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「分からない」
私の答えに中田は「そうでしょう、そうでしょう」という風に2回頷いた。
「奥様は外出することなく、その男性と逢っているのです」
最初は意味が分からなかった。
「大原さんのお屋敷の裏手にある廃坑ですよ。あの中で2人は密会しているのです」
なるほど。
ようやく合点がいった。
あの廃坑なら家政婦の2人に怪しまれることなく、散歩を口実に男と逢う時間を捻出できる。
灯台もと暗しというやつだ。
私が暮らしている家のすぐそばで妻と浮気相手の逢瀬が行われていたかと思うと、はらわたが煮えくり返った。
怒りのあまり、頭がガンガンしてくる。
「相手の男ですが」
中田は得意げに報告を続けた。
「なかなかの美男子ですね。女性どころか男性にも目がないようで。いろんな人物と関係を持っています。そのうちの1人が、かなりの資産家で、今はその人物所有の別荘に寝泊まりしているのです」
「まさか…」
私は、はたと気づいた。
中田が頷く。