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「僕は麻宮といいます。小野が使っている別荘の持ち主ですよ」
別荘…小野が住んでいた別荘の持ち主…小野のパトロン…。
「女性どころか男性にも目がないようで。いろんな人物と関係を持っています。そのうちの1人がかなりの資産家のようで、今はその人物所有の別荘に寝泊まりしているのです」
急に中田の言葉が耳によみがえってきた。
「小野は僕の別荘で世話になりながら、ここで大原夫人と密会していたんだ。ひどい話でしょう?」
小野ならぬ麻宮の顔が、憎しみに歪んだ。
ああ、私もこんな顔をしていたのだろうか?
妻と小野の不貞の被害者は、もう1人、居たのだ。
「2人が逢っているのを知った僕は小野に詰め寄りました。そうしたら、小野は開き直った! そして大原夫人と自分が、いかに愛し合っているかという話を延々と…聞きたくもない、夫人の亭主の性癖までペラペラと…」
麻宮は泣いていた。
大粒の涙が両眼から、こぼれ落ちている。




