と中田は祖父の代から使っている我が家、森の中にある洋館から妻が出てくるのを待っていた。
私たちは森の木々の陰に隠れている。
昼を過ぎ、1時間ほど経った頃、妻が家から出てきた。
辺りを散策すると言って家を出ているのだろう。
ハイキングに行くような服装だ。
リュックまでは背負ってはいないが。
妻は夫につけられているとも知らず、不貞の現場である廃坑へと歩き始めた。
私たちは気づかれないように細心の注意で後をつける。
5分ほど歩くと廃坑に着いた。
妻が中へと入っていく。
中田の調査によると相手の男はこちらとは反対側にある入口から、やって来るらしい。
男が住むパトロンの別荘からは、そちらの入口が近いのだという。
そういうわけで、妻の浮気相手と今のところは出くわす心配はない。
私たちは妻に続いて廃坑に入った。
奥へ進む妻は小型のライトをつけた。
廃坑の通路が何度か曲がり、外からの光が届かなくなったからだ。
私たちは妻のライトの光を目印に暗闇を歩いた。
こちらは気づかれてはいけないので、ライトを足元にしか向けられない。
やや開けた場所、昔の鉱夫たちが使っていたトロッコやツルハシが放置されている場所で、妻は歩みを止めた。