3/23
3
天を仰いで見せる。
依頼の件がなければ、一言も話したいと思わない私の嫌いなタイプの人間だ。
「奥様は大原さんが居ない昼間の時間帯、水曜日と金曜日に、ある男性と密かに逢っています」
私は首を傾げた。
そもそも妻が浮気をしているのではと探偵まで雇っておいて、こう言うのもおかしな話だが、私の家には家政婦が2人居て、彼女たちの目を盗んで妻が外出するというのは、かなり難しいのではと思っていたからだ。
浮気を疑いだしてから私は留守中に妻がどうしているかを家政婦2人に何度も訊ねているが、外出はおろか買い物にさえ出ていないという答えが返ってきた。
せいぜい散歩に出るぐらいだという。
これは家政婦が妻に懐柔されて、私に嘘を言っているということなのか?
「どこで逢っていると思いますか?」
中田が訊いた。
さすがに笑ってはいないが、私は彼の口調や態度に腹が立ってきた。
こちらがどんな気持ちで、この依頼をしているか、まるで理解していない。