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「小野はバレたからには、僕と別れると言いだした。大原夫人を選ぶと! 今まで散々、僕の世話になっておきながら、そんなの許されると思いますか!?」
麻宮の声が次第に大きくなっていく。
坑道の中で、その声はよく響いた。
「僕は小野の後をつけて、ここに来た。明日にも小野は僕の別荘を出ていくと言ったから、今日しかチャンスが無かった。まずはここで小野を殺しました。当然の報いですよ! そして次は…僕にこんな…こんな悲しくて苦しい思いをさせた原因の大原夫人を殺そうと…なのに何故か…彼女は、もう死んでいました…」
私と麻宮は、この坑道の暗闇の中で、お互いにまったく気づかずに同時に凶行に及んでいたのだ。
私は奇妙な感覚を覚えた。
それは共感だ。
麻宮も私も同じ痛みと苦しみを感じていた。
妻と小野に突き落とされた地獄だ。
この世界で麻宮の気持ちが1番理解できるのは私なのだ。
「麻宮くん…実は」
私が麻宮に話かけた瞬間に、右脚の太ももに激痛が走った。




